2018年1月31日水曜日

大飯原発の基準地震動の算定法は不十分 地震調査委が疑問視

 3月に再稼働を予定する関西電力大飯原発の安全審査で基準地震動(最大の揺れ)の算定方式をめぐり、策定元の政府の地震調査委員会内で、原子力規制委の認識を否定する見解が示されていたことが分かりました。
 
 地震調査委が定めた基準地震動の計算手法は
(1)地震を起こす活断層の形状をあらかじめ設定して算出する
(2)地表で確認できる活断層の長さから算出する
2があり、両方による算出は義務付けられていませんが、調査委は(2)を標準としていました。(1)による場合は活断層の幅を想定して計算しますが、幅を定める理論的方法はないので恣意的なものになります。そのため長さによって一意的に定まる断層の規模によって計算する仕方を重視したわけです。

 ところが規制委は、その逆に大飯原発の基準地震動を(1)だけの計算法で定めました。
 そもそも島崎氏が辞めたあとは地震に関する専門家が規制委にはいなくなりました。そんな状態で基準地震動をいわば独断的に審査したわけなので、それでは説得力に欠けるのは否めません。

 東京新聞の記事を紹介します。
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大飯の揺れ算定法「不十分」 地震調査委 規制委の認識疑問視
東京新聞 2018年1月30日
 三月に再稼働を予定する関西電力大飯(おおい)原発(福井県)の安全審査で主要な判断基準だった地震時の基準地震動(最大の揺れ)の算定方式をめぐり、策定元の政府の地震調査委員会内で、原子力規制委員会の認識を否定する見解が示されていたことが分かった。大飯原発の地震想定に関しては、専門家から過小評価の可能性が指摘されている。 (中崎裕)

 本紙が情報公開請求で入手した、地震調査委の部会や分科会の議事録で判明した。規制委は二つある計算手法のうち一つだけで再稼働を認めたが、算定方式(レシピ)を定めた調査委は「一つでは不十分」との考えを示していた
 レシピに記載されている計算手法は(1)地震を起こす活断層の形状をあらかじめ設定して算出する(2)地表で確認できる活断層の長さから算出する-の二つ。双方による算出は義務付けられておらず、大飯原発の安全審査で関電は、(1)による想定しかしていなかった。

 しかし、規制委が審査中の二〇一六年九月、地震調査委の強震動評価部会では、(1)の手法について、委員から「知見が不足している」との指摘や「間違いではないが、不確実性がまだ残っている。両方やることには賛成」との意見が出た。より精度を高めた計算手法の確立には「三年ぐらいはかかる」との見方も示されていた。

 二カ月後、レシピの修正案を検討する強震動予測手法検討分科会でも、事務局が(1)の手法に関し「併せて(もう一方の)方法についても検討して比較するなど、結果に不自然なことが生じていないか注意しながら検討していただきたい」とし、事実上、二つの併用が望ましいとの解釈を示した。レシピは分科会後に修正版が公開されたが、こうした見解は明示されなかった。

 規制委は昨年五月、関電の想定を了承、再稼働を認めた。地震調査委の検討内容を規制委が把握していれば、審査に影響した可能性があるが、規制委事務局は取材に「(検討内容について)調査委に問い合わせはしていない」と回答した

 規制委の更田豊志委員長は、二つの手法でも計算するべきだとの指摘に関し「(適用は)難しいところがある」と述べ、関電が採用した計算手法で信頼できるとの見解を示した。

<地震調査委員会> 地震に関し、気象庁や大学などの調査・研究結果を分析し、総合的な評価を行う政府の組織。各地の断層が起こす地震の揺れを予測する手法として算定方式(レシピ)を策定、公表している。委員は大学や研究機関の地震研究者らが務める。阪神大震災を受けて1995年にできた地震調査研究推進本部内に設置され、同本部の事務局は文部科学省にある