2018年1月22日月曜日

福島第1原発事故 汚染土減量・再利用 技術開発進む

 鹿島建設と大阪大学は、除染土から放射性セシウムを効率よく除去する技術の実証実験めています。
 この技術は陽イオン状の放射性セシウム粘土中の鉱物と反応して金属化合物化したものを強力な超電導磁石で吸着除去するもので、実証実験に先立つ室内実験ではセシウムを97%除去できました。
 
 日経新聞は、大成建設の、汚染された草木の焼却灰を固めて利用する技術についても報じています。
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福島第1原発事故 汚染土減量・再利用、技術開発進む
日本経済新聞 2018/1/21
 東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う除染廃棄物を浄化して再利用したり、量を減らしたりする技術の検証が大詰めを迎えている。環境省は開発された技術を評価したうえで実用化し、放射性物質の濃度が下がった土などを土木工事で使うよう促す方針だ。しかし、現場周辺の住民の理解を得るのは難しく、先行きは不透明だ。

 福島県の被災地の一角で、除染土から放射性セシウムを効率よく除去する技術の実証実験が進んでいる。鹿島と大阪大学が2017年度から手がけており、実証に先立つ実験では、セシウムを97%除去できた。
 この技術は強力な超電導磁石を使うのが特徴だ。放射性セシウムは陽イオンとして振る舞うため、負の電気を帯びた粘土鉱物に取り込まれやすい。この粘土鉱物は磁気を帯びており、強い磁力で粘土鉱物だけを引き寄せ、汚染されていない土から分離する仕組みだ。
 阪大の秋山庸子准教授は「低濃度の土を選別でき、再利用に回す除染土を増やせる」と期待する。鹿島は再利用できる水準に放射性物質の濃度が下がるかなどを試しつつ、事業性を見極める。

 除染作業によって出た汚染土や草木を燃やした灰は最大で東京ドーム18個分の約2200万立方メートルになると推定される。大熊町と双葉町に建設された中間貯蔵施設で保管し、30年以内に県外の最終処分場へ運び出す。しかし、これだけの量を最終処分するのは難しく、減量や再利用促進が欠かせない。

 大成建設は汚染された草木の焼却灰を固めて利用する技術を開発した。灰に水酸化ナトリウムや水を混ぜてセメント代替物質にし、1メートル角ほどの箱を作った。焼却灰などを保管する中間貯蔵施設向けの容器としての利用を見込む。強度や耐久性を確かめ、来年度にも実際に使う計画だ。
 汚染された草木を焼くと155万立方メートルの灰が出る。原子力土木技術部の長峰春夫部長は「うまくいけば焼却灰の4割を再利用できる」とみる。放射性セシウムは半減期が約30年と短く、箱を中間貯蔵施設から運び出すころには放射線量が半減している。粉々に砕いて道路の路盤材などに利用する計画もある。

 ゼネコンなど17社は昨年9月、低濃度の汚染土を使い、南相馬市に幅11メートル、高さ1.5メートル、長さ20メートルの盛り土を造る実証事業を始めた。表面を普通の土で覆って周辺に飛散しないように対策した。空気や水を調べたところ、セシウムなどは漏れていなかった。
 環境省は放射性物質の濃度が1キログラム当たり8000ベクレル以下の土の再利用を促す方針だ。今春、二本松市で低濃度の土を道路造成に使うほか、18年度からは飯舘村で農地の区画整理などに活用する実証事業を始める。

 ただ、健康への影響はないといっても、住宅地や農地で利用するのは住民の懸念が根強い。観光や農業への風評被害を懸念する恐れもある。環境省の担当者は「丁寧に説明し、理解を得たい」と話す。今後、自治体と協力して説明会や実証事業の見学会を開く。

 ただ福島県内では消化しきれない。基準値以下の土は「福島県外で使う可能性もある」と環境省の担当者は明かす。だが、県外での活用のハードルはさらに高い。政府には、より優れた技術の開発を促すだけでなく、解決への着地点を探る地道な努力も欠かせない。(草塩拓郎)