福島の避難指示区域外から避難し、山形県米沢市の雇用促進住宅入居した8世帯に対し、住宅を監理する独立法人が立ち退きと家賃の支払いを求める訴訟を起こしている問題に対して、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)が抗議声明を出しました。
訴訟に至った経過等については下記の記事を参照してください。
(関係記事)
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抗議声明 避難者の住宅追い出し訴訟は認めない
ひだんれんのブログ 2017年11月18日
(原発事故被害者団体連絡会)
福島県内から山形県米沢市の雇用促進住宅に、避難指示区域外から避難した8世帯に対し、住宅を監理する独立法人が立ち退きと家賃の支払いを求める訴訟を起こしている問題に対して、ひだんれんとしての抗議声明を発表します。
抗議声明 避難者の住宅追い出し訴訟は認めない
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用促進機構は9月22日、山形県米沢市の雇用促進住宅に住む避難指示区域外避難者8世帯に対して、住宅からの退去と4月以降の家賃支払いを求める訴訟を山形地方裁判所に起こした。
政府と福島県が責任をもって解決すべき問題を、このような形で処理しようというやり方を、私たちは認めない。政府と福島県は避難者への住宅無償提供を保障し、抜本的な被害者救済制度を速やかに確立するよう、強く要求する。「機構」には提訴の取り下げを願いたい。
ひだんれんは、政府と福島県が住宅無償提供打ち切り政策を表明した2015年5月以降2年近くにわたってその理不尽さを訴え、政策転換を要求し続けてきた。しかし、政府も福島県も被害者の声に真摯に耳を傾けることなく、本年3月末日をもって「無償提供は終了した」と一方的に宣言した。私たちはこれを認めていない。4月以降も政府・福島県に対して、実態の把握を基に避難者の生きる基本である住宅の保障を求め続けてきた。
住宅無償提供をめぐる問題は、いまも当事者間で交渉・協議中である。そのさなかに、国も責任を指摘されている原発事故の被害者が住居を失えば困窮することが分かっていながら、機構が退去を求めて提訴することは、公的な性質を持つ機関として、道義、人道に反する行為であると考える。
提供打ち切りにあたって政府と福島県は、「99%が住居の見通しが立った」としていたが、生活の実態についてはいまだにその把握をしようとしていない。生活の基盤を揺るがされた避難者は、日々の生活に追われて沈黙し、追い込まれて自ら命を絶つという悲惨な事態さえ生じている。東京都が7月から8月にかけて行った調査では、20万円以下の収入で、10万円以下の家賃支払いに追われている世帯が半数を占めている。この一事をとっても、住宅提供打ち切りが避難者の基本的生存権を脅かしていることは明らかである。
今年3月の前橋地方裁判所、10月の福島地方裁判所はいずれも「国が適正な規制権限を行使していれば福島第一原発事故は防げた」と、国と東京電力の法的責任を明確に認める司法判断を下した。事故が無ければ避難することはなかったのだ。それまでの住居で平穏な生活を送れていたのだ。政府も福島県も、この事実を改めて直視すべきではないのか。
そこからは、それまで必要と認めて続けてきた最低保障としての住宅無償提供を打ち切り、避難者を苦境に追いやるという結論は出てこないはずだ。「しっかりと寄り添って、丁寧に対応してまいります」といった政府・福島県の責任者の言は、どこにいったのか。今すぐ住宅無償提供を再開し、機構に提訴を取り下げるよう申し入れるべきだ。
3月末、私たちは政府と福島県に対し「被害者の一人たりとも路頭に迷うことは認めない。福島県内外を問わず、全ての被害者に日本国憲法が定める基本的人権が守られる生活が保障されるまで、住宅無償提供の打ち切りと仮設住宅からの追い出しを中止・撤回し、法的責任に基づく抜本的な被害者救済策の速やかな確立を要求し続ける」と申し入れた。この要求は不動である。
万一にも、被害者をこれ以上追い詰める道が改められないとすれば、私たちは全国・全世界の心ある人々に訴え、手を携えて、当事者と共に闘い続けることを宣言する。
2017年11月18日
原発事故被害者団体連絡会
共同代表 長谷川健一 武藤類子