米電力大手エクセロンは、米イリノイ州にある2つの原子力発電所を順次閉鎖すると発表しました。
シェール革命によるガス価格の下落で火力発電の電力卸売価格が大きく低下したことが、採算割れをさらに促進していたもので、州政府からの財政支援の見通しがつかなかったために原発の維持を断念したものです。
日経新聞はシェール革命が廃炉に向かわせたという書き方をしていますが、もともと米国では「原発は安くてクリーンで安全」という神話は1970年代半ばに破綻していました(そのことは何故か日本では隠されてきました)。
原発の「経済的リスク大」が顕在化した75年以降、原発の発注が激減し74年以後は発注物件の完成はゼロで、スリーマイル島の原発事故が起きた79年以降は新規原発の発注自体がゼロになっています。このように米国の原発離れは決定的になっていました。
近年も次々と原発の廃炉が進められていて、エクセロンの廃炉もその一環に過ぎません。
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米電力大手エクセロン、採算悪化で原発2カ所閉鎖
日経新聞 2016年6月3日
【ニューヨーク=稲井創一】米電力大手エクセロンは2日、米中西部イリノイ州にある2つの原子力発電所を2018年6月1日までに順次閉鎖すると発表した。シェール革命によるガス価格の下落で電力卸売価格も大きく低下し、採算が合わなくなっていた。イリノイ州政府に財政支援を要求していたが、法案成立の見通しがつかず、発電所の存続を断念した。
閉鎖するのは同州クリントンとコルドバにある原発。エクセロンの資料によると、両発電所とも沸騰水型軽水炉(BWR)を採用しており、合計で3基ある原子炉は廃炉になる公算が大きい。
シェール革命の影響で米国では天然ガス価格が10年前に比べ約3分の1に下落。ガス火力発電所の競争力が高まり、電力卸売価格も大幅に低下。発電コストが安いとされた原発の採算が悪化している。閉鎖する2カ所の原発だけで過去7年間に8億ドル(約880億円)の損失を計上していた。
11年の福島第1原発事故の影響もあり米原子力規制委員会(NRC)の安全規制が厳しくなり、建設・保守コストの負担が重くなっている。東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)がジョージア州などで新規の原発建設を計画しているが、原子力ビジネスに逆風が吹くなか、採算を確保するにはコスト管理の重要性が増している。