四国の伊方原発から豊後水道を挟んで最短45キロにある大分県の住民有志は、運転差し止めを求める仮処分を夏に大分地裁へ申し立てる方針です。
4日、大分県を訪れた河合弘之弁護士(脱原発弁護団全国連絡会の共同代表)は、「大分は伊方原発による利益は何もなく、事故が起きた場合、被害だけ受ける純粋な被害地元となる。その住民が地元の裁判所に起こすことに大きな意味がある」と述べました。
伊方原発を巡っては、松山地裁と広島地裁で運転差し止めを求める訴訟、仮処分の申し立てが起きています。
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住民提訴大きな意味 「事故起きれば被害だけ、何の利益もない」
大分合同新聞 2016年6月5日
脱原発弁護団全国連絡会の共同代表を務める河合弘之弁護士(東京)が4日、来県し、大分合同新聞の単独インタビューに応じた。大分から豊後水道を挟んで最短45キロにあり、四国電力が7月下旬の再稼働を目指す伊方原発(愛媛県伊方町)について「事故が起きれば大分は『被害地元』になる。対岸の原発は対岸の火事ではない」と強調。大分県内の住民有志が運転差し止めを求める仮処分を夏に大分地裁へ申し立てる方針で、河合氏も弁護団に加わり支援する考えを示した。
河合氏は、伊方原発から約5キロの海域に国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が走っており、大地震によって重大事故が起きる危険性が高いと主張。瀬戸内海や周辺地域に放射能被害が及び、大分も観光、漁業などで甚大なダメージを受けると述べた。
伊方原発の基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れの強さ)は最大650ガル。河合氏は「中央構造線が近くにあるのに極めて低い」とし、最大2千ガルの中部電力浜岡原発(静岡県)など、地震リスクを抱える他原発に比べても過小評価だと訴えた。
伊方3号機は昨年7月、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査に合格。現在、再稼働に向けた最終手続き「使用前検査」を受けており、四国電は7月下旬に原子炉を起動させたいとしている。
大分県内の住民有志は5月、「伊方原発をとめる大分裁判の会(準備会)」を結成。裁判所の審理が比較的短期間で決定が即時効力を持つ仮処分に加え、訴訟も起こす方針で、近く申立人・原告を募る。
河合氏は「大分は伊方原発による利益は何もなく、事故が起きた場合、被害だけ受ける純粋な被害地元となる。その住民が地元の裁判所に起こすことに大きな意味がある」と話した。
伊方原発を巡っては、松山地裁と広島地裁で運転差し止めを求める訴訟、仮処分の申し立てが起きている。
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河合氏は5日午後0時半から、大分市のホルトホール大分で講演する。入場無料。
かわい・ひろゆき 1944年、旧満州生まれ。東京大学法学部卒業後、70年に弁護士登録。第二東京弁護士会所属。「ビジネス弁護士」としてさまざまな経済事件に携わってきた。ライフワークとして中国残留孤児の就籍訴訟、90年代半ばからは原発訴訟に携わる。東京電力福島第1原発事故後、自ら監督としてドキュメンタリー映画「日本と原発」を製作している。72歳。