2014年6月18日水曜日

トレンチの水凍らず 凍結壁は無用の長物にならないか


 福島原発で汚染水が地下のトンネル(=トレンチ)から海に流れ出すのを防ぐため、トンネル内の汚染水の一部を凍らせて氷の壁を作ろうとしましたが、今年4月末から凍結を始めたにもかかわらず、1か月半がたってもまだ一部が凍っていないということです。
 
 東電は、2号機の汚染水を止水するため、凍土壁工法と同じように、トレンチの入り口の部分に地上から冷却用配管を打ち込み、そこに冷却用のマイナス30℃の液体を流し込んで入り口部の汚染水を凍らせる筈でした。
 
 トレンチの止水は規模が小さいのでいくらでも代替の工法があり、いずれ解決することは出来ますが、本体の工事である1~4号発電設備の地下の凍土遮水壁、南北方向に約500メートル、東西方向に約200メートルの長方形の辺上に凍結管1550本を1メートル間隔で地中に埋め込むという大規模なものです。その凍結管にマイナス30℃の冷却液を循環させて、凍土を凍結管の周囲に年輪のように成長させて、隣同士を合体させて凍土壁を形成するというものです。
 
 実証試験では凍結を開始後10凍土が閉合して壁になりましたが、問題は地下水の流速で、地下水の流速が1日に10センチの速さだと問題なく凍土壁は造成されるものの1日の移動距離が70センチだと壁はできなかったということです流速が1日に10センチというのは時間当たり4.2mm、要するに殆ど流れがないということです。
 
 東電と業者は、地下水の流速は1日に10センチ以下の速さであるから大丈夫だと言いますが、本当でしょうか。それはマクロでの話であって、各位置や各レベルにおける地下水の流速をそれほど精密に把握できる筈がありません。
 現実に東日本大震災の地震で福島原発の地下室に亀裂が入ったために、そこから1日400トンの汚水が流入しているわけですから、亀裂の合計面積が仮に0.1㎡であるとすると、そこでの流速は4000m/日=167m/時です。少なくとも亀裂箇所の近傍ではそれに見合う地下水の供給=移動があるわけで、4.2mm/時などとは異次元の世界です。
 
 全体的に流れがある場合、その一部を塞げばその分他の部分の流速が上がります。つまり櫛の歯が抜けたようになっているその箇所では、流速はますます上がります。
 遮水壁工事の全域に渡って、しかも凍結を開始してから凍結が完成するまでの全時間帯に置いて、すべて地下水の流速が1日に10センチ以下に収まるというのは、どのような根拠なのでしょうか。
 それに遮水が出来なかったとき、どの位置のどの深さの範囲が凍結していないからだと判断出来る方法論を持っているのでしょうか。
 
 3百数10億円の国費を投じる凍土壁が、無用の長物に帰する可能性は大きいと思われます。 
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地下トンネルの汚染水 十分に凍らず 
NHK NEWS WEB 2014年6月17日
東京電力福島第一原子力発電所で汚染水が地下のトンネルから海に流れ出すのを防ぐため、トンネル内の汚染水の一部を凍らせて氷の壁を作り、止水する作業が進められていますが、凍結を始めてから、およそ1か月半がたった今も十分に凍らず、止水できていないことが分かりました。
 
福島第一原発では汚染水が増える原因となっている地下水の流入を防ぐため、1号機から4号機の周りの地盤を1.5キロにわたって凍らせる「凍土壁」の建設が進められていますが、これほど大規模なものは過去に例がなく、技術的な難しさを指摘する声も上がっています。
これとは別に、2号機と3号機ではメルトダウンした燃料を冷やした汚染水の一部、およそ1万1000トンが「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルに流れ込み、ここから海に流れ出している可能性が指摘されています。
東京電力は、このうち2号機の汚染水を止水するため、トレンチの入り口の部分に地上から配管を打ち込み、冷却用の液体を流し込んで汚染水の一部を凍らせ、氷の壁を作る作業を進めています。
ところが、内部の温度を測ったところ、ことし4月末から凍結を始めたにもかかわらず、いまだに一部が凍っていないことが分かりました。
トレンチ内にある構造物が障害となって、均等に汚染水を冷やすことができないことに加え、トレンチの中で汚染水が常に流れていることが原因とみられていて、東京電力は汚染水の流れを抑えたり、凍結用の配管を増やしたりして改善を図ることにしています。
東京電力では今月中に2号機のトレンチの止水を終え、来月から中にたまった汚染水を取り除く計画でしたが、計画どおりに氷の壁が完成するかどうかは不透明な状況だとしています。
また、3号機でも同じ作業が進められていて、東京電力は今年度中にトレンチ内の汚染水をすべて取り除く計画ですが、全体のスケジュールへの影響は今のところないとしています。