6月27日に、「凍土壁 早くも黄信号 地下トンネル内の汚染水の処置が難航」と題して東京新聞の記事を紹介しましたが、今度は河北新報が「福島第1・着工1ヵ月 凍土壁工事、先行き不透明」とする記事を載せました。
先の記事では、凍土壁が地下トンネル(配管・ケーブル用トレンチ)を2箇所で横断するため、そこに冷媒管を貫通挿入させるのが困難という問題を取り上げました※が、河北新報によると、凍土壁と地中の配管などが交差する箇所は170箇所もあるということです。
そこに既設物を破損せずに冷媒管を挿入し、その近辺を凍らせる作業の確実性がまだ確認されていないので、その部分の工事自体がいまだに認可されていないということです。
そこに既設物を破損せずに冷媒管を挿入し、その近辺を凍らせる作業の確実性がまだ確認されていないので、その部分の工事自体がいまだに認可されていないということです。
※ 2014年6月27日 凍土壁 早くも黄信号 地下トンネル内の汚染水
の処置が難航
部分的に凍土壁が完成しても全く用をなさないのに、工事全体の技術的な見通しが得られない中で、どうして拙速に着工したのでしょうか。
凍土壁工法に詳しい専門家も「廃炉まで30年間、保守管理が最小限で済むよう粘土などを埋め込んで遮水壁を造ることを検討すべきだ」と凍土壁方式に疑問を呈しているということです。
凍土壁のもう一つの大問題は、その寿命がどうも廃炉の目処とされている30年間ではなく、2020年までの5年間程度になっていることです。
2020年には地震で生じた建屋地下の間隙が修復出来るからというのが根拠のようですが、一体誰がいつ、あの超高線量下の地下室の隙間にアクセスして修復するというのでしょうか。そんな可能性はゼロです。
凍結管などのライフが見通せないのを、そんな机上の空論によって、短いライフでも使命は達成できるという計画であった、という風に糊塗しようとしているとしか思えません。
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福島第1・着工1ヵ月 凍土壁工事、先行き不透明
河北新報 2014年07月06日
福島第1原発事故の汚染水対策で、地中を凍らせて地下水が原子炉建屋に流入するのを防ぐ凍土遮水壁の工事が6月2日に始まり、1カ月が経過した。凍結管を埋めるための掘削作業を進めており、6月末までに55本分の掘削が終了。東京電力は来年3月までに関連設備の工事を終えて凍土を開始したい意向だが、原子力規制委員会は埋設物のある場所の工事を認可しておらず、先行きは不透明だ。(福島総局・桐生薫子)
凍土壁は1~4号機の周囲1.5キロに1550本の凍結管を地下30メートルまで打ち込み、冷却材を循環させて約7万立方メートルの土を凍らせる。来年3月以降に凍土を造成後、2020年ごろまで冷却する。
過去に例のない大規模工事に、規制委員会は地盤沈下の危険性を指摘してきた。地下に埋設物がある場所については、重要設備に影響がないことや、実効性が確保できることが未確認だとして掘削を認めていない。
建屋の地下には電源ケーブルが通るトレンチや配管など埋設物が約800カ所あり、うち170カ所が凍結管を埋めるライン上に位置する。東電は複数の凍結管を使って埋設物を挟み込んだり、貫通させたりして凍土させる方針だが、極めて難しい作業になるとの指摘が専門家から出ている。
凍土壁工法に詳しい嘉門雅史京大名誉教授(環境地盤工学)は「顔全体をマスクで覆った状態で、地下30メートルまで正確にドリルを入れられる技術者は限られる。建屋地下の設計図を見て掘っても、実際の埋設場所がずれていることはあり得る」と指摘。「不要な埋設物は先に撤去することが望ましい。廃炉まで30年間、保守管理が最小限で済むよう粘土などを埋め込んで遮水壁を造ることを検討すべきだ」と話す。
長期間に及ぶ凍土では、冷却材を循環させるパイプの破損や凍結管の腐食などトラブルが予想される。320億円の国費投入に見合った効果が継続的に得られるかどうかは未知数だ。
登坂博行東大教授(地圏環境水理学)は「建屋やトレンチの止水、海岸部の遮水や揚水などを実施し、全体的な効果を評価しながら進めることが必要だ」と、凍土遮水壁だけに頼らない柔軟な対応を求めた。