栃木県北部の那須町、那須塩原市、大田原市の3市町の住民有志が、原発ADRへの集団申し立てを準備しています。
栃木県の北部は福島県と同じように放射能で汚染されていますが、これまでは福島県と異なり除染も健康調査も実施されていません。
有志の皆さんは、原発事故で恐怖やストレスを感じ、安全な食べ物を買うための出費が増えたとして、福島県の自主的避難等対象区域に支払われたのと同額の、大人12万円、子ども・妊婦各52万円を求めるとしています。
ADRは申立てが無料で、4~5ヶ月ほどで決着するとされ、時間やお金、書類をつくる手間が少なくて済むメリットがあります。
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「原発ADRの集団申し立て」 時間と手間省き 公平な賠償目指す
東京新聞 2014年7月11日
東京電力福島第一原発事故を受け、(栃木)県北部の住民有志が、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)への集団申し立てを準備している。裁判や直接請求と何が違う? 参加したい人はどうすればいい? 知っておきたいポイントをまとめた。 (大野暢子)
Q 原発ADRって?
A 原発事故の被害者にスムーズな賠償が行われるよう、国がつくった仕組みだよ。弁護士ら仲介委員が原告と東電の言い分を聞き、合意できる内容の和解を目指すんだ。
Q 裁判の和解とどう違うの?
A ADRへの申し立ては無料ででき、四~五カ月での解決が目指されている。時間やお金、書類をつくる手間が少なくて済む。
Q 県北部のADR申し立てには、どんな人が参加できるの。
A 事故当時、那須塩原、大田原、那須の三市町に住んでいた人たち。共通の被害を東電に認めさせ、参加者が等しく賠償を受けられるよう訴えるそうだ。
Q 裁判より楽かもしれないけど、ADRと一般住民がやりとりするのは大変そう。
A 集団申し立てを呼び掛けている住民団体「栃木県北ADRを考える会」には、代理人となる弁護団がいるから大丈夫だ。その代わり、参加する住民は一世帯二千円の弁護士費用を払う決まりになった。
Q 三市町には実際にどんな被害が出ているの。
A 事故後、広域に放射性物質が降り、今も空間放射線量が国の基準値(毎時〇・二三マイクロシーベルト)を上回る地域が残されている。子どもの健康が不安な親も多い。福島県では、線量を下げるのに効果的な表土除去や健康調査が行われたが、国の方針により、これまで栃木県は対象外だった。
Q 県北部のADRでは、何を請求するの。
A 事故で恐怖やストレスを感じ、安全な食べ物を買うための出費が増えたなどとして、大人十二万円、子ども・妊婦各五十二万円を求める。福島県の自主的避難等対象区域に支払われたのと同じ額だ。放射線量ではなく、県境で支援内容に差をつけた国に、考えを改めてほしいという思いも込めたそうだ。
Q 見通しは。
A 福島県相馬市に隣接する宮城県丸森町の筆甫(ひっぽ)地区では、賠償額が福島県内の半額程度だったことに納得がいかず、住民六百九十四人がADRに申し立てた。東電は和解案を受け入れ、今年六月、福島県外で同県内並みの賠償を認めた、初のADR和解の成立が確実になった。
Q 心強い話題だね。
A ただ、福島県浪江町の住民による申し立てでは、和解案の一部を東電側が拒否した。
Q 考える会はどんな活動をしているの。
A この夏、三市町で住民説明会を開いている。仕組みや目的をよく知って、参加するかどうかを考えるといいね。考える会への問い合わせは事務局=電090(7013)0330=へ。