2014年12月26日金曜日

東海原発の広域避難計画 課題多く実効性に疑問 

 東海第二原発過酷事故時の広域避難計画を策定する災害対策検討部会が24日開かれましが、52万人が避難する想定の県外の避難先自治体との調整が進んでいなかったり、国営ひたち海浜公園の野外イベント時に事故が発生した場合避難に大混雑を生じる問題が抜けていたり、事故時に風向きによって避難の方向を変える対応が出来ていないなど、課題が数多く指摘されました。
 また5キロ圏外の子供などが安定ヨウ素剤を希望しても、現状では交付金がそこまで対象にしていないので出来ないことも明らかになりました。
 事故時風向きによって避難先を変える必要性については、「屋内退避でプルーム(放射性雲)をやり過ごした後、取りあえず30キロ圏外に出るので風向きは関係ない」としたということですが、そんな絵に描いたような単純な想定で本当にいいのでしょうか。
 プルームが万人が承知の時間帯に一度だけ放出されるなどというのは、あまりにも都合のよい想定で、福島事故の現実とも対応していません。第一降雨時であれば30キロ圏内に放射能が着地するので屋内退避では危険でしょう。
 
 委員長は「一年、二年で完璧なものができるとは思わない」と述べたということですが、それはその通りで、完璧な避難計画が出来上がってから、はじめて再稼動の是非を判断することになります。
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課題多く実効性に疑問 東海第二原発の広域避難計画
東京新聞 2014年12月25日
 日本原子力発電東海第二原発(東海村)で過酷事故が起きた際の広域避難計画を策定している(茨城)県地域防災計画改定委員会の原子力災害対策検討部会(委員長・藤城俊夫高度情報科学技術研究機構参与)が二十四日、水戸市内で開かれた。約五十二万人が避難する想定の県外の避難先自治体との調整が進んでいない事態が明らかになり、委員からは計画案の課題が数多く指摘された。県は来年三月までに計画をまとめる方針だが、実効性のある完全な計画の提示はできそうにない。 (林容史)
 
 前回八月の会合で、県は避難対象となる原発から三十キロ圏の緊急時防護措置準備区域(UPZ)の十四市町村に住む九十六万人の県内外の避難先を示した。今回は、避難に当たってのより具体的な方法が協議されたが、委員からの指摘や質問に、県側は「今後、国や市町村と協議する」「検討したい」などの回答に終始した。
 
 放射線障害を防ぐ安定ヨウ素剤は、国の指針では原発から五キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)が事前配布の対象。委員が区域外で希望する住民への配布について聞いたが、県は「交付金の問題もあり、国と協議して決めたい」とした。
 
 事故時の風向きによって避難先を変える必要性の指摘も。県は「屋内退避でプルーム(放射性雲)をやり過ごした後、取りあえず三十キロ圏外に出るので風向きは関係ない」とした。
 
 また、ひたちなか市の国営ひたち海浜公園の野外イベント時に事故が発生した場合、大勢の若者と住民を同時に避難させる困難さも問題視された。
 
 委員の一人、東海村の山田修村長は、原発からの距離と原発の状態により避難行動が変わることに、「住民にとって計画が分かりにくい」と発言。計画を周知する方法について、さらなる検討を求めた。
 
 部会終了後、県原子力安全対策課の黒沢一男副参事は取材に対し、避難先とした他県から、まだ受け入れの了解が得られていないことを認め、「原発のない県には、まず十分に理解してもらわなければ」と協議の難しさを示唆。計画には「かなりの課題があり、本年度中に全てが解決するわけではない」とし、「まだ実効性が保てない部分は今後の課題として、しっかり受け止めていきたい」と述べた。
 
 藤城委員長は「一年、二年で完璧なものができるとは思わない。できるだけ基本的な形はみせてほしい」と要望した。今後、東海第二原発の再稼働の判断もにらみ、「そこまでには間に合わせなければ」と話した。