2014年7月28日月曜日

原子力防災 夜間避難、介護施設任せ 30キロ圏自治体

 原発事故で夜間に避難が必要になった時に、介護施設居住者の避難は、殆どの自治体でそれぞれの施設任せになっていることが、毎日新聞の調査で明らかになりました。
 
 ある特別養護老人ホームには認知症の人を含む高齢者約90人が暮らし、日中は介護士ら約50人が勤務していますが、夜間は7人に減るということです
 夜間に避難が必要になったときには職員を緊急招集するのが建前ですが、一般の火災などとは違い放射性物質が放出される原発事故時に、被曝を恐れる職員に、無理に子どもを家に残してでも集まれとは言えない」と、施設長は語ります
 
 そこまでは手が回らないというのが自治体の言い分ですが、そうかといって施設側にも対応能力はありません。事実上、避難弱者は放置されることになります。
 
 これまでも言われてきたことですが、やはり原発の再稼動は出来る状況にありません。
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原子力防災:夜間避難、介護施設任せ 30キロ圏自治体
毎日新聞 2014年07月27日
 介護保険施設で夜間など職員が手薄な時に原発事故で避難を迫られた場合、対応が施設任せになっている実態が、毎日新聞が原発から30キロ圏の自治体に実施したアンケートで浮かび上がった。職員を緊急招集して原則的に各施設で対応するケースが多く、自治体として対策を講じているところはわずかだった。
 
 九州電力川内原発の東約15キロにある鹿児島県薩摩川内市の特別養護老人ホーム「幸せの里」。認知症の人を含む高齢者ら約90人が暮らす。寝たきりの人や歩行器の利用者らを日中は介護士ら約50人が介護する。しかし、夜間は7人に減る。
 
 「ピコーン、ピコーン」。ナースコールのチャイムが静まり返った廊下に響く。「大丈夫ですか? 何かあったらまた呼んでくださいね」。トイレの介助などで介護士は絶え間なく各部屋を見回る。
 
 もしこんな時に原発事故で避難を迫られたら、自力で歩ける人でも介護士が支え、車やバスまで付き添わなければならない。寝たきりの人なら複数で対応する必要がある。
 
 火災などに備えた職員の緊急連絡網があり、いざという時は電話連絡で集まる。だが原発事故では、放射性物質が放出されることもある。「被ばくを恐れる職員に、無理に子どもを家に残してでも集まれとは言えない」。鹿子木(かこき)努施設長(65)は途方に暮れる。
 
 毎日新聞は6〜7月、原発から30キロ圏の21道府県と、東京電力福島第1原発事故で避難指示が出ている地域を除く125市町村に施設が手薄な時の対応方法を尋ね、施設のない自治体を除く19道府県・106市町村が回答した。
 
 「原則は施設職員に集まってもらう」(薩摩川内市)、「市でも人員不足が考えられ応援は難しい」(静岡県磐田市)など12道府県と20市町村は事実上の施設頼みで、対応方法が決まっていない4県・56市町村と合わせ7割強に上った。自治体職員を派遣すると答えたのは10市町村。残る3県・20市町村は避難せず「屋内退避」にとどめたり、国や県に協力を求めたりする。
 
 東北電力東通原発の西約20キロの青森県むつ市の特別養護老人ホーム「みちのく荘」でも、夜間は職員4人で60人に対応する。中山辰巳施設長(62)は「事故時の対応は各施設で個別に考えているが、夜間の避難はほとんど不可能」と話す。市側も「職員が手薄になる状況が考えられ、市単独で対応策を考えるのは困難」という。
 
 原子力防災に詳しい広瀬弘忠・東京女子大名誉教授は「国が防災を自治体の業務として押しつけたため、施設や自治体が追い詰められている。国が解決策を示すべきだ」と指摘する。【奥山智己、狩野智彦】