2014年6月27日金曜日

「凍土壁」早くも黄信号 地下トンネル内の汚染水の処置が難航

 福島原発の汚染水対策の柱として6月に着工したばかりの凍土壁工事は、既に黄信号が3つも灯り先行きが不透明です。
 
 一つは、2号タービン建屋地下室から地下トンネル内に漏水している箇所を凍結させて止水することが、4月末からもう2カ月経つのにまだ出来ていません。すこしでも流動がある箇所は凍結しないようです。
 水の流速が10センチ/日以下でないと凍らないというのですが、漏水箇所の流速を読み違えたのでしょうか。また施工箇所の全域において地下水の流速が10センチ/日以下であることをどのようにして確認したのでしょうか。
 
 もう一つは、凍結用冷媒管を地下30mまで打ち込むため難透水層を貫通させますが、その貫通箇所を通して上下の水が混じらないような工法を取る必要があるために、その分工事が遅れるという問題です。
 
 三つ目は、凍土壁が地下トンネルを2箇所で横断するため、そこに冷媒管を貫通させるときに、トンネル内の極めて濃厚な汚染水(合計10,000トン)が外部に漏れないようにしなければならないという問題です。
    註. 三つ目の問題を解決するためには、まず一つ目の問題が解決されなくてはならないという関係にあります。
 
 以上の3点はいずれも着工前から分かっていたもので、規制委が提示した30数項目の検討項目にも当然含まれていた筈です。
 経産省と東電はそれには取り合わずに先ず強引に着工し、もう引き返せないという実績を作ってから改めで問題点を明らかにしたものと思われます。無責任を絵に描いたような話です。
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「凍土壁」早くも黄信号 地下トンネル、汚染水抜き難航
 東京新聞 2014年6月26日
 東京電力福島第一原発の汚染水対策の柱として、政府が三百二十億円の税金を投じる凍土遮水壁に、着工から三週間で黄信号がともっている。海側の建設ルート上を地下トンネルが横切っており、中の高濃度汚染水を抜かないと凍土壁は造れない。その水抜き工事が難航しているからだ。 (小倉貞俊)
 
 問題のトンネルは、2号機タービン建屋から海側の取水口付近に延びる。二〇一一年の事故発生当初、大量の汚染水が海に漏れたルートだ。近くのトンネルと合わせると、今なお一万トンを超える汚染水がたまっている。
 二十五日の原子力規制委員会でも、福島第一が抱える当面の最大の懸念は、トンネル内の汚染水との認識で一致した。
 
 凍土壁を造るには、まず建屋からトンネルへの水の流れを遮断し、トンネル内の汚染水を抜いてセメントを充填(じゅうてん)する。水漏れの危険をなくしてから、トンネルごと地中に穴を開け、凍土壁用の凍結管を入れる必要がある。
 東電は、建屋とトンネルの接合部にセメントなどを詰めた袋を並べ、凍結管を入れて“ミニ凍土壁”を造成。接合部が凍っている間に水抜きなどの作業を進める計画を立てた。
 だが、凍結液を流し始めて一カ月半もたつのに、ほとんど凍っていない。
 
 実証試験は成功したが、実際の現場では水の流れがあり、凍る前に水が入れ替わってしまうのが原因だった。東電は凍結管を増やしたり、水流を緩めるなどの対策を試みたりしているものの、状況は改善しない。
 このまま問題が解決しないとどうなるか。凍土壁を造る凍結管をトンネル部分だけ避けて設置すると、トンネルの幅は約四メートルあるため、巨大な隙間ができて壁は完成しない。水抜きをしないままトンネルに穴を開けると、凍土壁はできても地中や海を汚染する。
 
 東電は、建屋の接合部が凍らない場合、トンネル内にセメントを少しずつ充填しながら、水を抜くことも検討している。ただ、この工法は、作業員の被ばくリスクが高まるなど大きな危険を伴う上、確実にトンネルがふさがる保証はない。
 規制委の田中俊一委員長は、今回の水抜き作業が難航していることについて、「福島第一のような(厳しい環境の)所は試行錯誤的に多重性を持って考えておく必要がある、との教訓ではないか」とし、複数の対策を試みる必要があるとの考えを示した。
 
<凍土遮水壁> 1~4号機の周りに1550本の鋼管を地下30メートルまで打ち込み、マイナス30度の液体を循環させて土壌を凍結。壁のようにして地下水の動きを封じ込め、建屋への地下水流入、建屋からの汚染水流出をブロックさせる狙い。今月2日、1号機近くで着工、本年度末の完成を見込んでいる。
 
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