除染で出た汚染土などを最長で30年間保管する中間貯蔵施設についての環境省による説明会は、15日で全16回の日程を終えました。住民側は具体的な補償額や最終処分場を示すよう求めましたが、回答は「検討中」ばかりで、一向に納得できるものではありませんでした。
施設候補地にある建物や土地を国はいくらで買い取るのか、そして貯蔵した廃棄物を本当に30年以内に県外で最終処分するのか― 。説明会で質問が集中したのはこの2点でした。しかし政府の担当者は「個々に異なり申し上げられない。建設を受け入れていだだいた後に個別に対応する」、「県外処分を法律に明記するが、処分先は決まっていない」などと述べるにとどまりました。
国側からの十分な説明が最後までなかったことに、渡辺利綱大熊町町長は、「大事な部分で答えが得られなかった。何を判断材料とするのか苦慮する」と、また伊沢史朗双葉町町長も「回答を期待していたがなかった。住民が納得できる材料がなければ判断できない」」と述べ、国側の説明の足りなさを強く批判しました。
政府は来年1月に搬入を開始することを目標にしていますが、これではとても合意は形成されません。政府は次の「カード」を模索し始めました。
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中間貯蔵施設、見えない先行き 住民説明会終了
朝日新聞 2014年6月16日
福島県での除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設の建設のため、政府が候補地の福島県大熊、双葉両町の住民向けに開いた説明会が15日で全日程を終えた。住民側は具体的な補償額や最終処分場を示すよう求めたが、回答は「検討中」ばかり。地元の不満が募るなか、来年1月の搬入開始目標に向けて合意形成を急ぐ政府は、次の「カード」を模索し始めた。
■政府、あいまいな説明に終始
施設候補地にある建物や土地をいくらで買い取るのか、そして貯蔵した廃棄物を本当に30年以内に県外で最終処分するのか ― 。6都県で計16回開かれ、のべ2605人が参加した説明会で、質問が集中したのはこの2点だ。だが、政府の担当者は「個々に異なり申し上げられない。建設を受け入れていだだいた後に個別に対応する」「県外処分を法律に明記するが、処分先は決まっていない」などと述べるにとどまった。
15日夜、仙台市であった最後の説明会の後、双葉町の伊吹史朗町長は「国の回答に具体的なものがなかった。住民が納得していない状況を私たちも感じている」と切り捨てた。
そもそも、2町の住民の政府に対する不信感は根強い。2町の大半は放射線量が高い帰還困難区域だ。全町民が県内外に避難してから3年経った今でも、何年後に町に戻れるのかの見込みが政府から全く示されていない。施設と町の共存以前に、自分たちの将来が全く見通せない状況が続く。
「(政府は住民を)宙ぶらりんにして、あきらめるのを待っている」。双葉町の男性は、説明会で絶望ともとれる言葉を漏らした。
2町の幹部や佳民には、福島全体の除染と復興のため、施設が必要だと考えている人は少なくない。それでも15日の説明会で、大熊町の男性は「必要性は認めるが、割り切れない思いを抱いている」と訴えた。
国、新提案を検討
汚染土の搬入目標を来年1月に掲げる政府は、説明金での批判や要望を受け、「地元が受け入れやすい状況づくり」(環境省幹部)の検討を進めている。近く国の方針を示す意向だ。
例えば、「最終処分場になる」などという懸念から土地を国に売らずに貸したいという住民もいる。そこで国有化以外に、環境省は地権者が2町に売って国が利用すること▽土地の所有権を住民に残したまま利用する権利を買う「地上権」の設定▽30年の中間貯蔵期間中の解約を禁じる約束をつけた賃貸借―といった方法も検当している。
また政府関係者によると、2町が使える自由度の高い交付金は総額数十億円規模とする方針で、近く地元側に打診する。2町それぞれの年間予算並みの規模とする「手車い待遇」(財務省関係者)という。
一方、質問が集中した候補地の買い取り額を示さなかったことについて、環境省幹部は「それぞれの土地・建物で示せる額が違いすぎる。平均額を示しても,それより低い場合に理解を得にくくなる」と語る。
別の事情もある。国の避難指示区域の住民に東京電力が支払う賠償額は、どこに住んでいたかで大きく異なっていて、住民間で不公平感が生じている。
2町の帰還困灘区城の地権者も、東電から事故前の価値の全額で不動産の賠償を受ける。加えて、好条件で国が補償するとわかると、「地権者と地権者以外で新たな分断が生じかねない」(政府関係者)という。
政府は近く、県と2町と受け入れの是非をめぐる協議を始める。政府側は新たな「力ード」を示すとともに、再び県内外で説明会を開くことも検討している。
大熊、双葉町長が国側の回答に不満 中間貯蔵説明会
福島民友ニュース 2014年6月16日
政府が開催してきた中間貯蔵施設をめぐる大熊、双葉両町の住民説明会は15日、計16回の全日程を終えたが、国側からの十分な説明が最後までなかったことに渡辺利綱大熊、伊沢史朗双葉両町長は不満をあらわにした。
両町長は説明会終了後、報道陣の取材に答えた。両町は、最終処分の法制化、地権者に対する手厚い補償、両町での生活再建策、地域振興策について具体的な回答を求めていたが、渡辺町長は「大事な部分で答えが得られなかった」、伊沢町長も「回答を期待していたがなかった」と述べた。その上で、渡辺町長は施設の受け入れの是非について「何を判断材料とするのか苦慮する」と国側の説明の足りなさを強く批判した。
伊沢町長は「住民が納得できる材料がなければ判断できない」と強調した。