福島県児童から極めて高率で甲状腺がんが見つかっている件に関して、これまで福島県などは、大勢を対象に詳しく調査した結果、普段は見過ごされていたがん(=処置不要のがん)が見つかった(=スクリーニンン効果)のであって、別に異常な高率ではないし、原発事故との関係もないという、不可解な主張を貫いてきました。
10日に行われた福島県民健康調査の検討委員会・甲状腺がんに関する専門部会で、疫学を専門とする渋谷健司東大教授が、スクリーニング効果で見つかったのであれば51例も甲状腺を摘出するのは過剰治療ではないかと疑問を呈し、さらに放射線影響との因果関係を論ずるためには、比較対照群を設けるなど、制度設計の見直しが必要であると主張しました。
それに対し手術を実施している福島県立医大の鈴木真一教授は、「臨床的に明らかに声がかすれる人、リンパ節転移などがほとんど」であったとして、放置できるものではなく、過剰治療ではないと説明しました。
これは語るに落ちた話で、福島で児童100万人当たり172人という驚くほど高率の甲状腺がん患者が見つかったのは、スクリーニング効果などによるものではなくて、実態的にがん患者が発生しているということに他なりません。
ようやく検討会議が内容のあるものに一歩前進したので、今度はこの甲状腺がんの高率発生と原発事故との因果関係についての解明に進んで欲しいものです。
Our planetの記事を紹介します。
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リンパ節転移が多数~福島県の甲状腺がん
Our planet 2014年6月10日
東京電力福島第一原子力発電所による健康影響を調べている福島県民健康調査の検討委員会で10日、甲状腺がんに関する専門部会が開催され、スクリーニング検査によって、多数の子どもが甲状腺手術を受けていることについて、前回に引き続き過剰診療につながっているかどうかで激論となった。議論の過程で、手術している子どもに、リンパ節転移をはじめとして深刻なケースが多数あることが明らかになった。
福島県民健康管理調査では、原発事故が起きた当時18歳以下だった子ども36万人を対象に甲状腺の超音波診断が行われている。事故から3年目となる今年の3月末までに、対象となる子どものうち約29万人が受診。2次検査で穿刺細胞診を受けた子どものうち90人が悪性または悪性疑いと診断され、51が摘出手術を実施。50人が甲状腺がんと確定している。
専門部会では、疫学を専門とする東京大学の渋谷健司教授が、この結果について、スクリーニング効果による過剰診断が行われている可能性があると指摘。また、放射線影響との因果関係を論ずるためには、比較対照群を設けるなど、制度設計の見直しが必要であると主張した。
これに対し、手術を実施している福島県立医大の鈴木真一教授は、「過剰診療という言葉を使われたが、とらなくても良いものはとっていない。手術しているケースは過剰治療ではない」と主張。
「臨床的に明らかに声がかすれる人、リンパ節転移などがほとんど」として、放置できるものではないと説明した。(動画の52分40分頃)
渋谷教授は「しかし、健診して増えたのなら、過剰診断ではないか。リンパ節転移は何件あるのか」と追及すると、鈴木教授は「取らなくてよいがんを取っているわけではない」と繰り返しつつも、「ここで、リンパ節転移の数は、ここでは公表しない」と答えた。(1時間35分頃)
こうした議論を受けて、日本学術会議の春日文子副会長は、現在、保健診療となっている2次検査以降のデータについても、プライバシーに配慮した上で公表すべきであると主張。また1次データの保存は必須であると述べた。
これについて、広島県赤十字病院の西美和医師も「部会として希望する」と同意。また、渋谷教授もデータベースを共有する必要があるとした。座長の清水教授もその必要性を認めたため、次回以降、手術の内容に関するデータが同部会に公表される方向だ。
部会終了後の記者会見で、記者からは改めて「放射線影響との因果関係」について検証しないのか。また、見解を示すめどはいつなのかについて、質問が殺到。福島県および清水座長は、次回以降、詳しく検討するとしたうえで、会津地方の2次検査結果がおおむね明らかとなる7月以降となるとの見方が示された。
また、男女比が通常は1対8程度であるのに対し、福島県の調査では、男性が36%を占めていることについて、甲状腺の専門家でもある清水教授は「チェルノブイリもそうだが、今回、確かに男性の比率が多い。ただ理由は分からない」と見解を示さなかった。