原子力規制委員会は19日、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場の安全審査で、申請書の不備や説明資料の不足で、「まだ審査会合で確認する段階にない」と判断しました。
これまで規制委から重大事故対策の基本方針や安全上重要な施設の見直しを指示されていましたが、19日の審査でもまだ不十分であるとされたもので、原燃が目標としていた工場の今年10月完成・稼動は困難となりました。
六ヶ所再処理工場は、使用済み核燃料の中から核燃料のウランとプルトニウムを取り出すもので、日本原燃が所有しています。
1993年から2兆2千億円の国費を投じ、2009年に試運転を終了させる予定でしたが、相次ぐトラブルのため20回も延長し、最終的に昨年12月に、完成時期を2014年10月に設定したばかりでした。
当初予定した建設費用は結局約3倍に跳ね上がりました。
この工場自体全く採算性がないもので、核燃料はそのまま地中で保管するのが一番安上がりであることが、その後明らかにされています。
その上、この工場も「もんじゅ」と同様に工場が停止中でも維持するだけで巨額の経費がかかり、その額は実に年間1100億円と「もんじゅ」の5倍以上です。
これらの原発関連事業の「金喰い虫」ぶりは想像を絶します。
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核燃料再処理工場:申請書不備など判明 10月完成困難に
毎日新聞 2014年06月20日
原子力規制委員会は19日、使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の安全審査で、日本原燃に対し、申請書の不備や説明不足を指摘し「審査会合で確認する段階にない」と厳しく批判した。原燃は当初、審査期間を半年程度と見込んでいたが、今年1月の審査開始から約5カ月が経過した段階になって抜本的な見直しを求められる事態となり、目標とする工場の今年10月完成は困難な情勢になった。
原燃は1月7日、新規制基準に基づく安全審査を申請。6月ごろに審査を終え、規制委の検査を経て、工場完成を10月と見込んでいた。ところが、規制委から重大事故対策の基本方針や安全上重要な施設の見直しを指示され、5月末に補正申請書を提出した。
この日の審査会合でも、施設の安全対策についての説明が足りないとの指摘が出たほか、原燃が説明の追加・修正を繰り返す状況に「すべて検討を終えてから申請すべきなのに、最初の申請書が不十分だ」などの批判が上がった。更田(ふけた)豊志委員は「申請書に書いていないことを、『こう考えています』と説明を受けても審査はできない」と突き放した。
審査会合後、原燃の越智英治理事は「我々なりにやってきたつもりだが、意見を真摯(しんし)に受け止めたい」と話した。【鳥井真平】
動かなくても年1100億円
東京新聞 2012年5月14日
使用済み核燃料の再利用に向け、試験が進む日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)は、仮に稼働させなくても、維持費だけで年間1100億円もの費用がかかることが、政府の資料や日本原燃への取材で分かった。再処理工場を含む核燃料サイクルは、10兆円の巨費を投じても実現のめどが立っていない。費用はいずれも電気料金などの形で国民が負担している。当てのないまま事業を続けるのか、議論を呼びそうだ。
原子力委員会で核燃料サイクル事業の是非が議論されている。2020年に原発をゼロにし、それまでに使った核燃料は再処理せずに地中に埋める直接処分が最もコストが安いとの試算が出た。ただし、推進派と反対派の主張がかみ合わず、判断を先送りするムードが出てきた。
先送りした場合、問題になるのが、ほとんど完成した再処理工場の扱いだ。新たな方針が決まるまでの間は試験運転程度にとどめたとしても、保守点検、グループ会社による警備、放射線管理、人件費などさまざまな費用が必要になるという。
核燃料サイクル事業では、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)も、止まっていても年200億円弱を費やすことが問題視されてきたが、再処理工場は実に5倍強の維持費だ。
本紙の取材に、日本原燃は「設備を安全かつ健全な状態に維持・管理するための恒常的な費用」と主張。現状で100億円近い再処理技術の研究費の継続さえ必要との立場だ。これらの費用とは別に、現在、核燃料サイクル施設が立地していることを理由に、政府が青森県内の自治体に支払っている交付金もある。11年度の交付額は92億円。
費用も交付金も、大半は電気料金、一部は税金の形で国民が負担している。