17日、福島原発事故に伴い福島県内で発生した指定廃棄物などを埋め立てる富岡町の最終処分場に、廃棄物の搬入が始まりました。最終処分する施設が稼働したのは全国初です。
福島県内には指定廃棄物が17万2000トンあり、33市町村106カ所から順次運び込まれることになります。
河北新報は関係者や地元民の複雑な思いも取材しました。
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<指定廃>福島・富岡で最終処分開始 全国初、施設稼働
河北新報 2017年11月18日
環境省は17日、東京電力福島第1原発事故に伴い福島県内で発生した指定廃棄物などを埋め立てる同県富岡町の最終処分場に、廃棄物の搬入を始めた。指定廃棄物を最終処分する施設が稼働したのは全国初。
県内には9月末現在、放射性物質濃度が1キログラム当たり8000ベクレル超10万ベクレル以下の指定廃棄物が17万2000トンある。保管されている33市町村106カ所から順次運び込まれる。周辺自治体の災害廃棄物、生活ごみなども一緒に埋める。
初日は富岡町と、搬入路がある楢葉町のがれき焼却灰など計23立方メートルが10トントラック4台で搬入された。富岡町の保管施設で廃棄物を積んだ最初のトラックは午前10時50分ごろ、処分場に到着し、放射線量などを確認。廃棄物入りの袋が次々とクレーンで下ろされた。
指定廃棄物(見込み量18.2万立方メートル)と、両町など避難指示が出た区域の災害廃棄物・片付けごみ(見込み量約44.5万立方メートル)は約6年、双葉地方8町村の生活ごみ(約2.7万立方メートル)は約10年かけて埋め立てる。搬入する10トントラックは1日最大65台に上る見通し。
環境省の担当者は「福島の復興再生へ向けた一歩。住民の理解を得られる努力を続けたい」と語った。
国は昨年、民間の最終処分場を国有化。安全協定は県と地元2町、富岡町の2行政区、楢葉町の1行政区と締結した。楢葉町の1行政区とは住民の反発があって結べていない。
宮本皓一富岡町長は「安全安心に進めてほしい」と強調。松本幸英楢葉町長は「(残る)行政区とも協定を締結するのが望ましい。引き続き国に対応を求めていく」との談話を出した。
<指定廃>最終処分開始 不安と評価、福島複雑
河北新報 2017年11月18日
東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の指定廃棄物などを埋め立てる国の最終処分場が17日、同県富岡町で稼働した。自治体などは保管する廃棄物搬出への一歩と評価したが、受け入れる地域には風評被害などへの不安が根強い。住民は「とにかく安全に進めてほしい」と願った。
焼却灰や汚泥、稲わらなどの指定廃棄物は9月末現在で11都県に計約20万トンあり、福島県分が17万トンを占める。場所の確保など保管に頭を悩ます自治体や廃棄物処理業者は少なくない。
一般ごみの焼却灰などを大量に管理する郡山市清掃課の担当者は「処分場の地元を思えば複雑だが、ようやく始まり安心している」と稼働を歓迎する。
国は指定廃棄物を各都県で処分する方針だが、住民の反対などで福島県以外は計画が進んでいない。同県でも地元住民らは割り切れない思いを抱える。
富岡町から郡山市に避難する女性会社員(52)は帰還意欲への影響を懸念する。町の避難指示は今春、一部を除いて解除されたが、戻った町民は人口の3%。「運搬時の安全性に不安が残る。町民の帰還の妨げにならなければいいが」と不安視する。
搬入路のある楢葉町の地元行政区では稲作が一部再開された。上繁岡行政区の農業佐藤充男さん(73)は「放射能と聞いただけで抵抗感を示す人がいる」と風評被害を憂慮する。佐藤さんは「反対だが諦めるしかないのが現実。始まった以上は安全な運営をお願いするしかない。集落を維持できる対策も求めたい」と話した。