地震学者の島崎東大名誉教授(前原子力規制委委員長代理)は16日、規制委の田中俊一委員長、石渡明委員らと面談し、原発で想定する地震動(基準地震動)を策定する際に用いる予測式に問題があるとして、審査中の関西電力大飯原発(福井県)などの基準地震動を異なる式で再計算することを求めました。
それに対して田中委員長は「指針は簡単に変えられない。新しい知見を入れるには、それなりに評価されたものをベースにしてわれわれの判断を入れていきたい」と話したということです。
しかし、現実に起きた熊本大地震に規制委が採用している予測式を適用したところ、実際の1/4程度の地震動しか算出しなかったということは、予測式が実用に適さないということの何よりの証明です。それなのに、そんな指針を「簡単に変えられない」というのは余りにも理不尽な言い訳です。規制委とはそんなに暗い人たちの集団なのでしょうか。
(関係記事)
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大飯の地震動、再算定を 前委員長代理が規制委に指摘
東京新聞 2016年6月17日
原子力規制委員会の前委員長代理で、地震や津波の審査を担当していた島崎邦彦・東大名誉教授(地震学)は十六日、田中俊一委員長らに会い、関西電力大飯原発(福井県)などの地震規模の算定で用いられた手法では、過小評価になる恐れがあり、算定し直すべきだと指摘した。規制委は指摘を受け、二十日の会合で今後の対応を議論する。 (片山夏子)
島崎氏が問題点を指摘したのは、入倉孝次郎京大名誉教授らが提唱した、想定される断層の面積から地震規模(地震モーメント)を求める計算式。地震規模は、原発の耐震設計の目安となる基準地震動を決めるもとになる。
島崎氏は、地表に対し垂直または垂直に近い断層では、入倉・三宅式だと、他の計算式の三分の一~四分の一程度になる場合があると指摘。西日本の断層の多くは垂直に近く、「この計算式を津波や強い揺れの推定に用いてこのまま対策が進められたら、想定外の災害や事故が繰り返される恐れがある。悲劇を繰り返してはならない」と訴えた。
島崎氏は二〇一二年九月から二年間、委員として地震や津波の審査を担当。退任後、日本海の津波問題を検証する中で計算式も見直し、四月の熊本地震で得られた詳細な観測データが、この計算式では説明できないことから問題点があるのを確認したという。
指摘に対し、田中委員長は「指針は簡単に変えられない。新しい知見を入れるには、それなりに評価されたものをベースにしてわれわれの判断を入れていきたい」と話した。
大飯原発 地震動再計算を 規制委員長に島崎前委員長代理
しんぶん赤旗 2016年6月17日
地震学者で前原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦氏は16日、規制委の田中俊一委員長と石渡明委員らと面談しました。島崎氏は、原発で想定する地震動(基準地震動)を策定する際に用いる予測式に問題があるとして、審査中の関西電力大飯原発(福井県)などの基準地震動を異なる式で再計算することを求めました。
これを受け、規制委は20日に開く会合で、再計算を実施するかどうか議論します。
面談で島崎氏は、原発の基準地震動策定で、大飯原発などで震源の大きさを推定する際に用いられた予測式「入倉・三宅式」が、垂直や垂直に近い断層面に適用する場合、過小評価になると指摘。4月に発生した熊本地震で得られた詳しいデータをもとに入倉・三宅式を用いて検討したところ、地震の規模も断層のずれ量も実際と比べ「全然足りない」と説明しました。
島崎氏は「より真実に近そうな式があるので、それで(再計算を)やったらどうか」と提案。地震の揺れの程度が大きく引き上がる可能性があるとして「十分考慮すべき問題。ぜひ前向きに検討していただきたい」と述べ、新たな知見を取り入れた再計算は「出発点だ」と強調しました。
面談後の会見で島崎氏は、2002年の長期評価で太平洋の日本海溝沿いのどこでも津波地震が起こると評価しながら防災に生かされなかったことに触れ、「僕の目には、同じことが日本海で再現されつつあると映る。各県で対応をしている最中、今だったらまだ間に合う」と述べました。