原発の運転期間は原則40年で、2年後にそこに到達する原発は、美浜原発1、2号、高浜1、2号、島根1号、玄海1号、原電敦賀1号の7基です。原子力規制委が特に認めた場合は最大20年延長できますが、老朽原発の運転期間延長を求めるには1基1000億円以上の増強対策費が掛かるので、経済的に成り立たちません。
激しい中性子劣化を受ける原子炉は当初は30年耐用が限度と考えられていたのに、それが成り行きで40年に延長され、更に最大60年も可能という取り留めのなさです。装置の寿命の判断を経済ベースで行うというのも恐ろしい話ですが、結果的に40年以上の運転は無理とされること自体は喜ばしいことです。
小渕優子経済産業相は17日、電気事業連合会の八木誠会長に運転40年を迎える老朽原発を廃炉にするかどうかの判断を早急に示すよう要請しました。
これを受けて、老朽原発を抱える電力各社は、年内にも廃炉について判断するとみられます。
廃炉を決断する上でのネックは、その段階で原発の資産価値がなくなるため、多額の損失が発生することです。これも当初から分かっていることですが、経産省はそれに対する救済も考えているということです。
政府は原発絡みのことになると至れり尽くせりの対応を考えますが、それらは全て国民の負担となって跳ね返ってくるものです。
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小渕経産相:老朽原発「廃炉早期決断を」…電事連に要請
毎日新聞 2014年10月17日
小渕優子経済産業相は17日、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)と経産省で会談し、運転開始から40年を迎える老朽原発を廃炉にするかどうかの判断を早急に示すよう要請した。老朽原発の廃炉を促し、原発依存度を減らす姿勢を示すことで、九州電力川内原発(鹿児島県)などの再稼働に対する国民の理解を得たい考え。政府の要請を受け、老朽原発を抱える電力各社は年内にも廃炉について判断するとみられる。
原発の運転期間は原則40年に限定され、原子力規制委員会が認めた場合は最大20年延長できる。2016年7月までに運転開始から40年を迎える原発で、運転を延長したい場合、15年7月までに原子力規制委に延長を申請する必要がある。該当するのは、全国の原発48基のうち、関電美浜原発1、2号機(福井県)▽関電高浜1、2号機(福井県)▽中国電力島根1号機(島根県)▽九州電力玄海1号機(佐賀県)▽日本原電敦賀1号機(福井県)の7基。
小渕経産相は会談で「7基の取り扱いの考え方を早期に示してほしい」と事実上、廃炉の早期決断を要請。八木会長は会談後、記者団に「電事連として電力各社の判断を取りまとめたい。回答期限の指示はなかったが、できるだけ早く回答できるように検討したい」と述べた。
老朽原発の運転延長は容易ではない。これまで電力各社は原発20基の再稼働を原子力規制委に申請したが、審査基準をクリアするための対策工事費は1基当たり1000億円規模。老朽原発を運転延長する場合の安全対策費はさらに増加するとみられ、運転延長をしてもコストを回収できず、損失となる可能性がある。
このため、関電は美浜1、2号機の廃炉の検討に入り、中国電と九州電も「廃炉も選択肢」との姿勢を示してきた。しかし、廃炉を正式に決断することも簡単ではない。
廃炉にした場合、原発の資産価値がなくなるため、多額の損失が発生する。仮に7基をすべて廃炉にすると、全部で2000億円規模の損失が一度に発生する可能性がある。原発停止で経営が悪化している電力各社にとって負担が重い。さらに16年の電力小売り全面自由化で電力会社は厳しい競争にさらされる。八木会長は17日の記者会見で「財務面のリスクをできるだけ合理的な範囲にしてほしい」と述べた。
小渕経産相はこうした課題について「政府として必要な対策を検討する」と述べ、廃炉を円滑に進めるための制度整備を図る考えを示した。
経産省は、廃炉によって電力会社の財務が一気に悪化しないように、損失を複数年に分けて電気料金に上乗せできる会計制度を導入することを検討している。だが、料金に転嫁する形での廃炉支援には利用者の反発が予想され、政府は難しい判断を迫られる。【中井正裕、安藤大介、浜中慎哉】