2014年12月18日木曜日

原発再稼動 同意の範囲は拡大が必要

 事実上の規制基準合格となった高浜原発は今後は再稼動への「地元同意」が得られるかに問題が移ります。
 川内原発1、2号機で、鹿児島県地元の範囲を県と立地自治体の薩摩川内市に限定しました。その結果その両者が同意して再稼動が決まりました。
 交付金の蜜を吸い続けてきた立地自治体と自民党が圧倒的勢力を持つ県議会の同意は容易に得られるので、結局再稼動が簡単に実現することになります。
 
 安倍政権は同意の範囲を隣接自治体などに広げれば、手続きや説得に時間がかかるとして「川内モデル」を後押しする姿勢を示していますが、そんな再稼動ありきの姑息な手段でことを進めていい筈がありません。
 
 東京新聞は、「同意の範囲 拡大必要」と題した解説記事で、避難計画の策定を義務付けた地域が原発の半径30キロ圏に拡大した以上、少なくとも30キロ圏の自治体を対象と考えるのが自然だと述べています。まさに誰しもが素直に合意できる主張です。
 もともと危険範囲を30キロとするのはあまりにも狭小に過ぎてて根拠など見出せません。アメリカなどでは80キロ圏内とされているということです。現実に福島から数百キロ離れた東京も、原発事故後は人間の住めるところではないとして関西以遠に転居した医師もいるくらいです。
 
 高浜原発の30キロ圏内には福井、京都、滋賀の府県の計12市町が含まれ、都府舞鶴市の一部5キロ圏に入ります。
 山田啓二・京都府知事は、関電副社長に対して「原子力安全協定が締結されていない段階では(再稼働は)受け入れられない」と述べました。
 滋賀県の三日月大造知事は、「福島原発事故を真に教訓として受け止めるならば、原発を動かすという判断はされないと思う」とけん制。再稼働を進めれば「断固抗議する」と述べています
 
 立地自治体と県議会が同意すればよいというような、安倍政権の姑息な手段は認められません。
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同意の範囲 拡大必要
東京新聞 2014年12月17日 
解説
 関西電力高浜原発3、4号機が新規制基準の適合審査に事実上合格したことを受け、再稼働に向けた焦点は「地元同意」に移る。問題はその範囲だ。東京電力福島第一原発事故後、避難計画の策定を義務付けた地域が原発の半径三十キロ圏に拡大した以上、少なくとも三十キロ圏の自治体を対象と考えるのが自然だろう。
 
 高浜原発三十キロ圏には、福井、京都、滋賀の三府県の計十二市町が含まれ、計十八万三千人が住む。この七割を占める京都府の山田啓二知事は、再稼働の判断に対する発言権を求めている。三十キロ圏のすぐ外側に「近畿の水がめ」である琵琶湖を抱える滋賀県の三日月大造知事も同様だ。
 
 これに対し、福井県の西川一誠知事は地元同意の範囲を「福井県と高浜町」とする従来の姿勢を崩していない。既に審査に合格した九州電力川内原発1、2号機でも、鹿児島県は地元の範囲を県と立地自治体の薩摩川内市に限定した。再稼働に前向きな安倍政権は範囲を隣接自治体などに広げれば、手続きや説得に時間がかかるとして「川内モデル」を後押しする姿勢を示している。
 
 原子力規制委員会の審査に合格してもなお、田中俊一委員長自ら「リスクゼロではない」と事故が起きる可能性を認めている。住民を守る避難計画は規制委の審査の対象外で、実効性は担保されていない。
 
 どこの自治体の住民であろうと、同じ三十キロ圏である以上、事故で飛散する放射性物質によって健康を損ない、故郷を失うリスクは変わらない。立地自治体という線引きで同意の権限を決めてしまう方法で、住民が納得するだろうか。放射性物質が風に乗って広域に拡散する現実を考えれば、三十キロ圏外の住民だって黙ってはいまい。 (西尾述志)
 
 
高浜原発再稼働に一歩 
グリーンピース“市民の懸念を無視”と規制委を批判
NEWSPHERE 2014年12月18日
 17日、原子力規制委員会は、関西電力高浜原子力発電所の3、4号機について、再稼働のための事実上の合格証となる審査書案を了承した。原発推進の立場を取る安倍政権が、また一歩再稼動に近づいたと、海外メディアが報じている。
 
◆再稼動は時間の問題?
 海外メディアはいずれも、今回の発表が安倍自民党の大勝後に行われたと報道。「政府が高浜再稼動に成功すれば、原子力回帰への弾みがつくかどうかの、より分かりやすい指標となりそう(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)」、「福島の事故以来、停止していた原発のスイッチをいれるための、政府の意欲に弾みがつく(ブルームバーグ)」と述べ、原発推進派の安倍首相のもとで、再稼動が本格化すると見ている。
 
 原発停止後、液化天然ガスなどの輸入燃料にエネルギー資源を置き換えたことで、2013年に電力会社が払った燃料費は、2010年と比べて3.6兆円アップ。また、高浜原発を持つ関西電力は、その歳入の86%を発電から得ており、2014年3月期の純損益は970億円で、今年度のさらなる赤字は避けられないとみられる(ブルームバーグ)。
 
 原子力は「重要なベースロード電源」とする日本政府は、2018年までに48機ある原子炉のうちの25機を再稼働させるだろうと、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは予想している。
 
◆最終決定権は誰に?
 WSJは、規制委からの合格証が出ても、「だれが最後の決断をするのか」という問いへの答えはなく、再稼動への道はいまだ不確かだと述べる。規制委自体は、再稼動の決定はその権限外だと強調。地元の了解は必須だが、どの自治体が最終的に再稼動を決めるのかは明らかではないとWSJは述べる。
 
 福井県にある高浜原発の場合も、京都、滋賀の県知事が、両県も危険にさらされる可能性があるとし、再稼動に対して発言権を要求してきた。NTTデータ経営研究所の鈴木敦士氏は、「この問題にどの自治体が加わることが許されるのかという厳格な定義なしで、中央政府がこのような要望を無視することは難しい」とし、制度の問題点を指摘している。
 
◆規制委への不信
 WSJは、テレビ朝日が12月初めに行った世論調査に言及。44%の回答者が安倍首相を支持すると答えたが、58%はたとえ規制委が合格としても、原発再稼動には賛成しないと答えたと述べ、再稼動には依然不安を持つ国民が多いことを説明する。
 
 AFPは、福島の事故以来、日本人は非常にテクノロジーに懐疑的とし、「福島の事故は少なくとも部分的には人災で、骨抜きにされた監督者が、電力会社と政府の癒着を断ち切る努力を怠ったためだ」という批判もあると述べる。
 
 それを正すために立ち上げられた規制委が、その義務を怠っていると、環境保護団体のグリンピースは主張(AFP)。「深刻な事故が起これば、関西の人々と経済への大打撃となる。被ばくから地域の人々を守る効果ある緊急計画は存在しない」と声明を発表し、規制委が高浜の安全対策を承認したことは、市民の懸念を無視していると批判した(ブルームバーグ)。
 
 
高浜原発:規制委「合格」…「地元同意」は不透明 
毎日新聞 2014年12月17日
 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)が17日、原子力規制委員会の安全審査に事実上、合格した。しかし、事故の際に被害が及ぶリスクを懸念する周辺自治体からは、再稼働に慎重な声が相次いだ。国や関電が「地元同意」を取り付けられるかは不透明だ。
 
 原発がある福井県高浜町の野瀬豊町長は町役場で取材に応じ、「厳しい基準にのっとり審査された結果を尊重したい」と前向きに捉えた。「地元同意」の範囲については「広がるほど結論が出ない。物事が決まらない状況は好ましくない」と述べ、高浜町と福井県に限るのが適切という考えを示した。
 西川一誠・福井県知事は談話を発表し、「残る手続きについて日程を明確にし、遅滞なく進めるべきだ」と規制委に注文した。
 
 一方、高浜原発から30キロ圏内にかかる京都、滋賀両府県知事は、立地自治体並みの関与を求めていく立場を改めて主張した。
 山田啓二・京都府知事はこの日、岩根茂樹・関西電力副社長と府庁で会談し、「原子力安全協定が締結されていない段階では(再稼働は)受け入れられない」と苦言を呈した。
 京都府は舞鶴市の一部が高浜原発から5キロ圏に入り、30キロ圏に約12万8000人が住む。「立地自治体と言っても過言ではない」と強調する山田知事は「(再稼働への)同意権までは難しいと思うが、事故発生時に通報を受けるだけでなく、事前に安全に関してものが言える協定が不可欠だ」と話した。
 
 滋賀県の三日月大造知事は、原発事故に備えた広域避難や防護態勢が整備されていない状況を挙げて「福島原発事故を真に教訓として受け止めるならば、原発を動かすという判断はされないと思う」とけん制。再稼働を進めれば「断固抗議する」と言い切った。
 三日月知事は今年7月の知事選で、嘉田由紀子前知事の提唱した「卒原発」を引き継いで初当選。関電が発表した電気料金値上げ方針に絡み「原発に依存しないエネルギー社会を電力会社がどう作ろうとしているのか見えない」と批判した。【松野和生、藤田文亮、加藤明子】