2014年6月9日月曜日

高速増殖炉もんじゅ存続の思惑とは?

 
 「原子力ムラはどんなに失敗してもやがて上手くいくと言い続けて自分達は責任逃れをしていくという、そういう組織なのです」
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 高速増殖炉もんじゅの存続に関して、京都大学の小出裕章氏はそう語りました。
 
 第74回小出裕章ジャーナルを紹介します。文中の太線は原文に施されているものです。
ラジオ放送日 2014年6月6日〜13日 
Web公開    6月7日 
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高速増殖炉もんじゅ存続の思惑とは?
第74回小出裕章ジャーナル 2014年6月7日
 
 「原子力ムラはどんなに失敗してもやがて上手くいくと言い続けて自分達は責任逃れをしていくという、そういう組織なのです」
 
湯浅誠:
    今日は、もんじゅの存続がエネルギー基本計画で決まった。その思惑と言うか、「何でなの?」ということなんですけど。まず、簡単におさらいしておくと、福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」。初臨界から20年が過ぎても、稼働したのはわずかに250日ですと。
    「かなり税金の無駄使いじゃないか」という批判もあって、自民党の中にもそういう事も主張される方もおられていましたが、4月に閣議決定されたエネルギー基本計画ではその存続が決まったということなんですが。まず、もんじゅのおさらいをして頂くところから始めて頂いてよろしいでしょうか?
小出さん:
    はい、私自身もそうでしたけれども、原子力というのは化石燃料が枯渇してしまった後の未来のエネルギー源だと信じました。多分、皆さんも今でもそう信じていらっしゃるんだろうと思います。でも、本当のことを言うと、地球上のウラン資源というのは大変貧弱で、これまでのような原子力発電を続けようとすると、ウランがすぐに無くなってしまうということが分かったのです
    そこで、普通の原子力発電所で燃やすことができないというウランがあるのですけれども、それを「プルトニウムという物質に変えて利用すれば、原子力が少し資源として意味があるものになる」と、原子力を推進する人達が言い続けてきたのです。
    それをやるために、本来は役に立たないはずのウランをプルトニウムに変えるための非常に特殊な原子炉が高速増殖炉というもので、世界中の核保有国は何とか高速増殖炉を動かそうとしてきたのですけれども、米国・ロシア・イギリス・フランスも含めて、全て出来ないまま計画から撤退してしまいました。
    日本は「なんとかやるぞ、やるぞ」と言い続けて、もんじゅという原子炉を動かそうとしてきたのですけれども、20年経ってもほとんど動きもしなかったし、豆電球一つ点けることができないという、そういう欠陥装置だったのです。
 
湯浅:
    その欠陥装置、1日5500万円食ってるらしいですけども、やっぱりそれでも撤退できない。これは何でなんですかね?
小出さん:
    これまで1967年という時の原子力開発利用長期計画というもので、「高速増殖炉を実用化する」と日本の原子力委員会が言ったのです。もう既に、ですから50年ほど前ですかね。すぐにでも実用化できるかのように言ったのですけれども、やればやるだけ困難が見えてきまして、結局今になってもできないという状態なのですね。
    そして、既にもんじゅの開発のために1兆円ものお金を捨ててしまったのですが、先程聞いて頂いたように、豆電球一つまだ点けていないという、そういう物なのです。ですから、本当であれば、こんな物ができると言った学者・政治家、あるいはその他の関係者という人達がキチンと責任をとるという所から始めなければいけないのですけれども、この原子力ムラ、私は最近原子力マフィアと呼んでいますけれども、そこの人達は決して自分で責任を取らないという人達なのです。
    「どんなに失敗してもやがて上手くいく」と言い続けて、自分達は責任逃れをしていくという、そういう組織ですので、ここまで来てしまってもなおかつ、「これはダメだ」とは言えないのです。永遠に「やるやる」と言い続けると私は思います。
 
湯浅:
    そうすると、諸外国は撤退している。できる目途は立っていないというか、ずーっとできない。だけど、撤退もしない。やろうとする人達は、「そのうちできるんだ」とおっしゃるんでしょうけど。
小出さん:
    そうです。ずーっと言い続けてきたのです。
 
湯浅:
    でしょうね。そう言わなきゃ、それはねえ。こういう質問も何なんですが、出来るんですか?
小出さん:
    もちろん出来ません。やればやるだけお金がかかりますし、これまでも大小様々な事故を起こしてきましたが、これからも大小様々な事故が起きてくると思います
 
湯浅:
    これからも1日5500万円ずつ、パクパクパクパクと飲み込み続けていくんでしょうかね?
小出さん:
    その1日5500万円と今、湯浅さんが言って下さったお金は、今もんじゅは止まっているんですね。事故を起こしたまま止まっているのですが、そのもんじゅという原子炉を冷やすためには、ナトリウムという物質を回してるのです。そのナトリウムという物質は、70度を超える辺りでようやく液体になるのですが、それより低い温度だと固まってしまうのです。
    固まってしまうと機械が壊れてしまうので、とにかく温めて液体のまま保っておかなければいけないという、そういうもので、ひたすら電気を使ってナトリウムを温めているという、その電気代なのです
    実に、馬鹿げたことをしているわけですけれども、もしまたそれを動かそうとするとですね、温めるための電気代どころか、その他また様々なポンプを回したりしなければいけないので、もっともっとまたお金がかかってしまうということになります。
 
湯浅:
    そうすると、この原発が無くて電力が大変だと言ってる中で、もんじゅはナトリウムを温め続けるために電気を使い続けていると。
小出さん:
    そうです。もんじゅなんか、さっさと諦めればですね電力需要は少しは緩和されるわけです。
湯浅:
    プラスどころかマイナスだという話ですね。
小出さん:
    そうです、はい。
湯浅:
         結局、勇気ある撤退だということを決めるためには、政府がそれを決定するしかないんですかね?
小出さん:
    もちろんです。政府が決定しなければいけないし、関係してる学者達もいるわけですけれども、そういう人達が、まずは自分達の責任を明らかにして謝罪をして、「この計画は止めます」と本当は言うべきなのですけれども、そういうような人が全く原子力マフィアの中にはいないということなのです。
湯浅:
     困った事態ですね。
小出さん:
     ほんとに困った事態だと思います。
          (後略)