河北新報が東日本一帯の野生キノコの出荷制限について報じています。
現在出荷制限を受けている自治体は、青森、岩手、宮城、福島4県をはじめ、中部までの10県109市町村となっていて、事故後、規制が解除されたケースはありません。それどころか特定の品種では放射能濃度が高くなる恐れがあるということです。
添付の「野生キノコ出荷制限区域」図を見ると日本の国土は実に幅広く放射能で汚染されていることが分かります。
キノコは土壌からセシウムが移行しやすく、蓄積する量も多いためで、事故から30年近く経っているチェルノブイリでもキノコの放射能汚染度はいまだに極めて高く食用にはなりません。
一旦市場に出てしまえば野性かどうかの見分けはつきません。出荷制限は厳守して欲しいものです。
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原発事故後、野生キノコ出荷制限続く
河北新報 2014年12月20日
東京電力福島第1原発事故後、東北の広い範囲で野生キノコの出荷制限が続いている。他の農産品に比べて放射性セシウムを蓄積しやすい特性があり、汚染土壌の影響をより強く受けるためだ。マツタケなど希少品の規制回避に向け、一部品種の出荷を自粛する動きも出ている。(野内貴史)
現在、出荷制限を受けている自治体の分布は図の通り。青森、岩手、宮城、福島4県をはじめ、中部までの10県109市町村となっている。事故後、規制が解除されたケースはない。
林野庁の担当者は「原発事故後は愛好家が採取を自粛している。制限自治体に限らず、全体的に流通量が大きく減っている」と話す。
規制は野生キノコ全体が対象となる。品種ごとに汚染の度合いは異なるが、誤認の可能性などを考慮した。郡山女子大の広井勝教授(食品学)は「多くの品種があるキノコは専門家も外見だけでは間違うことがある。安全を優先すれば全体に規制をかけるのもやむを得ない」と理解を示す。
規制が長引く背景には野生キノコの特性がある。東北大の木野康志准教授(放射化学)は「野菜などと比べ、キノコは土壌からセシウムが移行しやすく、蓄積する量も多い」と指摘する。
木野准教授によると現在、セシウムは土壌表面からほぼ5センチ以内の深さにとどまる。年0.5センチ程度の速度で沈降しつつ、拡散していくとみられる。今後の菌糸分布によっては、特定の品種で放射能濃度が高くなる恐れがあるという。
たとえ1種類でも基準値を超えてしまえば、地域の野生キノコ全体に累が及ぶ。出荷制限を受けていない市町村の中には、高値が付く希少品種が規制される事態を防ごうと自衛策を講じる自治体もある。
国内有数のマツタケ産地として知られる岩手県山田町は2012年、住民に対し、アミタケ、ホウキタケなど売価の低い品種を出荷しないよう要請した。
岩手では県南部の9市町が規制対象となり、同町も警戒を強めている。町農林課の担当者は「マツタケの出荷額は年間数千万円。販売できなくなると経済的な損失が大きい」と説明、マツタケ出荷を最優先にする姿勢に理解を求めた。