高浜原発の再稼動において地元同意の範囲などを中心に、19日、20日の地方紙4紙が社説(下記参照)で取り上げました。
同原発はMOX燃料を混焼させるもので、もしも事故を起せば琵琶湖の水を汚染し、関西一帯に甚大な回復不能の打撃を与えます。
安倍政権は口を開けば、「原子力規制委が世界一厳しい基準に合格とした以上、その原発は再稼動させる」と言いますが、規制基準は別に世界一厳しくもないし、規制委自身が「合格は安全を保障するものではない」と繰り返し述べています。
政府は再稼動に向けての地元の同意について、立地自治体と県だけの合意で再稼動を決めた「川内方式」を他の原発でも踏襲したいとしていますが、とんでもないことです。
原発の立地や稼働の条件として、最低でも30キロ圏内の同意を得ることを、法的に義務付けるべきです。
東京新聞の社説を紹介します。
(地方紙の社説)
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大間と高浜 30キロ圏内の声を聴け
東京新聞 2014年12月20日
衆院選終了早々、大間原発の新規制基準への適合審査が原子力規制委員会に申請された。でも忘れないで。多くの人は原発依存を望んでいないし、隣接地域の住民は事故への不安を抱えたままだ。
国内には、建設中の原発が三基ある。
中国電力島根3号機(松江市)と東京電力東通1号機(青森県東通村)、そして電源開発(Jパワー)の大間原発(同県大間町)である。
大間原発は、二〇〇八年五月に着工し、一四年十一月の営業運転を見込んでいたが、福島原発事故で建設が中断され、一二年十月に工事再開した。
大間原発は、フルMOXと呼ばれる世界初の特別な原発だ。
MOX燃料は、原発で使用済みの核燃料からプルトニウムを取り出して、普通のウランを混ぜたもの。それを再び原発で燃やすのがプルサーマル発電だ。
通常のプルサーマル発電では、MOX燃料の割合は多くて三分の一までだった。ところが大間は、MOX燃料100%で運転できる。原爆の材料になるプルトニウムの“焼却炉”として、建設を急がされているようにも見える。
プルサーマルより危険性が高いとの指摘もある。世界初のことだけに、住民の不安はより強い。
原発推進に戻った自民党は、衆院選で大勝した。しかし、国民の多くが、将来的には、原発への依存から脱却したいと望んだままだ。原発を新たに造れば、その意思に背くことになる。
大間原発から対岸の北海道・函館は、最短だと二十三キロしか離れていない。3・11後、原発事故時の避難計画策定を義務付けられた三十キロ圏内だ。函館市の工藤寿樹市長は四月、「私たちを全く無視している」と、国とJパワーを相手取り、建設差し止めを求めて東京地裁に提訴した。その不安と憤りをさらに無視するような審査の申請ではなかったか。
申請の翌日、規制委は、関西電力高浜3、4号機が事実上、3・11後の新基準に適合するとした。
高浜原発の三十キロ圏は福井、京都、滋賀の三府県をまたぐ。京都も滋賀も、立地自治体並みの安全協定を求めている。
規制委の田中俊一委員長は、川内原発の時と同様、「安全か、安全じゃないかという表現はしない」と繰り返す。だとすれば、立地や稼働の条件として、最低でも三十キロ圏内の同意を得ることを、法的に義務付けるべきではないか。