東京新聞 2014年12月15日
「町の子どもたちは、私たち大人を見ています」
指定廃棄物の最終処分場候補地に選ばれた塩谷町で行われた、選定の白紙撤回を求める住民集会。壇上に立った町の住民団体「放射能から子どもを守る会・塩谷」の岩間綾子さん(47)は集まった約2000人に向かって、静かに語り掛けた。
東京電力福島第一原発事故後、地域の子どもたちの被ばく量を少しでも減らそうと、知人たちと放射線測定機を購入。各地の空間線量を記録し、町に除染を求める陳情を続けてきた。最近は、汚染されていない地域で子どもたちを一定期間過ごさせる「保養」の啓発にも取り組む。
しかし活動は長い間、孤独な闘いを強いられてきた。原発事故直後に会が実施した町内の調査では、国が除染の目安とする毎時0.23マイクロシーベルトを超える地点が複数見つかった。各学校に「行事などで使う場所の線量を確認してほしい」と訴えたが、ほとんど相手にされず、当時中学生だった長女からは「先生の目があるからやめて」とも言われた。
状況は今年7月、町が指定廃棄物の最終処分場候補地に選ばれると一変。町では被ばくや原発問題への関心が高まり、公の場で放射線に関する助言を求められる立場になった。
度重なる試練に疲れ、かつて活動に理解のなかった人々と向き合うことが嫌になりかけた時、友人に諭された。「今の塩谷町民の姿は、活動を始めたころのあなたと同じはずだよ」
政治が町民の声を誠実に受け止めていないと感じ、落ち込むことも多い。しかし今は、多くの人と町の将来を考える日々にやりがいも感じている。その場限りの出来事に一喜一憂するより、活動を長く続けることが大切だと思うからだ。
「町の人々は指定廃棄物問題をきっかけに、私たちの取り組みを時間をかけて理解してくれた。すべてをチャンスと思い、原発に依存しない未来につなげていきたい」
最近、何よりも励みになったのは、高校生になった長女の言葉だ。「やっぱり、お母さんが言っていたことは正しかったんだね」
原発事故後、空間放射線量の計測や
保養の支援に取り組んできた岩間さん