2014年10月1日水曜日

中間貯蔵施設と用地の取得

  政府は除染作業で発生した廃棄物を保管するための中間貯蔵施設用に、原発周辺の土地の国有化を進めようとしています。
 建前上は貯蔵開始から30年以内に福島県外に搬出して最終処分を行うとされていますが、福島県外で廃棄物を受け入れる地域が出てくる可能性は低いので、事実上の最終処分場にされてしまうのではないかと周辺地域の住民は懸念しています。
 
 国の用地買取り価格は、現状は汚染されていて利用できない土地の評価となるため、将来の利用価値を上乗せしても事故前の5割前後になるということです。実際にはそれに県の財政支援が加わるので8割前後にはなるようですが、すべては東電の原発事故に起因するものなので、それでは地権者としては納得できません。
 
 政府が29日に大熊町双葉町の地権者たちに行った説明会では、農地の価格は1平方メートル当たり1150~1200円、山林の価格は1平方メートル当たり520円と提示されました
 終了後、足早に会場を出る出席者の表情は一様に険しく、「こんな額で納得できるわけがない」と強い言葉が飛び交いました 
 
 ところで予想される廃棄物の量は約2800万立方メートル東京ドームの容積の約23で、高く積み上げることは出来ないので、面積的には東京ドームの300倍の敷地が必要となります。
 中間貯蔵所の構造は、地下槽の全面をコンクリートにするかそれに代わる遮水性のある構造体にして、底部排水の処理設備をつけるなどします。(添付記事「中間貯蔵施設の概要について」参照)
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農地最大1200円、山林520円 中間貯蔵・地権者説明会
福島民友ニュース 2014年9月30日
 いわき市で29日開かれた中間貯蔵施設の地権者向け説明会で、政府が示した大熊、双葉両町の標準地ごとの土地価格によると、宅地以外の用途では、両町とも農地の価格は1平方メートル当たり1150~1200円、山林の価格は1平方メートル当たり520円と設定された。
 政府は土地の買い取り額について(1)建設候補地が東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域に指定され、土地の利用が一定期間できない(2)将来的に避難指示が解除され、土地価格の回復が見込まれる―などの事情を踏まえ、不動産鑑定士による評価額を基に決めた。
 建設候補地を含めて原発事故で被害を受けた地域については、東電が土地や建物などの損害を賠償しているが、政府は施設の建設に伴う用地補償はこれらとは別で、東電による賠償に影響を与えないとしている。
 
 
「提示価格納得できぬ」 中間貯蔵、政府方針に不満続出
 福島民友ニュース 2014年9月30日
 県内の除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設の大熊、双葉両町への建設をめぐり、政府が29日にいわき市で初めて開いた地権者向け説明会では、政府が示した土地の買い取り価格の目安などに、出席者から「こんな額で納得できるわけがない」と強い言葉が飛び交った。
 地権者や代理人など大熊町95人、双葉町51人の計146人が出席した。説明会は冒頭を除き非公開だったが、終了後、足早に会場を出る出席者の表情は一様に険しかった。
 大熊町小入野から会津若松市に避難する渡部隆繁さん(65)は「これが国のやり方なのか」と怒りを抑えきれない。自宅は原発から約3キロの建設予定地にあり、震災前までは農地約4.5ヘクタールで40年以上農業を続けてきた。渡部さんは「県民のために犠牲もやむなしと考えていたが、落胆した」と声を荒らげた。
 
 

  イチからわかる中間貯蔵施設 課題は何?
THE PAGE 2013年12月3日


 政府は福島第1原発の除染作業で発生した廃棄物を保管するための中間貯蔵施設を建設するため、原発周辺の土地の国有化を進めることになりました。これで中間貯蔵施設の建設がようやく動き出すわけですが、一方で、この場所が事実上の最終処分場になってしまうのではないかとの懸念も出ています。
 
 現在、福島県内では原発事故に伴う汚染を除去する、いわゆる「除染」作業が行われています。しかし除染作業を行うと、放射能に汚染された大量の土、草木、枝、泥などが発生するため、これらをどこに保管するのかが大きな課題となっています。廃棄物の量は2800万立方メートルに達すると試算されており、この量は東京ドームの容積の約23倍にもなります。今のところこれらの廃棄物は仮置場に積み上がっている状態であり、早急な対策が必要な状況です。
    
面積は東京ドーム300個分か
 政府は、これらの廃棄物を最終的にどこに処分するのか決めていませんが、とりあえず福島県内で中間貯蔵施設を作り、そこに貯蔵して管理しようということになっているわけです。実際に廃棄物を貯蔵するとなると、東京ドームのように廃棄物をうず高く積み上げることは出来ませんから、面積でいくと東京ドームの300個分程度の敷地が必要といわれています。今回の土地の国有化はこのスペースを確保するためのものとなります。
 
 ちなみにここで想定している廃棄物は、原発事故の除染作業に伴って出てきたものを対象としており、いわゆる原子力発電所から出てくる「核のゴミ」とは別のものです。
 中間貯蔵施設は放射能汚染のレベルで主に3種類に区分されています。このうち、放射能が1キログラムあたり「8000ベクレル以下」のものと「8000ベクレル超、10万ベクレル以下」のものについては基本的に土に埋めて貯蔵を行います。
一方「10万ベクレル以上」の汚染レベルが高いものについては、ドラム缶などに詰めた上で、コンクリートで作られた建物の内部で保管されることになります。「8000ベクレル超、10万ベクレル以下」のものについても、遮水シートなど、地下水への漏出を防ぐ一定の仕組みが設けられます。
 
最終処分場になる懸念も
 中間貯蔵施設はあくまで暫定的な施設ですので、恒久的な安全性が担保されるものではありません。政府は中間貯蔵施設による貯蔵開始から30年以内に、福島県外で最終処分を行としています。しかし、福島県外で廃棄物を受け入れる地域が出てくる可能性は低いというのが現実で、このままでは、中間貯蔵施設が事実上の最終処分場にされてしまうのではないかと周辺地域の住民は懸念しています。
 
 また今後、発生する廃棄物の量は、どのくらいの期間、除染作業を続けるのかによって大きく変わってきます。放射能は他の化学的な汚染と異なり、分解や中和という概念がありません。ある場所で水を流して放射能のレベルを下げても、その水が他の場所に溜まれば、再び汚染源となります。最終的には放射性物質が出す放射能の量が自然に減衰するまで待つしかなく、厳密な意味での除染は極めて困難といわれています。
 中間貯蔵施設の建設は、これらの問題を解決する第一歩ではありますが、課題は山積している状態です。
(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)