2014年7月14日月曜日

福島の鼻血は「接触被曝」による 神戸の医師が学会で発表

 漫画誌掲載された「美味しんぼ」で、福島原発事故に起因すると思われる「原因不明の鼻血が取り上げられたことで、福島県や国がヒステリックな反応をしたことはまだ記憶に新しいところです。
 ある学者は、血小板の再生能力を失うほどの被曝(500ミリシーベルト以上)をしていないのだから鼻血が出る筈はないと述べました。
 しかしそんな超高レベルの被曝をしなくても鼻血を出す可能性があることは、当初から指摘されていました
※  2014年5月15日 被曝による鼻血は「確率的に起こる疾病」
 
 12日に名古屋市で開かれた日本社会医学会で東神戸診療所の郷地秀夫所長は、放射性物質が結合した金属粒子(数ミクロン)が鼻の粘膜に付着し、接触被曝を起こした可能性があることを発表しました。
 そうした微粒子が鼻腔に付着すると、微小な局所で100ミリシーベルトを超える放射線を出し、組織を損傷する可能性があるというものです
 
 2012年11月に福島県双葉町の全町民を対象に調査し、双葉町民鼻血を発症した確率が通常値の3・8倍あったことを確認した津田岡山大学教授も、郷地所長の発表について、「説明に無理がなく、内容に異論はない。鼻血の症状自体を認めない人もいるが、それこそ科学的な根拠がなく、問題だ」と話しています。 
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福島の鼻血「内部被ばくか」 神戸の医師、学会で発表
神戸新聞 2014年7月14日  
 東日本大震災による原発事故の後、福島県では、子どもを中心に鼻血が出る症状が相次いだ。漫画「美味(おい)しんぼ」で登場人物が鼻血を流す場面が「風評被害を招く」などと批判されたが、実際に放射性物質が結合した金属粒子が鼻の粘膜に付着し、内部被ばくを起こした可能性があることを、東神戸診療所(神戸市中央区)の郷地(ごうち)秀夫所長が12日に名古屋市で開かれた日本社会医学会で発表した。(三上喜美男)
 
 郷地所長は神戸大学医学部卒業。兵庫県内で約35年間、被爆者の治療を続け、福島などから避難している被災者の診断や健康相談にも当たっている。
 郷地所長によると、福島からの避難者の2人に1人ほどが家族などの鼻血を体験している。突然出血し、普段あまり鼻血を出さなかった子どもが多いのが特徴。避難後はほとんどの症状が治まっているという。
 
 500ミリシーベルト以上の放射線を全身に浴びれば、急性障害で鼻血が出る場合がある。だが福島ではそうした被ばく例はなく、放射線と鼻血の因果関係を疑問視する専門家もいる。
 しかし、東日本大震災の被災地では、原発から飛散した放射性セシウムなどが金属粒子と結び付き拡散したことが気象庁気象研究所の観測などで確認された。東日本一円で医療機関のエックス線フィルムが粒子で感光する現象もみられ、当初から健康への影響を疑う声が聞かれていた。
 郷地所長は、金属粒子が鼻の粘膜に付着したのが引き金となった可能性を指摘する。金属粒子は直径数ミクロンで、人体のごく小さな範囲に1日100ミリシーベルトを超える放射線を出し、組織を損傷する。
 郷地所長は「もともと花粉症やアレルギーなどで粘膜が炎症していた人が出血を起こしても不思議はない」と話す。大量に吸い込んだ人も少なくないとみられ、内部被ばくの問題と捉え、早期に科学的な調査と分析をすべきだったと強調する。
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 【内部被ばく】体の外から放射線を浴びる外部被ばくに対し、体内に入った放射性物質で被ばくすることを指す。呼吸や飲食、皮膚への接触などで起こるが、人体への影響は未解明な点が多い。郷地医師は粘膜への付着を「接触被ばく」と呼ぶ

福島の鼻血「内部被ばくか」


被災地で目立つ鼻血発症 岡山大教授ら調査 
神戸新聞 2014年7月14日
 原発事故の後、福島では本当に鼻血を出す人が増えたのか。
 その疑問に答えるため、岡山大学の津田敏秀教授(環境医学)らは福島県双葉町の協力を得て調査。被災地外の地域と比べて鼻血の症状を訴えた住民の割合は高いことが確かめられたという。
 
 調査は、水俣病などの公害被害調査を参考に疫学的手法を採用。2012年11月、全町民を対象に実施した。
 双葉町は福島第1原発の立地自治体で、帰還困難区域と避難指示解除準備区域に指定され、被災地でも特に被害が深刻な地域だ。
 比較対象に選んだ滋賀県長浜市と比べ、鼻血を発症する確率は双葉町民の方が3・8倍あった。吐き気や疲れやすさなどの率も有意に高かった。
 津田教授らは、長期の避難生活だけでなく放射線の影響があるとみており、熊本学園大学の中地重晴教授が調査の中間報告を昨年、学会で発表。健康管理の重要性を訴えた。
 
 郷地所長は今回、これらの症状を医学面から考察。津田教授も「説明に無理がなく、内容に異論はない。鼻血の症状自体を認めない人もいるが、それこそ科学的な根拠がなく、問題だ」と話す。
 ただ住民の訴えは「ストレスの影響」などと軽視され、実態調査もほとんどなされてない。津田教授は「大気中の微小粒子状物質『PM2・5』では大騒ぎするのに、調査する権限を持つ自治体の首長も、この問題では事実を調べようとしない。その責任は大きい」と指摘する。 (三上喜美男)