九州電力の川内原発1、2号機は、最大の地震の揺れ=「基準地震動」を620ガルに引き上げたことで規制委の心証を良くしたように報道されていましたが、実際にはそれに伴う新たな耐震工事は何もないことが明らかになりました。
これは540ガルから620ガルに15%アップした後にチェックした結果というよりは、アップするに際して、その範囲であれば新たな耐震工事は必要ないということを確認したと考える方が自然です。そうでなければ、安全を見て決めなければならない基準地震動のアップ幅が、こんなにチマチマしたものになる筈がありません。
九電は620ガルにした根拠を「エイヤッと引き上げた」だけと説明し、根拠らしいものは何も示さなかったというのですから、推して知るべきです。
この辺はプロであれば直ぐに推測できることなので、規制委と九電の馴れ合いというのが実態と思われます。
この辺はプロであれば直ぐに推測できることなので、規制委と九電の馴れ合いというのが実態と思われます。
福島原発で事故発生以来、汚染地下水の流出が止められずに海を汚染し続けている問題も、元はといえば原子炉建屋の地下部分が地震で破損したために、地下水が建屋内=破損した原子炉格納容器内に流入し続けている結果です。
つまり地震による装置の破損が根本的な原因になっているわけです。
「日本の原発は震度6で壊れる(東日本大震災で実際に壊れた)」というのが、事故後実際に東日本の原発を視察した武田邦彦氏の主張です。
こうした教訓が生かされないままに、再稼動に向かおうとしているのは論外です。
(追記)九電は昨年7月以降400カ所の配管補強工事を行ったということですが、配管の耐震補強はほとんど配管サポートの追加で済むものなので、補強と言っても軽微なものです。
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川内原発 耐震工事なし 新基準想定引き上げ後
毎日新聞 2014年10月19日
九州電力が年明けの再稼働が見込まれる川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)について、想定する最大の地震の揺れ「基準地震動」を620ガル(ガルは加速度の単位)に引き上げて以降、新たに実施を決めた耐震工事はないことが、同社などへの取材で分かった。九電は「約半年かけて主要施設がどの程度揺れるかを評価したが、(工事が)足りないところはなかった」とし、これを踏まえた「工事計画」を月内にも原子力規制委員会に提出する。九電は3月、算定根拠を明確に示さないまま地震動を引き上げた経緯があり、九電や、審査する国は、詳しい説明が求められそうだ。
原子力規制委の審査会合では、規制委が東日本大震災前には想定外としていた地震も考慮するよう電力各社に求めた。具体的には、原発周辺の断層による地震動に加え、2004年の北海道留萌(るもい)支庁の地震など、震源が特定されていない地震への対応で、最大の論点となった。
新たな耐震補強工事などの負担を懸念した関西電力など各社が従来の想定を変えず、審査が長引く中、九電が3月の審査会合で川内原発の基準地震動を540ガルから620ガルへと引き上げ、新規制基準の適合第1号になった。会合で九電の担当者は「乱暴な言い方をすれば、エイヤッと引き上げた」と説明していた。
川内原発の耐震策について九電は毎日新聞の取材に対し、昨年7月の審査開始後、耐震強度に余裕を持たせるため、400カ所の配管補強工事に着手し、地震で崩れる恐れのある設備周辺ののり面の一部をはぎ取る工事をしたと説明した。
一方、620ガルの地震動が確定した今年3月以降については、原子炉格納容器など個別設備に働く地震波の強さを評価したと説明。九電は「耐震強度に余裕がなくなる可能性もあったが、問題ないと確認した」とし、耐震工事の追加予定がないことを明らかにした。
規制委に提出する工事計画認可の補正書に、この評価結果を記し、認可を待つことになる。鹿児島県などが主催した9日の住民説明会では「地震動の引き上げに伴う安全強化策が分からない」(薩摩川内市の男性)と疑問の声も出ている。
元原子炉格納容器設計技術者の後藤政志さんは「基準地震動引き上げに伴う追加工事がないからそのまま問題だとは限らない。ただ、以前は電力会社が引き上げに伴う工事を避けるため、耐震計算における主要な数値を十分な根拠なく変えていたこともあった。そうしたことがないかや、設備に必要な(耐震強度に対する)余裕が本当になくなっていないかを検証する必要がある」と話す。また、元三菱重工業社員で原発の設計に携わった藤原節男さんは「九電やプラントメーカーは、川内原発の揺れの評価にさほど影響を与えず、追加の耐震工事も必要ない数字をあらかじめ考慮した上で、審査会合の場に提示した可能性もある」と指摘する。【寺田剛、遠山和宏】