関西電力は大飯原発1、2号機について、運転延長するためには耐震性強化などの安全対策費が莫大になって採算が合わないことから廃炉とする方針を固めましたが、政府はそのままでは14年に策定されたエネルギー基本計画に盛り込まれた「30年度の電源構成=原発20~22%」が維持できなくなるからと、水面下で原発の新増設・建て替え(リプレース)を探り始めているということです。
原発の構成比率20%を維持するためには、原発の殆ど(39基)を稼働させないと達成できないことは初めから分かっていたことです。原発の稼働率がゼロでも日本の電力を賄えることはこれまでで証明されているのに、それを「20%にする」というのはひたすら原発を稼働したいという原子力ムラの欲望に過ぎません。
「原発は重要なベースロード電源」というのも取ってつけた理由であって、「不必要なものを重要という」のは本末転倒の話です。
選挙に勝ったから強気になってそれを目指すというのも不合理で、支離滅裂な話と言うしかありません。
週刊ダイヤモンドの記事を紹介します。
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政府が関電の大飯廃炉方針に「便乗」、原発新増設へシフト
週刊ダイヤモンド 2017年10月31日
衆議院総選挙真っ最中の10月17日、関西電力が大飯原子力発電所1、2号機(福井県)の廃炉方針を固めたことが明らかになった。公式には、「そのような事実はない」とする関電だが、電力業界関係者の間では、廃炉は既定路線だった。
大飯原発1、2号機は共に、2019年に運転開始から40年を迎える老朽原発である。現行ルールでは、原発の運転期間は原則40年で、1回に限り最長20年の延長が認められる。それでも関電が廃炉しようとするのは、仮に延長したとしても耐震性など安全対策の追加コストがかさみ、採算が合わないからだ。
ここにきて、関電の方針に便乗する動きが出始めている。水面下で、政府が原発の新増設・建て替え(リプレース)を探り始めているというのだ。
政府の考え方の根拠になっているのは、14年4月に策定されたエネルギー基本計画だ。政権を奪還した与党自民党は、この計画で旧民主党政権が掲げた「原発ゼロ」方針を撤回。原発を重要なベースロード電源と位置付け、一定の基準を満たした原発については再稼働させる考えを示した。
これを受けた長期エネルギー需給見通しでも、30年度の電源構成(総発電電力量に占める各電源の内訳)で原発を20~22%と定めた。
もっとも、現状は程遠い。10月末時点で再稼働した原発は5基にとどまる。「原発20%」の目標達成には、廃炉を決めた15基を除く残り39基全てを再稼働させる必要がある。それぞれ117.5万キロワットと出力が大きい大飯原発1、2号機が廃炉になれば、目標達成は難しくなってしまう。
そこで、原発の新増設・リプレースという選択肢があらためて浮上しているのだ。
衆院選大勝で風向き変わる
もとより、新増設・リプレースの方針は電力業界の本意でもある。
しかし、わずか2カ月前の8月時点では、経済産業省で始まったエネ基の見直し議論で、世耕弘成経済産業相が「計画の骨格を変える時期ではない」と消極的な姿勢を見せていた。当時、支持率が低迷していた安倍政権では、不人気な原発政策にできるだけ触れられたくないという意向が働いていた。
ところが、衆院選での与党大勝を境に、風向きが大きく変わった。いよいよ、政府が新増設・リプレースに向けて動き始めた。最近では、エネ基の見直しに慎重だった世耕経産相も「有識者の答えを待ちたい」と微妙に言い回しを変えている。
与党自民党の衆院選の公約では、原発政策については安全最優先の再稼働と記されているだけだ。安倍政権が原発を重要なベースロード電源と位置付けるならば、水面下でこそこそ画策するのではなく、正々堂々と新増設・リプレースの道筋について議論すべきだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)