2014年7月18日金曜日

川内再稼動 「無責任だ」「なぜ」「福島の教訓どこへ」 鹿児島・福島県民

 原子力規制委員会が九州電力川内原発1、2号機の事実上の審査合格を決めた16日、50キロ圏内の鹿児島県内4市町の首長や市民団体の関係者からは、再稼働に向けて強い懸念や不安、説明責任を求める声が相次ぎました
 
 また、東北の原発事故被害者からは「福島の教訓が生かされていない」「本当に事故は起きないのだろうか」などとと疑問の声が上がり、事故から3年4カ月が過ぎても完全収束に至らない現状に、福島県民は「事故収束を最優先すべき」と訴えました。
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「無責任だ」「なぜ」 (鹿児島)県内でも川内原発へ懸念  
熊本日日新聞 2014年7月17日  
 原子力規制委員会が九州電力川内原発1、2号機の事実上の審査合格を決めた16日、50キロ圏内の県内4市町の首長や市民団体の関係者からは、再稼働に向けて強い懸念や不安、説明責任を求める声が相次いだ。
 
 原発事故時、鹿児島県出水市から避難者を受け入れる水俣市の西田弘志市長は「火山リスクなどが十分に考慮されない段階で、再稼働にお墨付きが出て心配。経済優先の中で水俣病を経験した市民にも再稼働への不安は強い」と懸念。避難計画の策定では国の積極関与を求めた。
 同県阿久根市の避難者を受け入れる芦北、津奈木両町。竹崎一成芦北町長は「規制委が安全の確保を判断すれば、それに基づく国の方針に委ねざるを得ない。国や県、九電は住民の安全対策について説明責任を果たすべきだ」と指摘。西川裕津奈木町長も「代替エネルギーで電力が賄えるようになるまでは、原発の再稼働もやむを得ない。避難者が発生した場合の放射能スクリーニング検査や除染などの準備を進めてほしい」と強調した。
 
 牛深地域が50キロ圏内にある天草市の中村五木市長は「エネルギー政策は国が責任を持って対応、判断すべき事項」とした上で、「安全性の確保は当然。国は丁寧に説明して理解を得る責務を果たしてほしい」と求めた。
 蒲島郁夫知事も「原発再稼働は専門家の技術的、科学的審査を踏まえ、国が責任を持って判断すべき事項。国は住民に丁寧に説明し、理解を得た上で判断してほしい」とのコメントを出した。
 
 一方、市民団体「原発避難計画を考える水俣の会」の永野隆文代表(59)は「規制委は新規制基準への適合のみを審査し、『原発が安全かどうかは別問題』と明言しており無責任だ」と憤る。水俣市の主婦大嶽弥生さん(58)も「福島事故の現状を直視していない。避難計画やハード整備が不十分なまま、なぜ“合格”となるのか」と首をひねった。
 「さよなら原発!九州沖縄・熊本実行委員会」の永尾佳代世話人(60)=熊本市東区=は「再稼働ありきで急いで審査した結果で、許せない。福島事故の対策すら見通しが立たない中、再稼働するのは見切り発車だ」と反発する。
 川内原発運転差し止め訴訟熊本原告団の中島熙八郎共同代表(67)=同区=は「新基準自体に問題があり、新たな知見にも対応していない。必要最低限の基準をクリアしたからといって、再稼働を認めていいはずがない」と力を込めた。   
 
 
「福島の教訓どこへ」原発事故避難者反発 川内原発新基準適合
 河北新報 2014年7月日 
 原子力規制委員会が16日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働の前提となる審査で事実上の「合格」を決めたことについて、東北の原発事故被害者からは「福島の教訓が生かされていない」などと批判の声が上がった。一方、原発立地地域の関係者からは評価する意見も出た。
 
 福島第1原発事故の後、全域が避難区域となった福島県飯舘村から福島市内に避難した無職遠藤由勝さん(69)は「原発は絶対に再稼働すべきではない」と反発した。
 全村避難は続き、現在も仮設住宅で不自由な暮らしを送る。「技術力を生かして自然エネルギーを増やすなど、原爆と原発の災禍を経験した日本だからこそ示せる道筋があるはず」と訴える。
 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に反対する仙台原子力問題研究グループの篠原弘典世話人は「規制委は再稼働ありきで審査している。新規制基準は福島原発事故の対症療法にすぎない」と批判。「女川原発の問題点を検証していく」と語った。
 女川町の須田善明町長はこれまで、女川原発の再稼働の是非は「まだ判断できる段階にない」との考えを示してきた。
 今回の規制委の判断を受け、今後について「新規制基準で原発の安全性がどう向上したのか、国は責任を持って審査結果や経緯などを丁寧に立地地域や国民に説明すべきだ」と指摘した。
 
 規制委の決定を評価したのは、東北電の東通原発が立地する青森県東通村の越善靖夫村長。「日本のエネルギー・原子力政策にとって一つの大きな節目だ」とのコメントを発表し、再稼働に向けた審査の迅速化を求めた。
 女川原発2号機と東通原発1号機の審査を規制委に申請している東北電は「2基の審査に的確に対応するとともに、規制にとどまらない高いレベルの安全対策に取り組む」と話した。
 
 
「教訓生かされたのか」川内原発再稼働へ 福島の避難者疑問の声
福島民報 2014年7月17日
 原子力規制委員会が九州電力川内(せんだい)原発1、2号機について、再稼働に向け事実上の審査合格とした16日、東京電力福島第一原発事故によって避難を強いられている県内の被災者からは「本当に事故は起きないのだろうか」と疑問の声が上がった。事故から3年4カ月が過ぎても完全収束に至らない現状に、県民は「事故収束を最優先すべき」と訴えた。
 
 「原発事故がまだ収束してもいないのに…。本当に大丈夫なのだろうか」。大熊町から会津若松市に避難している主婦泉順子さん(61)は、川内原発に関するニュースを見ながら苦い表情を浮かべた。
 4月に町の小学校教諭を定年退職した。古里への帰還は諦め市内に購入した一戸建てで生活を送る。同居している長女が働き始めたため、代わりに1歳4カ月の孫の面倒を見ている。「川内原発周辺の人たちが、原発のせいで孫の将来まで心配しなければならない状況にしてはいけない」と安全対策を徹底するよう訴えた。
 二本松市の仮設住宅で暮らす浪江町の農業田尻仁一郎さん(73)は「新基準に適合したとはいえ、東日本大震災は“想定外”の地震と津波だったはず。本当に事故を防げるのか」と福島の教訓が本当に生かされているのかどうかを疑問視した。
 いわき市の仮設住宅に避難している双葉町の無職坂本昌彦さん(72)は規制委の判断に「万が一事故が起きたら誰が責任を負うのか」と憤りをあらわにした。
 楢葉町からいわき市の借り上げ住宅で避難生活を送る無職早川篤雄さん(74)は古里を失ったなどとして東電に対し集団で損害賠償訴訟を起こしている。「被災者の救済さえ進んでいない現状で、再び原発を動かすなど考えられない。被災地の現状を分かっていない」と訴えた。
 郡山市の仮設住宅に避難している富岡町のアルバイト北崎一六さん(66)は仮設住宅暮らしが2年半を超えた。避難生活の原因となった原発の再稼働の動きが加速することを複雑な心境で受け止める。原発は周辺地域の雇用や経済活性化にも大きな影響を与えていたことを肌で感じていただけに「国や事業者は近隣住民の声にじっくりと耳を傾け、時間をかけて判断すべき」と警笛を鳴らした。
 福島市のJR福島駅東口では16日夕、川内原発再稼働反対を訴える街頭活動が繰り広げられた。活動の様子を目にした市内の会社員鈴木怜子さん(43)は「原発再稼働より事故の収束や原因究明が先ではないか」と指摘した。