2018年1月31日水曜日

31- 核燃サイクルは直ちに中止するしかない

 日米原子力協定自動延長されましたが、肝心のプルトニウムの消費方法は未確定のままです。高速増殖炉の計画が破たんしたからという言い方がありますが、そもそも核燃サイクル自体がプルトニウムを増産するものであって、プルトニウム消費の方策にはなっていませんでした。当初から根本的に誤った方向に走り出していたということです。

 原子力協定の期限切れはその辺を正しく見直すチャンスだったのですが、なし崩しの形で自動延長になりました。しかしこのまま進んでは現状国内外に47トンも保有されているプルトニウムが更に増えるだけで、事態は悪化する一方です。
 核燃サイクルは直ちに中止し、日本が保有しているプルトニウムの処分について、国際的に協議すべきです。

 河北新報と岩手日報が社説でこの問題を取り上げました。
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社説 日米原子力協定延長/サイクル延命策にすぎない
河北新報 2018年1月30日
 日米原子力協定の自動延長が今月決まった。日本の核燃料サイクル政策の生命線となっている協定なのに、ほとんど議論されないまま延長される結果になったのは残念だ。
 取りあえずサイクル政策を続けられることになったものの、破綻を繕って使う見通しのないプルトニウムをため込めば、国際的な批判を受けかねない状況に変わりはない

 国や電力業界が進めるサイクル政策は、原発で発電に利用した後の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再び原子炉で燃やそうという内容。そのためには日米協定が不可欠だった。
 ウランなどの核物質は核兵器への転用を防ぐため、どの国で産出し、濃縮されたのかといった「国籍」が極めて重視される。供給する国とされる国が協定を結ばなければ、ウランなどの取引はできない仕組みになっている。
 日米原子力協定は1968年に結ばれ、大量の原発用濃縮ウランが米国から日本に供給されるようになった。ウランを原発で燃やした後に残るプルトニウムを取り出すのが再処理だ。元をたどれば米国製ウランであり、米国の了解が必要になる

 長期的に再処理できるよう、1988年に改定したのが今の日米原子力協定。期限は30年後の今年7月16日だが、半年前までに両国とも協定終了を通告せず、そのまま延長されることになった。
 核燃料サイクル政策にこだわる国や電力各社には好都合だが、余剰プルトニウムの解消という難題が待ち受けている状況に変わりはない。
 内閣府が昨年8月にまとめた「プルトニウム管理状況」によると、日本が保有するプルトニウムは2016年末時点で、英仏両国で再処理し保管中が37.1トン、国内9.8トンの計46.9トンに上る。

 プルトニウムは核兵器への転用が最も心配される物質だ。必要もないのに保有することは国際的に疑念の目を向けられる。日本も当然、使い道を明確に示さなければならないのに、はっきりしない。
 その理由は核燃料サイクルの破綻にある。プルトニウムは本来、現在の原発とは全く仕組みが異なる高速増殖炉の燃料と想定されていた。
 ところが、原型炉「もんじゅ」は廃炉が決まり、実用化の見通しは全く立たなくなった。プルトニウムとウランを混ぜて現在の原発で使う「プルサーマル発電」もあるが、東京電力福島第1原発事故で再稼働すら簡単には進まなくなっている。
 プルトニウムの利用は八方ふさがりであり、容易に消費先は見いだせないだろう。そうなったのはひとえに、核燃サイクルを遮二無二推進してきたからだ。日米原子力協定の期限切れも見直しのチャンスだったが、議論も反省もないまま延命された。幕引きの決算を、またもや将来に先送りしただけにすぎない


社説 日米原子力協定延長 問われる潜在的核能力
岩手日報 2018年1月30日
 7月に30年間の期限を迎える日米原子力協定の自動延長が決まった。これにより、日本の核燃料サイクル事業の基盤が維持される。
 日本は非核国だが、核兵器転用が可能なプルトニウムの抽出も平和利用のため認められている。この特権が継続することになる。
 原子力開発は、核兵器利用と平和利用が背中合わせの関係にあると言える。たとえ核兵器開発の意思がないとしても、プルトニウム保有に対する世界の目は厳しい。特別待遇は、核開発を探るイランなどの不満も招いてきたという。潜在的核能力を持つ重大性に鑑みた原子力政策の在り方が問われよう。

 被爆国日本は、平和利用としての原子力発電を進めるため、後ろ盾となる米国と1955年に結んだ原子力協定の下、濃縮ウラン供与を受けて研究を本格化。その後、核燃料サイクルを含む新たな協定に調印した。
 使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを利用し、高速増殖炉によって資源効率を飛躍的に高める核燃料サイクル。しかし、そんな「夢の原子炉」構想は遠のいた。実用化に向けた原型炉もんじゅは無残な結果に終わった

 だが既に海外での再処理分を中心に、原爆約6千発分に相当するとされる約47トンのプルトニウムを保有。サイクル構想が事実上破綻した今、通常の原発使用による消費を目指すが、見通しは不透明だ。
 そんな中で青森県六ケ所村の再処理工場が完成して稼働すれば、プルトニウムがさらにたまっていくことになる。
 このような状況に対し、米国内には懸念がある。核兵器開発につながる技術・施設を持つことを意味するからだ。「潜在的核抑止力」としての意義をにおわす日本の政治家の発言が過去に出ていることも疑心暗鬼にさせている。
 このままサイクル事業を続けてよいのかどうか。政府は原子力政策を根本的に考え直す必要がある。

 協定延期確定に合わせるかのように、国の原子力委員会は、保有量削減に向けた新指針策定の方針を決定。「使う見通しがたった分しか再処理しない」などが検討されるとみられるが、核燃料サイクル政策に対する米国の注視は強まるだろう。
 日本としては新たな期限を決める再改定が望ましかったようだ。自動延長では、日米いずれかの通告で6カ月後に協定を終了できるため、「非常に不安定な状態」(河野太郎外相)になるからだ。
 いずれにせよ、利用が見通せないプルトニウムの大量保有は国際的な説得力を欠く。核燃料サイクル廃止に向けた検討も視野に入れる時期ではないか。