昨年制定された原発「新規制基準」の火山条項では、半径160キロ圏内の火山の火砕流が原発を襲う可能性が否定できない場合は、「立地不適」とすることになっています。
川内原発の周囲160キロ圏内には、阿蘇、加久藤、阿多など5つの火山があり、大噴火を起した場合火砕流が到達することを否定できません。
しかし九州電力は「衛星利用測位システム(GPS)の観測などで噴火の予知は可能であるとし、カルデラ周辺の地盤の動きなどで異常が確認されれば、原発を止めて核燃料を緊急移送する」との対策を示して、規制委はそれを了承しました。
「火山噴火の予測はできない」というのが火山学会の結論であるのに対して、九州電力と規制委はどういう現象を噴火の予兆と見るというのか、その詳細は不明です。
九州電力から8日に提出された川内原発1、2号機の保安規定変更認可の補正書によると、焦点になっている巨大噴火への対策としては、既存の国の観測網などで地殻変動を監視し、兆候が見られた場合有識者3人の意見や社内の議論を踏まえて社長が原子炉の停止を決定し、その後約5年をかけて核燃料を搬出するとなっています。しかし肝心な「噴火の予兆を判断する基準」については、「社内文書」として公表されませんでした。
火山学会が噴火の予兆はつかめないとしているのを、敢えて判断できるというのであればその根拠が示されていなければならない筈です。それとも「3人の有識者」というのは超能力者ということなのでしょうか。
しかも核燃料の取り出しに5年もかけるというのですから、噴火の5年も前に予知できるということです。
500~600℃といわれる火砕流が原発に到達すれば人は勿論近づけなくなるし、構内を走るトレンチ内のケーブルが真っ先に焼損するので、即座に全停止し原子炉は核分裂の暴走を起こします。その時に放出される放射能の量は福島原発の比ではなく、少なくとも西日本は放射能汚染で破滅します。
それほどの重大事故を招くにもかかわらず、その対策がこんな夢物語のようなものでいいのでしょうか。一体、保安規定(=運転管理方法)なるものは、これほどまで弛緩し且つ非常識なものであっても通用するものなのでしょうか。
今度こそ、この書類を審査する規制委が一体まともな理性を持っているのか、が問われます。
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川内原発:再開へ噴火判断基準公表せず
毎日新聞 2014年10月08日
九州電力は8日、川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の運転管理方法などを定める保安規定変更認可の補正を原子力規制委員会に申請した。焦点になっている巨大噴火のモニタリングについて、予兆を判断するため3人の有識者の意見を聞くなどの手順を定めている。しかし、その判断基準については「社内文書」として公表せず、予兆があった場合の核燃料の搬出先も決めていない。
九電によると、既存の国の観測網に加え、新たに2カ所の離島に機器を設置して地殻変動を毎月1回監視。兆候が見られた場合、有識者の意見や社内の議論を踏まえて社長が原子炉の停止や核燃料の搬出を決定。約5年かけて核燃料を搬出するとしている。一方、具体的な搬出場所や方法は「5年の時間があるのでその時に検討する」と説明した。
専門家の間では、巨大噴火は「予知が不可能」とする意見が多い。規制委は火山のモニタリングのあり方を検討する有識者会議を8月に設置したが、結論は出ていない。
このほか、九電は、1号機の工事計画認可の補正書の完成版を提出した。2号機も月内にも出す方針だ。【酒造唯】