新潟日報が、原発から約10キロに位置する長岡市大積田代町で自営業を営む五十嵐さんが、立地自治体でないということだけで、再稼動同意・非同意の蚊帳の外に置かれるのはおかしいとつぶやいた問題を取り上げました。
川内原発の再稼動「同意」の判断は首長と議会だけに委ねられました。
「地元の同意」における地元の範囲については法的な取り決めはないということです。そうであればなおさら地元の範囲も含め、同意の主体は首長と議会だけでいいのかなどのルール作りが必要です。
新潟県では一昨年、柏崎刈羽原発再稼働について住民投票条例の制定を直接請求しましたが、県議会で圧倒的な大差で否決されました。
そのとき、事前には泉田知事は直接請求に肯定的な発言をしていましたが、いざ県議会に提案した際には知事自身が住民投票を成立させたいのかそうでないのかさっぱり分からないという提案の仕方で、議員からもどちらなのかと疑問が出されました。
将来の肝心なときにそれらのことが再現されてはなりません。
将来の肝心なときにそれらのことが再現されてはなりません。
新潟日報の記事を紹介します。
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住民ら「30キロ圏の声聞いて」
原発再稼働・地元同意 蚊帳の外に不安強く
新潟日報 2014年12月11日
東京電力柏崎刈羽原発を抱える本県にとって重要な課題が、衆院選でほとんど議論されていない。それは、「原発が再稼働の手続きに入ったとき、どこまでの範囲の住民の同意が必要なのか」というものだ。政府が曖昧にする中、9月以降の九州電力川内原発(鹿児島県)の手続きでは立地する薩摩川内市と県だけとなった。もし柏崎刈羽が再稼働手続きに入ったら ― 。本県の立地地域外の住民らは蚊帳の外に置かれることへの不安を抱えている。
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柏崎刈羽原発の「立地地域」の内と外とが一本の川で隔てられている場所がある。原発が立地する刈羽村の油田地区と長岡市大積田代町との境界を流れる黒川がそれだ。
「川の向こうかこちらかで、再稼働の是非について話を聞く聞かないが分かれるのはおかしい」。大積田代町で養鯉業などを営む五十嵐世樹さん(66)は川を眺め、つぶやいた。
鹿児島県での再稼働手続きが踏襲されれば、自宅裏にかかる橋を渡った先の刈羽村では再稼働に同意するかの意見を聞かれる。しかし、立地自治体でない長岡市にある大積田代町は、原発から約10キロと近いにもかかわらず蚊帳の外になる。
五十嵐さんは原発にあまり関心がなかったが、福島第1原発事故で安全性が気になるようになった。もし柏崎刈羽で重大事故が起きれば古里は放射性物質で汚染され、育てた錦鯉も風評被害を受けかねない。
「再稼働の議論では、少なくとも(事故時に避難準備区域となる)原発から30キロ圏の住民の声は聞くべきだ」。衆院選の候補者には立地地域以外の住民の思いも聞いてほしいと願う。
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新潟日報社が6月にまとめた、原発問題に関する県内30市町村長を対象としたアンケート調査でも、地元同意の範囲をより広くとらえる回答が多かった。「県内全市町村」との回答が最も多い10人で、「30キロ圏内の市町村」も6人いた。
関川村の平田大六村長はこの調査で、全県だけでなく「県外の周辺自治体」も挙げた。事故後、福島第1原発から150キロも離れた関川村でも山菜やクマ肉などから微量の放射性セシウムが検出されたからだ。
平田村長は「同意を取る範囲が立地地域はもちろん、30キロ圏でもまだ狭い。県境で区別するべきでもない」と話す。さらに、現在、法的根拠のない「地元同意」について、地元の範囲も含めたルール作りの必要性を指摘する。
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本県では再稼働に対する民意を県民投票で問うよう求める運動があった。市民団体が県議会に県民投票条例案を直接請求したが、昨年1月に否決された。
この運動に関わった三条市のイラストレーター宮島雅子さん(46)は鹿児島での再稼働手続きに疑問を示す。同意の範囲だけでなく、その民意のまとめ方に対してもだ。
鹿児島での「同意」の判断は、首長と議会だけに委ねられた。「住民の意見を本当にくみ取れているのだろうか」。宮島さんの胸に湧いた疑念は消えない。
原発の再稼働論議が始まった中での衆院選。宮島さんは、国民投票など住民の思いを直接反映できるシステムづくりについて議論されることを望んでいる。