新成人に「幻のアルバム」 原発事故で避難、町が制作
福島・双葉
時事通信 2018年2月28日
東京電力福島第1原発事故から間もなく7年。今も全域に避難指示が出ている福島県双葉町は、当時中学生だった新成人に、学校生活の写真や現在の町の様子を収めたDVDを昨年から贈っている。今年も卒業アルバムがないまま故郷を離れた約70人に「幻のアルバム」を届けた。
東日本大震災と原発事故が起きた2011年3月11日午後、町立双葉中学校では部活動が行われていた。被災直後、生徒たちはトイレ用の水の確保などを懸命にこなした。1年生の担任だった鈴木阿佐美さん(34)は「恐怖や不安の中、いま一生懸命やらなくてはいけないことをやってくれた」と振り返る。全町避難が決まると、生徒たちは県内外に散り散りに。双葉中は14年に同県いわき市に移転し、再開した。
アルバムには震災前の思い出を集めた。新成人や教諭らから提供を受けた学校生活の写真約100枚と動画2本を収め、自動的に映し出すスライドショー形式にした。ドローン(小型無人飛行機)で撮影した双葉町や中学の校舎も収録。町の担当者は「避難先でも双葉町の子ども。常に支えていきたい思いがあった」と話す。
当時の担任らのメッセージ動画も収録し、鈴木さんは「環境や経験することは一人ひとり違うが、それが必ず糧となって今後の人生の役に立つ」と呼び掛けた。
双葉町から新潟県に避難し、現在は埼玉県で暮らす大学生山本佑香さん(20)は今も町が大好きで、「戻れるなら戻りたい」という。町から届いたアルバムを見るうち、懐かしさが込み上げてきた。「卒業アルバムがないので、代わりになるものを作ってもらって感謝しかない。絶対大切にします」と喜んだ。