福島原発の汚染水対策の切り札とされている凍土壁が2日に着工しました。凍土壁計画に対する多くの懸念事項は殆ど解決していませんが、東電と国はなぜか強引に当初の予定通りに進めようとしています。
10メートル四方の実証実験では上手く凍結しましたが、総延長1・5キロの実規模で計画通り凍結壁が形成されるのかを疑問視する専門家は沢山います。
福島第二原発の地下には日量1000トンの地下水流が存在しますが、流速の速い箇所では熱収支上凍結しないということがあり得ます。どういう見極めをしたのでしょうか。
凍土の持つ強度では小さな地震に対してもとても持たないので、容易に亀裂が入ることでしょう。
1mごとに30mの深さに挿入される冷媒循環管が破損したときに、全範囲に影響が及ばない対策になっているのでしょうか。
一部の工事区間では空間線量が4ミリシーベルト/hというところがあるということですが、そうした条件に適合している工法なのでしょうか。
他の確立されている工法で30年~50年使える遮水壁ができるのに、本来は仮設的工法であって、多くの面で未知数の凍土壁をわざわざ採用したのは、「研究開発」の名目で国が費用を負担できるからという発想だったといわれます。確実性などは二の次というわけです。
しかしもしも ’15年に、事故発生から4年後に完成させた凍土壁が、満足な機能を果たせないというようなことがあれば国際的な物笑いとなります。
朝日新聞は3日の1面で「凍土壁着工 効果は未知数」、2面で『汚染水 遠い抜本策」のタイトルをつけて報じています(デジタル記事が公表されていないので紹介できません)。
東京新聞の記事を紹介します。
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多い地下水 確実に凍結? 福島第一原発
東京新聞 2014年6月3日
東京電力は二日、福島第一原発の凍土遮水壁の本格工事に着手した。凍土壁は地下水の動きを封じて、建屋地下にたまる高濃度汚染水問題を解決する切り札と期待されているが、厳しい原発事故現場での作業であることに加え、複雑な地下の状況が十分に把握できていないなど懸念も残る。(岸本拓也)
建屋の周囲に超低温の冷却液を循環させて土壌を凍らせる凍土壁は、十メートル四方で実証実験が実施されたが、実際の総延長は一・五キロ。全てが設計通りに凍って壁になるかどうか疑問視する専門家も少なくない。
東電の担当者は「技術的な問題は何もない」と強調するが、福島第一の敷地は非常に地下水が多い。建設前は数本の川があり、地下水の流れが速い場所もありそうだ。次々に水が流れていく状況だと、その部分は凍らず、壁の性能が大きく損なわれることになる。
現場は原子炉に近く、事故発生当初に比べると放射線量は格段に下がったが、それでも毎時〇・一~四ミリシーベルトと要注意の場所もある。そんな現場で、配管を溶接して継ぎ足しながら地下に埋め込んでいく、根気のいる特殊な作業が続く。
「長い期間の作業になるので、作業場所を遮蔽(しゃへい)板で囲うなどの対策を取り、個人の線量管理を十分していく」。東電の小林照明原子力・立地本部長代理はこう語るが、特殊な技能をもつ作業員は多くない。完成後も補修、配管の取り換えが必要。少しでも被ばく線量を減らす努力が不可欠だ。
もう一つの懸念は、海側の敷地では高濃度汚染水がたまる地下トンネルなどの障害物が入り組んでおり、まだ地下の状況が完全には把握できていない点だ。
二月の止水工事では、地下の電源ケーブルに気をつけて作業していたのに、掘削機でケーブルを切断、4号機の使用済み核燃料プールの冷却を止めてしまった事例もある。
また、凍結の維持には一般家庭約一万三千世帯分相当の電力量を消費する。建屋内の汚染水が漏れ出さないための水位管理の方法も、まだ検討段階という。