2017年11月6日月曜日

06- 東工大が原発の核反応生成物分離に成功

東工大、原発の核反応生成物分離 地層処分の期間短縮
経産業新聞 2017年11月6
 東京工業大学の鷹尾康一朗准教授らは、原子力発電所の運転後に出るガラス固化体と呼ぶ高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)から、放射線を長期間出し続けるセシウムなどの核反応生成物を温和な条件で分離する技術を確立した。放射性物質を半減期の短い物質に変える「核変換」と組み合わせることで、核のゴミを地層処分するのに必要な期間の短縮を狙う。

 原発から出る使用済み核燃料は、再び燃料として使えるウランなどを取り出し、再利用できない廃液をガラスと混ぜて固めて核のゴミとする。1000種類の放射性物質が含まれる核のゴミの中で、放射線を出す期間が長く、これまでは分離ができなかったセシウム、パラジウム、ジルコニウム、セレンの4つの化合物を取り出す技術を開発した。

 放射性物質を出さないセシウムなどを使い、組成は核のゴミと同じにした模擬のゴミを作り、4つの化合物を取り出した。模擬のゴミに塩酸と硝酸をセ氏90度という比較的低温で混ぜると、セシウム、パラジウム、セレンを完全に分離することができた。同90度の硫酸を加えると、ジルコニウムも9割以上取り出せた。

 政府は核のゴミを地下深く埋める「地層処分」を計画している。長期にわたり放射線を出す物質があることで、地層処分に10万年単位の時間が必要とされる。

 同技術を使えば将来、核変換の技術が確立された際にセシウムなどを取り出し、放射線を出す期間が短い物質に変えられる。今回の4つの化合物などを取り除いた後の核のゴミに含まれるのは、放射線を出す期間が短い放射性物質が大半となるため、地層処分の期間を1000年程度に減らせる可能性がある

 日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県)は完成が遅れているが、国内には英国とフランスに使用済み核燃料の再処理を委託したことによってできた約400キログラムの核のゴミが2500本ある。ガラスと混ぜる前の廃液からセシウムなどを取り出す技術が確立されても、核のゴミからセシウムなどを取り出すには今回の技術が必要だ。(科学技術部 大越優樹)