福島原発事故の避難者について、埼玉県はこれまで2640人としていましたが、今月、県内全市町村に把握人数を照会したところ5044人となり、最大約2400人の漏れがあったことが分かりました。
県はこれまで、県と二十数市町が提供している応急仮設住宅の入居者のみを避難者として集計してきました。それでは多数の落ちがあるのは明らかなことで、県内の避難者支援団体が2013、14年の2回、独自に県内全63市町村に聞いたところ、当時の県発表の1.7~2倍になり、「県発表は過少ではないか」と指摘していました。
集計されなかった人たちは基本的に自主避難者で、さらに漏れ落ちている人も多数いるとみられます。そして予防接種など医療・教育をはじめとした行政情報、避難者支援情報などが伝わっていない恐れがあります。いずれにしても誠にお粗末な話です。
関西学院大の松田曜子准教授は、「避難者に生活上の不利益が生じないよう行政は避難者の実態を把握しなければならない。埼玉県だけの責任ではなく、国が統一のルールで避難者を定義付けず、自治体任せにしているのは大きな問題だ」と批判しています。
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原発避難:2400人把握せず…埼玉県集計 国の基準なく
毎日新聞 2014年07月30日
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の避難者について、埼玉県が今月、県内全市町村に把握人数を照会したところ、従来集計に最大約2400人の漏れがあったことが分かった。国が避難者の定義や人数の集計方法を示していないため、同県はこれまで独自に、県や一部市町が無償提供している仮設住宅の入居者のみ避難者として集計し、一部市町にしか定期的な照会をしてこなかった。復興庁は「他の都道府県にも把握できる限り多くの数字を出すよう伝えたい」としている。【日野行介】
埼玉県への避難者数を巡っては、県内の避難者支援団体が2013、14年の2回、独自に県内全63市町村に聞いたところ、当時の県発表の1.7~2倍になり「県発表は過少ではないか」と指摘していた。今回の増加分は基本的に自主避難者で、居住把握が困難でさらに漏れ落ちている人も多数いるとみられ、予防接種など医療・教育をはじめとした行政情報、避難者支援情報などが伝わっていない恐れもある。
県消防防災課は今月8日、県内全市町村に避難者数を照会。県は6月に避難者数を2640人としていたが、回答を単純集計すると5044人となった。このうち公営住宅への入居が新たに確認できた人を含む2992人を復興庁に暫定数として報告。残る約2000人は自費で賃貸住宅に入居している人などとみられ、市町村に再照会する。
県はこれまで、県と二十数市町が提供している応急仮設住宅の入居者のみを避難者として集計。集計表を添付したメールを毎月、当該市町にだけ送り、変更があれば連絡を求めていた。
今回は仮設住宅の入居者以外も避難者に含めたが、確実に把握できている人数を回答するよう市町村に要請。このため、複数の自治体の担当者は取材に「ずっと照会を受けずフォローできていないので『不明』と回答するしかなかった」と明かした。避難者が特に多いさいたま市も福島県の一部自治体からの避難者のみを回答した。
県消防防災課によると、12年4月に業務を別の課から引き継いだ際、仮設住宅の入居者を全市町村に照会したのを最後に、一部市町にしか照会していなかった。渋沢陽平課長は「(仮設の入居者という)根拠のある数字にこだわりがあった。発想の切り替えができなかった」と釈明した。
復興庁は毎月1回、都道府県からの情報を基に全国の避難者数を公表しており、7月10日現在で24万7233人。
松田曜子・関西学院大災害復興制度研究所准教授の話
避難者に生活上の不利益が生じないよう行政は避難者の実態を把握しなければならない。埼玉県だけの責任ではなく、国が統一のルールで避難者を定義付けず、自治体任せにしているのは大きな問題だ。