南相馬市の特定避難勧奨地点の152世帯について、政府は21日の住民説明会で28日に指定を解除することを伝えました。
しかし放射線量を不安視する住民から「誰も納得していない」、「自宅の線量は依然高いままだ」、「農地除染が終わっていない」、「避難区域より放射線量は高い」、「自宅は除染が終わっていない農地に囲まれている」などと、反発する意見が相次ぎました。
同席した桜井勝延市長は「最低でも年度内は解除しないよう要請してきたので不本意。国は今後も住民の声を聞く場を設けてほしい」と述べました。
それにもかかわらず高木経産副大臣は、「(指定を解除することで)線量が下がっている事実を全国に伝えることが、風評被害からの脱却、復興本格化のために重要」と身勝手な理由をつけて、反対を押し切りました。
「特定避難勧奨地点」は避難指示区域外で、局所的に年間被ばく線量が20ミリシーベルト(毎時換算3・8マイクロシーベルト)を超えると推定される場所で、避難は強制されないものの、医療費の自己負担免除などの生活支援や、精神的損害に対する月10万円の慰謝料が支払われています。
勧奨が解除されれば3ヶ月間の猶予期間を経て慰謝料の支払いが停止されます。
今年度中に支払を打ち切るために無理やり年内に解除するともいわれています。
地元3紙の記事を紹介します。
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「誰も納得していない」 避難勧奨・28日解除で住民反発
福島民友ニュース 2014年12月22日
南相馬市の特定避難勧奨地点152世帯について、政府が28日の解除を伝えた21日の住民説明会では、放射線量を不安視する住民から反発する意見が相次いだ。政府は不安の解消に向け解除後も住民と対話を続ける方針だが、住民の理解が進むか不透明だ。
政府が解除日の決定を伝えた後の質疑応答では、住民から「誰も納得していない」「自宅の線量は依然高いままだ」など批判が集中。原町区大谷の男性は「自宅は除染が終わっていない農地に囲まれている。子どもが戻ってきても外に出すのは不安」と声を荒らげた。
また別の男性は「個々で事情は異なる。解除に納得した世帯から順次解除すればいい」。原町区大原の女性は「(原発20キロ圏内の)小高区より線量が高いのに、賠償では大きな差がある」と不満をぶつけた。
南相馬の避難勧奨地点28日解除
福島民報 2014年12月22日
政府の原子力災害現地対策本部は、東京電力福島第一原発事故に伴い放射線量が局所的に高いために指定した南相馬市の特定避難勧奨地点を28日に解除する。21日、同市で説明会を開き、住民に方針を伝えた。対策本部は当初、10月中の解除を目指していたが、住民側の反発を受けて延期していた。南相馬市の解除で、原発事故による特定避難勧奨地点は全てなくなる。
南相馬市には、放射線の年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるとみられ、特定避難勧奨地点に指定された世帯が橲原、大原、大谷、高倉、押釜、馬場、片倉の7行政区に142地点(152世帯)ある。対策本部が7、8の両月に実施したモニタリング調査で、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回ることが確実となったため、解除を決めた。
10月に3回にわたって開いた説明会では、放射線量への不安などから住民の反対意見が相次いだ。対策本部は指定世帯を戸別訪問し、約80世帯の住民に直接説明したり、希望する世帯で落ち葉掃除や除草を行って線量低減を図ったりするなどの対応を取り、解除の準備を進めてきた。
今月中に指定を解除した場合、解除後3カ月で打ち切りになる精神的賠償は年度末の来年3月まで支払われるため、対策本部は一つの節目として、この時期の解除に踏み切るとみられる。
説明会で本部長の高木陽介経済産業副大臣は「(指定を解除することで)線量が下がっている事実を全国に伝えることが、風評被害からの脱却、復興本格化のために重要」と住民に理解を求めた。
桜井勝延市長は「最低でも今年度いっぱいまで指定を継続してほしいと(政府に)要望していた。(解除後も)住民との話し合いは継続する必要がある」とし、政府に住民支援の継続を求めた。
<避難勧奨地点>南相馬28日解除へ
河北新報 2014年12月22日
国の原子力災害現地対策本部は21日、福島第1原発事故に伴い、放射線量が高いとして指定していた南相馬市の特定避難勧奨地点について、28日に指定を解除することを決めた。指定の152世帯を対象に市内で開いた住民説明会で伝えた。28日午前0時で全世帯、142地点の指定が解除され、福島県内から勧奨地点はなくなる。
◎住民反対、国押し切る
説明会には住民ら約80人が出席。本部長の高木陽介経済産業副大臣は「空間線量は既に健康影響を考えなくていいレベル。風評被害からの脱却のためにも、総合判断した」と理解を求めた。
会場からは「農地除染が終わっていない」「避難区域より放射線量は高い」と放射線への不安などから現段階での解除に反対の声が相次いだが、国側が押し切った。
同席した桜井勝延市長は「最低でも年度内は解除しないよう要請してきたので不本意。国は今後も住民の声を聞く場を設けてほしい」と述べた。
国は全世帯が指定基準の年間被ばく線量20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルト相当)を下回ったとして10月中の解除を検討したが、住民の反発が強く延期。その後、対象世帯の戸別訪問や希望世帯での放射線軽減のための清掃活動を実施してきた。
国が避難を勧めた勧奨地点は、原発20キロ圏外で局所的に放射線量の高い世帯を指定。大半が避難しており、精神的損害に対する月10万円の慰謝料が支払われている。指定解除で慰謝料の対象から外れるが、解除後3カ月間は支給される。伊達市と福島県川内村は2012年12月に解除され、指定は南相馬市内のみだった。