経産省の有識者会議が、大手電力会社の原発廃炉費用を電気料金に転嫁する方針を決めた記事は20日に紹介しましたが、高知新聞が社説「これでも『自由化』なのか」で取り上げて、電力自由化の前提となる公平な競争条件を大いに阻害するものであるとしました。
経産省は先にも、原発の電気に対して基準価格を設定し、自由化が進んで市場価格がこの基準価格を下回った場合、その差額分を電気料金に上乗せするという「価格保証制度」を提案しましたが、社説はそれも取り上げてこれでは「自由化」ではなく「特別扱い」だとしています。
さらに「原発に経済性はない。今後、コストはさらに上昇する」との大島堅一・立命館大教授の指摘も紹介しています。
東京新聞や地方紙は電力会社に係わる問題点もキチンと指摘しますが、いわゆる5大紙は電力を批判する記事はほとんど載せません。やはり広告の大得意先には逆らえないということでしょうか。
電力会社が広告費に莫大な費用を掛けられるのは総括原価方式で何の苦労もなく広告費を出せるからであって、マスコミ本来のもつ重要性を評価してのことではなく、逆に自分たちの意のままに扱いたいが為です。
真実を報道する勇気を持って欲しいものです。
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【原発廃炉費】 これでも「自由化」なのか
高知新聞 2014年12月19日
2016年4月からの電力小売り全面自由化を前に、また自由化の趣旨とは相いれない動きが出てきた。
経産省案は全ての電力利用者の負担を想定しており、原発を持たない新規参入の電力小売会社の利用者も費用を負担することになる。
電力自由化の前提となるのは公平な競争条件の確保であり、今回の決定はあまりにも疑問が多い。
「安全」と「安価」は長い間、政府が原発を推進する大きなよりどころだったが、2011年3月の福島第1原発事故は前者に疑問符を付けた。
提起された問題はこれにとどまらない。くすぶっていた後者の問題についても、除染、廃炉などを含めた新たなコスト計算が必要になっている。
原発の発電コストについて独自の試算を公表している大島堅一・立命館大教授は、ことしの高知市夏季大学で、事故対応の社会的コスト、使用済み核燃料の処理、廃炉費用などを加えると「原発に経済性はない。今後、コストはさらに上昇する」と指摘した。
電力小売りが自由化されると、原発も価格競争にさらされる。
消費者が自由に売り手を選ぶことで電力料金の仕組みに風穴をあけ、料金引き下げにつなげる―自由化にはこんな期待があったが、それにそぐわない動きが強まっている。
その典型は経産省が提案した価格保証制度だ。原発の電気に対して基準価格を設定し、自由化が進んで市場価格がこの基準価格を下回った場合、その差額分を電気料金に上乗せする。
この制度があれば電力会社は原発維持の財源を確保できるが、優遇は「原発は安価」という旧来の説明と矛盾するばかりでなく、公正な競争を損ねる恐れがある。
この延長上にあるのが今回の廃炉会計制度の見直しであろう。
有識者会議は転嫁方針を盛り込んだ報告書を来年1月にまとめるが、この方針が認められると大手電力会社は、リスクを負うことなく廃炉費用を回収できる。この半面、原発を持たない電力小売会社の利用者は、合理性に乏しい余分な負担を求められる。
自由化をうたっていても、実質は特別扱いを受ける。これでは消費者の視点に立った改革とは言えない。