2018年2月25日日曜日

フジ「バイキング」 不可解な米山新潟県知事バッシング番組

 米山・新潟県知事は1月に維新代表・松井一郎大阪府知事から、名誉毀損を口実に損害賠償550万円等を求められています。それはツイッターでの文言を松井氏が誤解したもので、そのことを米山氏が説明したにもかかわらず、いきなり訴訟を出されたものでした。
 それは元維新代表の橋下が、IWJ」代表のジャーナリスト・岩上安身氏が、橋本氏に関する第三者のツイートをリツイートしただけで、名誉毀損で訴えたのに似ていて、 どちらも相手との話し合いを省略していきなり訴訟に入っています。
 ほぼ同じ時期に起こされた維新関係者たちによるこの裁判は、高額な賠償金を請求して脅すことで「弱者の言論=維新への批判」を封じようとするスラップ裁判と見られています。

 23日放送の『バイキング』(フジテレビ)で、この松井一郎氏の提訴事件を取り上げましたが、その内容は“米山叩き”に終始する異常なものだったということですそうした一方的な不正な取り上げ方で放送するのはそれ自体が大きな問題で、それ自体が米山知事の名誉を毀損するものです。

 柏崎刈羽原発の再稼働に簡単に同意しそうにない米山知事は、東電をはじめとする原子力ムラにとっては実に邪魔な存在で、産経新聞などもことあるごとにバッシングしています。
 LITERAは、この『バイキング』の異常な報道姿勢は、こうした再稼働をめぐる動きを睨んだ「米山バッシング」の一環であった可能性があると述べています。

 かつて関西の放送局が、京都大学の反原発グループ「熊取6人集」の特集番組を放送したところ、電力会社が広告会社を通じて関西の各局に圧力をかけて、とうとうどの放送局もそれを再放送することが出来ませんでした。それが原子力ムラの正体です。
 決してあなどることはできません。
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『バイキング』が維新スラップ訴訟で不可解な米山新潟県知事バッシング!
 背景に原発再稼働推進派の意向か
LITERA 2018.02.24
 この不可解な特集はいったい何なのか。23日放送の『バイキング』(フジテレビ)が、例の維新代表・松井一郎大阪府知事が米山隆一新潟県知事を提訴した件を今更ながら取り上げたのだが、その内容は“米山叩き”に終始する異常なものだった。

 念のため振り返っておくと、この裁判は、米山県知事のTwitter上での発言に対し松井府知事が名誉毀損を主張し、損害賠償550万円等を求めているというもの。しかし後述するが、本サイトでも取り上げたように、そもそも米山県知事の発言は松井氏に対するものではなく、完全に松井府知事の誤読で、しかも批判した内容も論評の範囲だ。維新への批判を封じ込めるためのスラップ裁判としか考えられず、仮にこんなものが認められてしまったら言論の自由が著しく損なわれてしまうことになる

 ところが、『バイキング』では、法廷闘争の経緯の説明が終わったとたん、MCの坂上忍が「この米山さんって大丈夫なのかなって僕思っちゃったんだけど」「こういうことよく言えるな」と米山県知事を攻撃、スタジオは米山批判一色に。たとえば東国原英夫は、米山県知事が以前、維新公認で国政選挙に出馬したエピソードをわけ知り顔で話しだし、こんなネガキャンをぶっていた。
2012年の衆院選のときには僕、(米山氏の)応援に行きました。いや、本人じゃないですけども、本人の周辺からね(維新への批判が出ていた)。日本維新の会は政党を立ち上げたばっかだったんで、やっぱ不備があったんですよ、いろいろと。ただ、それに対してちょっと不平不満をおっしゃってました、周辺の方が」
「その辺からおそらく、どっかで(米山氏が維新を)恨みに思っていた背景があったんじゃないかなって僕は推察します」

 いや、米山県知事が以前から松井氏へ不満を持っていたというのはある意味当たり前の話。一方で、松井府知事による訴訟が政治を批判する言論をいかに萎縮させるかという論点は、誰の口からも一向に語られない。それどころか、ひたすら米山県知事のほうが悪いと言わんばかりの一方的なバッシングが続く
 たとえば元TBSアナウンサーの吉川美代子氏は、「(批判の応酬が)知事対知事になると、新潟県知事が大阪府のことに口出す暇があったらもっとやることあるだろと、知事だったら県知事としてのツイートをしてほしいというのはありますよね」と米山県知事を批判。Twitterよりも知事の仕事をしろというのは一見もっともだが、しかし、米山氏のツイートに噛み付いて名誉毀損裁判まで起こすのもどう考えても「知事としての仕事」ではないのに、その松井府知事の態度は完全スルーだ。

 『バイキング』ではその後もほぼ一方的な米山バッシングが続いた。そもそも、松井氏が問題視した米山県知事の発言は、松井氏ではなく橋下徹前大阪市長を示唆して〈異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足する〉と批判したものだったのだが、番組では、それに到るまでの“米山VS橋下の遺恨”を、やはりツイッターでのやりとりを紹介するかたちで解説。

 そのやりとりは、2017年3月、森友問題に関して橋下氏が、〈事実確認もせずに国会で(籠池泰典氏と)無関係と言い切った稲田さんは政治家としてアウト〉としつつ〈しかし蓮舫さんも二重国籍問題で全く同じことをやった。稲田さんが辞任なら蓮舫さんも辞任。民進党、追及するか?〉とツイートしたことに、米山氏が〈そもそも別問題〉〈立場上あまり言いたくもありませんが、ご都合主義が過ぎるかと思います〉などと反論したもの。
 これに対し橋下氏が激怒。〈ほんとこんな頭の悪い知事を持って新潟は大丈夫か?頭だけじゃなくて人間性も最低だけど〉などと口汚く攻撃したのだが、坂上からこのやり取りについての感想を求められた宮迫博之は、やはり橋下氏を露骨なまでに擁護したのだ。
「米山さんが『ご都合主義』とか言うことで、まず火をつけているわけですよね、橋下さんに。だから橋下さんの性格上、こういう返しになってしまうのも(しかたがない)」

 続けて東国原が大げさに身振り手振りを交えながら、さも米山県知事の“積年の怨み節”がバトルの原因かのようにこう印象付けた。
「これは米山さんがまだ県知事になる前に、つまり浪人してたときに私人として、(一方で)橋下さんは公的な立場、市長だったり府知事、そんときに米山さんはやっぱり、ちょこちょこね、ちょっかいを出している」
「でも米山さんは私人だからほっておこうと橋下さんはしてた。でも(米山氏が)県知事になったので、公人と公人の立場になったので、ネチネチこれ以上言われるとややこしいから、法律的に訴えて白か黒か決着つけましょうというのが今回の(騒動)」

 いやはや、係争中の案件に対し、『バイキング』はここまで橋下氏や松井府知事に肩入れして大丈夫なのか? 言っておくが、米山県知事に対する批判は好きにすればいい。しかし繰り返すが、問題は、坂上にしても東国原にしても、番組ではもっぱら米山県知事のほうを悪しざまに言う一方で、この騒動の本質である、政治権力がネット上の言論に対して濫りに訴えることの危険性にはただの一言も触れなかったことだ。

 あらためて言うが、問題の知事バトルの発端は昨年10月。生まれつき頭髪が茶色い女子生徒が大阪の府立高校から髪を黒染めするよう強要され、精神的苦痛を受けたとして府を訴えた裁判に関して、米山県知事といま何かと話題の国際政治学者・三浦瑠麗氏がTwitterで応酬し、そのなかで米山県知事がこのようにツイートした。
〈因みにこの「高校」は大阪府立高校であり、その責任者は三浦さんの好きな維新の松井さんであり、異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足するという眼前の光景と随分似ていて、それが伝染している様にも見えるのですが、その辺全部スルー若しくはOKというのが興味深いです〉

 これに対し、横から入ってくる形で松井府知事が〈米山君、いつ僕が異論を出した党員を叩き潰したの? 君も公人なんだから、自身の発言には責任取る覚悟を持ってるでしょうね。いつ僕が異論を出したものに恭順を誓わせたのか説明して下さい〉と噛み付いた。そこで米山県知事は、〈どこにも松井さんとは書いていないのですが…。文章上分かりづらかったなら恐縮ですが、状況上誰かは言わずもがな当然松井さんもご存知と思います〉などと、暗に橋下氏を批判したツイートだと反論したのである。

 なお、同時期には橋下氏が維新所属の丸山穂高衆院議員に対しTwitterで「ボケ!」などと連発しており、米山氏が〈状況上誰かは言わずもがな〉〈あれだけ衆人環視で罵倒されれば〉と言ったのはこの件を指していると思われる。しかし、松井府知事は〈話をすり替えるのはやめなさい。僕がいつ党員の意見を叩き潰したのか? 恭順させたのか? 答えなさい〉などと責めたて、12月6日付で米山氏を名誉毀損で提訴した、というわけだ。

 振り返ってみれば自明の通り、米山県知事は、批判は松井氏に対するものではないとちゃんと表明している。にもかかわらず松井府知事は、それを無視したのである。しかも、米山県知事もブログで〈仮に私のツイッター上の説明をもってしてもなお、松井府知事の主張する誤読の通りだと解する余地があるとしても、その誤読自体松井府知事と日本維新の会に対する言論の自由の行使としての正当な論評であり不法行為に当たらない〉と再反論しているように、米山氏の批判はごく普通の論評の範囲内だ。

 もし、この程度の発言で政治権力者が提訴し、裁判所がそれを認めてしまえば、政治権力者の態度に対する論評は限りなく縮小を余儀なくされてしまうのは必至だ。たとえば坂上も『バイキング』などで政治家に対する批判を口にするが、それだっていつ訴えられてもおかしくなくなるのである。

 しかも、本サイトでも報じたように、松井氏の提訴と同時期には、橋下氏がインターネット報道メディア「IWJ」代表のジャーナリスト・岩上安身氏を名誉毀損で提訴している。岩上氏は第三者のツイートをリツイートしただけであり、もしこんな訴訟がまかりとおれば、自分に批判的な人間を恣意的に選んで裁判等で疲弊させるという行為が正当化されてしまうのだ。

 ようするに、坂上らが米山県知事を批判するのは勝手だが、松井府知事らの提訴が問題なのは、そうした批判すら裁判の対象にされかねないということなのである。にもかかわらず、番組はそうした本質的問題点は完全にネグり、むしろ橋下・松井の維新コンビの肩ばかりを持ったのだ。『バイキング』は自分たちが何をやっているのかわかっているのか。まったく、メディアとして完全な自殺行為と言わざるをえない。

 しかも今回の『バイキング』の取り上げ方には、もうひとつ不可解な点がある。前述のとおり、松井府知事が米山県知事を提訴したのは昨年末で、そのことが広く知れ渡ったのは年明け1月のこと。つまり、それから1カ月以上も開いているし、裁判の新たな動きを伝えるわけでもなく、言ってしまえば、テレビが常に求めているニュースとしての新鮮さもない。
 にもかかわらず、いったいなぜ2月も後半の今頃になって、“松井VS米山のバトル”を取り上げたのか。 
 そこでひとつ思い出されるのは、MC坂上と松井府知事との関係だ。坂上は昨年『ダウンタウンなう』(フジテレビ)で松井府知事と共演。松井府知事のたいしておもしろくもない過去のやんちゃ話や恐妻家エピソードを大喜びで聞き続け、ヨイショしまくっていた。まさか松井府知事に頼まれでもしたのだろうか。

 しかし、そんなことよりもっと可能性の高いものがある。局上層部あるいは東電の意を受けて、番組ぐるみで原発再稼働をめぐって米山県知事へのバッシングを仕掛けた可能性だ。
 周知のとおり、米山氏が知事をつとめる新潟県には東京電力柏崎刈羽原発があるが、昨年10月、原子力規制委員会が東電の示す安全対策が新基準に「適合」しているとして審査に合格。再稼働に向け本格的に動き始めている。
 しかし、脱原発の方針を掲げて当選した米山県知事は、この再稼働の動きに一貫して否定的な立場を崩していない。福島原発事故の原因究明や、柏崎刈羽原発で事故が起きた場合の住民避難や健康影響に関する独自の検証委員会をつくり検証を進めており、昨年末にも「県独自の検証がなされない限り、再稼働の議論は始められない」と従来の方針を明言。先月25日にも「検証を待たずに再稼働をすれば、差し止め訴訟をすることになる」とまで語った。再稼働には地元の同意が必要なため、再稼働を進めたい安倍政権と東電、原子力ムラにとっては、米山県知事の存在が邪魔なのだ。
 そのため、米山県知事に対するバッシング報道を仕掛けたのではないか。うがちすぎと思うかもしれないが、同じ新潟県でやはり当時脱原発を掲げていた泉田裕彦前知事もバッシング報道を仕掛けられたことがあった。

 さらに、福島原発後鳴りをひそめていた東電のメディア対策もここに来て完全に復活。最近は、再稼働に向けて“ご説明”と称してメディア各社に出向くなど、情報操作に動きまわっている
 実際、米山県知事に対しても、2月22日発売の「週刊新潮」(週刊新潮)が、「大雪で使えない太陽光に血税を流した戦犯は誰か」として、バッシング記事を掲載。米山県知事が再稼働に同意しないことについて、「次の知事選を睨んでのことであるなら、個人の選挙のために首都圏を巨大なリスクにさらす姿勢は万死に値する」などと批判している。
 また先月中旬、大雪で新潟県内の電車が立ち往生した際も、産経新聞が自衛隊の要請も検討しなかったなどとして、米山県知事を厳しく批判していた。
 今回の『バイキング』の不可解な“松井VS米山のバトル”企画も、こうした再稼働をめぐる動きを睨んだ米山バッシングのためのものだったのではないか。

 フジテレビということを考えると上層部の意を受けた企画だった可能性は十分ありえる。脱原発そのものをテーマにするとどう転ぶかわからないが、“松井VS米山バトル”なら坂上や東国原が松井府知事の肩をもつことは目に見えているおり、米山県知事=目立ちたがりのおかしな人と印象づけられる。そういうことだったのではないか。

 しかしいずれにせよ、そうしたポチ犬みたいな番組のあり方は、報道や言論の自滅を導くだけだ。討論形式で人気を博しているという『バイキング』だが、あらためてそのおかしさに視聴者は気がつくべきだろう。(編集部)