2014年7月14日月曜日

個人線量測定への関心は低いのか

 環境省は個人被ばく線量を基に新たな除染方針を策定するとして、全住民を対象とした携帯線量積算計による被ばく量測定事業を始めますが、平成26年度内に開始するのは福島県内で13市町村にとどまることが分かりました
 
 環境省新たな除染方針を策定するため、幅広い年代層、職種から外部被ばく線量のデータを集めたいとし、福島県はその意向に沿って26年度、市町村が行う個人線量計の測定事業に対する補助制度拡充しました。
 また復興庁26年度、全住民を対象に市町村が実施する測定事業を福島再生加速化交付金制度の対象に加えました。
 しかし猪苗代町では、全住民を対象に測定事業開始したものの、成人からの「個人線量計を借りたい」とする申し込みは30件程度にとどまりました
 
 実際、昨年度末に福島県内27市町村が、住民に個人線量計を携帯し外部被ばく線量を測定する意思はあるか聞いたところ、「関心がない」などとする意見が多いために測定事業の実施を見送ったケースがいくつもあるということです
 ある市の担当者は「原発事故から3年4カ月が経過し、放射線に対して過敏になる人が徐々に減っているのではないか」と分析しているということですが、自らの健康に直接的に関係する放射能に対して、住民が関心を持たなくなるというのは考えにくいことです
 
 国や自治体はこれまで住民に対して年間20ミリシーベルト以下では健康に影響がないと言ってきました。そうして3年余りも放置してきた挙句に、いまさら被曝のデータが必要(多分国際機関から要求されているのでしょう)といわれても、住民は煩わしいだけの線量計の携帯は希望しません。
 
 住民を被曝から守るという根本理念を当初から放棄してきた国や自治体こそが、こうした事態をもたらした元凶です。
 本当に調査結果を今後の被曝防止に役立てる積りがあるのであれば、そのことを住民に良く説明して納得させるべきです。そうした義務と責任は国と自治体にあります。
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個人線量測定関心低く 新除染方針策定のデータ不足懸念
福島民報 2014年7月13日
■全住民対象に開始13市町村
 環境省は個人被ばく線量を基に新たな除染方針を策定するが、平成26年度内に全住民を対象とした被ばく量測定事業を開始するのは県内で13市町村にとどまる。福島民報社の12日までの調べで分かった。事業に対する住民の関心が低いとして計画を中止したケースも多い。このままでは基礎データ収集が不十分となり、実態に即した除染方針が策定されるか疑問だとする指摘が出ている。
 
■複数見送り
 環境省は新たな除染方針を策定するため、幅広い年代層、職種から外部被ばく線量のデータを集めたい考えだ。同省の動きを視野に県は26年度、市町村が行う個人線量計の測定事業に対する補助制度の内容を拡充。これまで「15歳以下と妊婦」としていた制限を外し全住民に広げた。
 一方、復興庁は26年度、全住民を対象に市町村が実施する測定事業を福島再生加速化交付金制度の対象に加えた。
 県の補助を受けて全住民を対象に実施するのは10市町村、国から交付金を受けるのは3市町村の計13市町村で【表】の通り。二本松市は40歳までを対象に実施する。
 一方、27市町村は昨年度末時点で、県の補助を受け全住民を対象に実施する計画だった。住民に個人線量計を携帯し外部被ばく線量を測定する意思はあるか聞いたところ、「関心がない」などとする意見が多く実施を見送ったケースが複数ある。
 ある市の担当者は「東京電力福島第一原発事故から3年4カ月が経過し、放射線に対して過敏になる人が徐々に減っているのではないか」と分析している。
 環境省は今月中にも、個人被ばく線量を活用した新たな除染方針を示す方針。
 その後、個人線量計で県民が測定した数値を基に、除染目標を示したい考えだ。しかし、肝心のデータが集まらなければ、目標値を公表する時期がずれ込む可能性も出る。
 環境省放射線健康管理担当参事官室は「なるべく多くの人に実測値を知ってもらいたい」と訴えているが、測定者を増やす対策を打ち出せていない。
 
■申し込み30件
 猪苗代町は全住民を対象に測定事業を開始したが、成人からの「個人線量計を借りたい」とする申し込みは30件程度にとどまった。町の担当者は「ここまで要望が少ないとは…」と困惑している。
 県関係者は「さまざまな外部被ばくのデータをより多く蓄積するのが理想」との認識を示し、実態に即した除染方針が策定されるよう環境省と協議を進める考えだ。
 
■いまさら…
 福島市は今月に入り、全世帯に個人線量計を貸し出す案内文を郵送した。
 市内の男性会社員(46)は「原発事故直後に、もっと県民の健康を心配してほしかった」と明かす。市役所から届いた茶封筒を眺め白けた気持ちになったという。
 市は放射線に対する市民の関心を高めるため、医師ら専門家を迎えた講座を市内各地で開く予定。担当者は「個人被ばく線量のデータは今後の除染方針に反映される。重要性を訴えていきたい」と話している。
 
■背景
 環境省は放射線防護のための長期目標として個人が受ける年間の追加被ばく線量を1ミリシーベルトに設定している。同省は年間1ミリシーベルトを毎時0・23マイクロシーベルトと換算し、0・23マイクロシーベルト以上の地域を汚染状況重点調査地域として指定した。県内で40市町村に上る。ただ、0・23マイクロシーベルト以上の地域でも個人の年間追加被ばく線量は1ミリシーベルト以下になるケースが多いことが分かった。このため同省は、個人の被ばく線量に則した地域の除染方針を新たに策定する。
 
【表】 全住民を対象に外部被ばく線量の測定事業を開始する市町村
 
福島、 須賀川、 相馬、 田村、 南相馬、 桑折、
猪苗代、 矢吹、 富岡、 浪江、天栄、玉川、中島