2014年7月24日木曜日

トレンチ接合部凍結止水 追加対策実施へ 

 福島原発の建屋と地下のトレンチ(形状はトンネル)の接合部分の汚染水を凍らせて止水する工事が3か月近く過ぎても難航しているなか、原子力規制委は8日、東電に対し確実に凍らせる具体的な対策を示すよう求めていました
 この問題が解決しないと、トレンチ内の水を空にすることができないので、建屋回りを凍土壁で遮水する工事もその部分が施工できません。
 
 東京電力23日、凍結能力を上げるために、来月下旬までにトレンチの内側と外側に「凍結管」を追加したり氷を入れたりするほか、隙間を土のうで埋めるなどとする対策を示しましたが、出席した専門家からは冷却効果の想定が甘いと工事の実効性を疑問視する意見が相次ぎました。
 最終的に、まずは東電の立案した追加対策を実施して、来月中旬をメドにの効果を検証することになりました。
 
 東電の言い分は1分間に1.6ミリ(1時間に10センチ)以上の水の流動があると凍結できないというものですが、それではその程度の能力しか持たない凍土壁方式をなぜ採用したのでしょうか。
 もしも研究開発的要素がある方が、国から費用が出しやすいからというのが理由であるとしたら、あまりにも本末転倒で、とても容認することはできません
     
   ※ 2014年7月8日 トレンチ内の水が凍らない 規制委が具体的対策を求める 
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汚染水を凍らせ止水 追加対策実施へ
NHK NEWS WEB 2014年7月23日
東京電力福島第一原子力発電所で、地下のトンネルに流れ込んだ汚染水を凍らせて止水する工事が3か月近く過ぎても難航していることから、東京電力は水を凍らせる装置を増やすなどとする対策を原子力規制委員会に示しました。
しかし、想定の甘さなどを指摘する意見が相次ぎ、規制委員会では今後、対策の効果を検証することにしています。
 
福島第一原発では、「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルに高濃度の汚染水が流れ込み、地下水と混ざって海に流れ出しているとみられることから、東京電力は汚染水を凍らせて止水する計画ですが、3か月近くが過ぎた現在も十分に凍らず、原子力規制委員会から抜本的な対策を求められていました。
 
23日に東京電力が示した対策では、僅かな汚染水の流れが凍結を妨げているとしたうえで、来月下旬までにトレンチの内側と外側に「凍結管」と呼ばれる水を凍らせる装置を追加したり氷を入れたりするほか、隙間を土のうで埋めるなどとしています。
これに対して出席した専門家からは冷却効果の想定が甘いとする指摘が相次いだほか、「汚染水を凍らせるのではなくトレンチにコンクリートを流し込んで埋めたほうが効果的ではないか」と工事の実効性を疑問視する意見も出ましたが、規制委員会の更田豊志委員は、対策は急を要するとして「冷却能力に余裕を持たせて確実に凍らせてほしい」と迅速に対応するよう指示しました。
そのうえで、今後対策の効果を検証し、効果が現れなければ追加の対策を求めていくことにしています。
 
福島第一原発では、これとは別に建屋への地下水の流入を防ぐため1号機から4号機の周りの地盤を凍らせる「凍土壁」の建設が進められていますが、トレンチを横切るように設けられることから、トレンチの汚染水対策に時間がかかれば凍土壁の建設に影響するおそれが指摘されています。


(社説)汚染水対策 凍土壁頼みでは危うい
北海道新聞 2014年7月23日
 東京電力福島第1原発の汚染水対策でトラブルが続いている。 
 切り札とされる凍土遮水壁の工事に影響が出るだけでなく、凍結技術そのものへの信頼を揺るがしかねない事態だ。 
 原子炉建屋への地下水流入を防ぐ措置としては、凍土壁以外に粘土壁など複数の選択肢があった。凍土壁が機能しない場合も想定し、政府と東電は他の工法の併用を直ちに検討するべきだ。 
 凍土壁は、1~4号機の周囲に1メートル間隔で凍結管を地下30メートルまで打ち込み、冷却材を循環させて土壌を凍らせる。 
 本年度末に工事を終え、2020年ごろまで凍結させて、その間に、地下水が流れ込む建屋の破損部分を修復するのが目的だ。 
 ところが、その前段で問題が発生した。 
 凍土壁の工事を進めるには、2、3号機の坑道にたまった高濃度の汚染水を除去する必要がある。 
 東電は、坑道の入り口を凍らせてふさぎ、汚染水を抜き取る計画だったが、予定を1カ月以上過ぎても凍結に成功していない。 
 東電は「水の流れがあるので凍りにくい」と説明しているが、流れは1分間で1、2ミリ程度だ。このため、原子力規制委員会は、抜本的な改善を要請した。 
 せいぜい数メートル四方の坑道の凍結が難航しているのだから、総延長1・5キロに及ぶ凍土壁の実現性に疑問がわくのは当然だ。 
 少なくとも170カ所で凍結管が通路、配管などの地下構造物にぶつかる問題も指摘されている。 
 凍土壁は工期が比較的短いといった利点があるとされるが、これほど大規模なものは前例がない。 
 造成には320億円の国費が投入され、冷却に必要な電力は年間1万3千世帯分に上る。 
 採用の過程も不透明だ。工法の検討会では、数十年間の使用に耐え、維持管理費も安い粘土壁を推す専門家もいたという。 
 たとえ凍土壁がうまくいったとしても、20年までに原子炉建屋の止水が完了する保証はない。 
 そもそも、第1原発の廃炉には30~40年以上かかるとされている。炉心溶融を起こした複数の炉の廃炉自体が未知の作業だ。 
 建屋の内部さえ把握できていない状況で、作業員が危険な手探りの仕事を続けており、廃炉の見通しは決して過大ではない。 
 廃炉期間に見合った長期の遮水対策を準備しておくべきだ。凍土壁の失敗が明らかになってからでは遅すぎる