2018年2月26日月曜日

福島海産物の輸入拒否 WTOに訴えるべきものなのか

 世界貿易機関(WTOが、韓国が日本の原発事故被災地からの水産物輸入を禁止しているのはWTO違反であると判定し是正勧告を出しました。
 これは日本がWTOに提訴した結果ですが、相手が他の国であったなら日本は提訴したのでしょうか。どうも韓国を見下している感じが否めません。
 海産物の輸入禁止は、果たして貿易の自由化に反するものなのか、WTOの審査になじむものなのか、そして強権によって輸入を強制すべきものなのか? というのが率直な思いです。

 御承知のように、日本はいま保有量が100万トン以上に達しているトリチウム汚染水の処理に困窮していますが、規制委の方針は、それを海洋投棄したいというもので、何とか福島の漁業組合を説得したいと考えているわけです。
 それが「放射能を希釈拡散させてはならない」とする国際原則に外れたものであるのは明らかなので、日本はとても海産物の輸入を他国に強制できるような立場ではない筈です。
 天木直人氏のブログを紹介します。
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寝た子を覚ます事になるWTOの原発汚染禁輸の是正勧告
天木直人のブログ 2018年2月24日
 私は驚いている。
 世界貿易機関(WTO)の紛争パネルが韓国が日本の原発事故被災地からの水産物輸入を禁止している事に対して、WTO違反であると判定して是正勧告を出した事についてだ。
 このような重大な判断を、WTOの紛争パネルが、よくも下せたものだ。
 それよりもなによりも、安倍政権がこんな訴えをWTOパネルに起こしていた事に驚かされる。
 この是正判決は、間違いなく今後大きな問題となって、安倍政権にブーメランのごとく跳ね返ってくるだろう。
 安倍政権は、寝た子を覚ますことになる。

 考えても見るがいい。
 あの時安倍首相は、東京五輪の招致を優先して、原発事故はコントロールされていると世界に大ウソをついた。
 コントロールされていなかったからこそ、日本は汚染水を海洋に投棄するという暴挙をせざるを得なかった。
 その暴挙で汚染された水産物を輸入規制するのは、自国民の食の安全を確保する政府としては当然である。
 そして、汚染の不安は数年ぐらいでなくなるはずがない。
 安全であるかどうかの科学的判断は、貿易の自由化という国際経済のルールを専門にしているWTOのパネルに出来る筈はないし、科学者の間でも、食して安全だと言い切れるコンセンサスはないはずだ。

 韓国が上級委員会に不服申し立てを行う方針を表明したのは当然である。
 不服申し立てを行った韓国政府に、菅官房長官は「極めて遺憾」と述べたらしい。
 斎藤健農林水産相は、科学的根拠に基づいた主張が認められたわけだから、韓国にはそれを重く受け止めて欲しいと文句を言ったらしい。
 愚かな対応だ。韓国を見下す日本の傲慢ぶりだ。
 しかし輸入規制をしているのは韓国だけではない。
 多くのアジアの国々がなんらかの規制をしているはずだ。何よりも中国が必ず反応して来る。
 自らの主張が認められた事を歓迎するとだけ言って、ローキーで対応すればよかったのだ。
 ただでさえ、韓国とは慰安婦問題や北朝鮮問題を抱えている。
 その上に、原発汚染問題を抱えるようでは、今の安倍政権の能力では対応できない。
 パネルのどのメンバーがそのような勧告を出したのか、日本の工作はなかったのか、などという話しすら出てくるだろう。
 そうでなくとも、東電は原発事故を収束出来ているのか、という事になる。安倍首相のアンダーコントロール発言が再び問題にされる事になる。
 そして安倍首相の原発再稼働政策が再び問題にされるようになる。
 安倍一強で日本はごまかせても、世界をごまかすことは出来ない(了)