原子力規制委の田中委員長が、川内原発の再稼動を「社会活動」と称して、「天災を怖れて社会的活動を全てやめろというのは無理だ(趣旨)」と述べました。
火山学者たちはなにも社会活動の全てを止めろといったわけではなく、川内原発については火砕流が到達する恐れが否定できないから、新規制基準に則って、再稼動するのはおかしいと主張したものです。
そして規制委が、「何らかの異常を検知したときに、早めに原発を止めて核燃料を安全なところに移動させればよい」としている対策は、どういう兆候が「異常」に当たり、どの段階で事前に原発を停止させるのかが不明だし、そもそも噴火の数年前に予知できるなどという保障は全くないのだから、実効性のない対策であると指摘したものです。
要するに田中氏の説明は、指摘されていることに具体的に答えられないので、あたかも非現実的な要求があったかの如く装って、それに応じることが出来なかった、というすり替を行ったものです。学者らしくないやり方です。
天災を怖れて・・・といいますが、福島原発事故はまさに地震と津波という天災によってあれだけの災害が引き起こされました。「大きな天災は来ないものだ」という考え方が間違っているというのが、福島原発事故の教訓の筈です。もう喉元を過ぎてしまったというのでしょうか。
規制委が片足どころか両足を原子力村の利益の側に乗せていることが、これでよく分かります。
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天災恐れて社会活動はやめられない 噴火対策で規制委員長
産経新聞 2014年10月2日
原子力規制委員会の田中俊一委員長は1日の定例会見で、九州電力川内原発(鹿児島県)の噴火対策をめぐり「正確な予知は不可能」などとする火山学者らの批判に対し「天災地変がいつ起こるか分からないので、社会的活動を全てやめろという話は(認識に)ギャップがある。そういう感覚では、われわれの仕事はできない」と反論した。
田中氏は予測が難しく、多くの犠牲者が出た御嶽山噴火を例に「学者はすぐシュリンク(萎縮)する。巨大噴火の研究を進展させないといけないが、非常に社会的影響が大きいので(学者は)自覚を持ってほしい」と指摘した。
その上で「基礎的研究をする学者は社会的視点をあまり意識しないが、ギャップを埋められるよう努力することが大事だ」と述べた。
川内原発の50キロ南東には、過去に巨大噴火を起こした姶良カルデラがある。九電は近い将来の「巨大噴火の危険は十分低い」とし、規制委も認めた。
火山で何らかの異常を検知した場合、規制委は原子炉停止などを早めに指示する方針。異常の判断基準を固める検討会メンバーの学者らから「(規制委との)ギャップはなかなか埋まらない」などの意見が出ていた。