2018年1月31日水曜日

東京電力 福島原発 02年に津波試算拒否 保安院の指摘に

 これは30日付下記記事の詳報版です。

 福島原発事故9年前の2002、福島県沖での大津波を伴う大地震発生を想定した政府の「長期評価」が公表された直後、東電は、原子力安全・保安院(当時)から「福島県沖で津波地震が起きた場合のシミュレーション(コンピュータによる模擬実験計算)を行うべきだ」と指摘されたにもかかわらず、「長期評価には根拠が伴っていない」「時間も費用もかかる」などと40分くらい抵抗しため、保安院は最終的に「長期評価は具体的な理学的根拠が伴うものとは確認できない」として津波シミュレーションを行わないとの東電の方針を了承したとが分かりました

 保安院はその後2006年にも想定以上の津波対応を求めましたが東電は具体的な対応をしませんでした。東電は2008年になって初めてシミュレーションを実施し、最大157メートルの津波が襲う可能性があると想定しましたが、それに見合った対応は見送りました。

 東電が保安院に対して何故こんなに強く出られるのか不思議です。しかしこの傲慢な態度は、被災者・避難者たちへの補償交渉でも不断に見られていることなので、それが東電の常態なのかも知れません。

お知らせ
都合により2月1日、2日は記事の更新ができませんのでご了承ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東京電力 福島原発 02年に津波試算拒否 保安院の指摘に
毎日新聞 2018年1月30日
 東京電力福島第1原発事故9年前の2002年、福島県沖での大津波を伴う大地震発生を想定した政府の「長期評価」が公表された直後、東電が経済産業省原子力安全・保安院(当時)から「福島県沖で津波地震が起きた場合のシミュレーションを行うべきだ」と指摘されたにもかかわらず、「(長期評価には)根拠が伴っていない」などとして拒否していたことが分かった。

 当時、保安院原子力発電安全審査課に在籍していた担当者が29日、毎日新聞の取材に「いろいろ働きかけたが納得してもらえなかった」と明かした。公表直後の保安院と東電のやりとりが明らかになるのは初めて。政府の地震調査研究推進本部は02年7月、「三陸沖北部から房総沖で1896年の明治三陸地震と同様の地震が発生する可能性がある」とする長期評価を公表。担当者は翌8月、長期評価が第1原発の安全対策に影響するかどうかを東電に確認するヒアリングを実施した。

 この担当者の証言や、原発避難者が東電と国を相手取った訴訟で国が提出した担当者の陳述書によると、保安院は「福島-茨城沖も津波地震を計算すべきだ。東北電力はかなり南まで検討している」などと指摘。東電側は「時間も費用もかかる」「しっかりした理学的根拠もない」などと難色を示し、「40分くらい抵抗」。保安院は、シミュレーションの見送りを了承した。

 保安院は06年にも想定以上の津波対応を求めたが東電は具体的な対応をせず、08年になって初めてシミュレーションを実施。最大15・7メートルの津波が第1原発を襲う可能性があると想定したが、それに見合った対応は見送られた。担当者は「(事故が起き)耐震の審査に関わった人間として非常に残念だ」と振り返ったが、保安院の対応の妥当性は「軽々には言葉にできない」と述べるにとどめた。

 避難者訴訟の原告代理人は「東電の悪質性が露見した。国にも責任がある」と指摘した。東電の広報担当は「係争中なのでコメントできない」としている。【斎藤文太郎】


福島津波試算 02年見送る 旧保安院、東電の反発で
東京新聞 2018年1月30日
 二〇一一年三月に起きた東京電力福島第一原発事故の約九年前、政府の地震調査委員会が「東北の太平洋岸ではどこでも大津波が起こる危険がある」との長期評価を公表した際、当時の経済産業省原子力安全・保安院が東電に「福島沖で津波地震が起きたときのシミュレーションをするべきだ」と求めたが、東電の反発を受け、見送っていたことが二十九日、分かった。
 原発避難者が国などを相手取った訴訟で千葉地裁に提出された関係者の陳述書で判明した。第一原発に津波が襲来し大事故が起きたが、この段階でシミュレーションをしていれば津波対策に早く着手できた可能性がある。
 陳述書は、旧保安院の原子力発電安全審査課で地震や津波関係の審査班長だった川原修司氏のもので、法務省の担当者に答える形で当時の事情を説明している。

 地震調査委は〇二年七月三十一日に長期評価を公表。川原氏らは同八月、複数回にわたって東電の担当者に事情を尋ね、長期評価を前提に津波のシミュレーションを行うよう要請した。
 東電は、地震学者による一つの論文を基に説明し、シミュレーションを拒んだ。陳述書に添付されていた電の担当者の電子メールの写しには、当時のやりとりが記されており「四十分間くらい抵抗した」と書かれていた

 東電はさらに地震調査委メンバーの佐竹健治氏(現東京大教授)が長期評価の見解に異論を唱えていたことや、将来的に別の方法で第一原発への大津波を考慮するなどと主張。川原氏は「長期評価は具体的な理学的根拠が伴うものとは確認できない」として津波シミュレーションを行わないとの東電の方針を了承した。
 東電は取材に対し「継続中の訴訟に関わる事項なので回答を差し控える」とコメントした。

<福島第一原発の津波想定> 1号機建設当時は高さ海抜約3・1メートルの津波を想定した。国の地震調査委員会が2002年7月に出した大津波の危険を指摘する長期評価に基づき、東電が津波シミュレーションを行ったのは08年春。国の原発耐震指針改定を受けた安全性見直し作業によるものだった。敷地の高さを大きく超える最大15・7メートルの津波の危険性が示された。東電はこの結果を11年3月の事故直前まで当時の経済産業省原子力安全・保安院に報告せず、具体的な対策も取らなかった。東電が大きな津波の想定に本格的に取り組み始めたのは07年11月ごろとされてきたが、02年に保安院から要請を受けていた。