日経新聞が、川村新会長のもと新体制で再出発する東電を「苦難の船出」と呼びました。
東電は総額22兆円に上る福島原発事故の費用をまかなうため年平均で5000億円の資金を確保するカギを原子力が握っているとして、新体制では、原子力を社内で分社し「原子力カンパニー」を設立することを検討しています。そこに本社や新潟、福島に分散する関連部署を集約することで、社内の風通しをよくし、独自の広報機能も持たせることで、情報を隠さず適切に公表できるようにするというものです。
国民のためになる改善は大いに進めるべきですが、収益を上げる鍵が原発の再稼働にあるというのはもちろん間違いです。原発が安全でも経済的でもないというのはいまや世界の常識です。
原発の発電コストが一見安いかのように見えるのは、まず会計上様々な優遇策を得ているうえに、廃炉や使用済み核燃料の処分に要する費用を極めて過少に見積もっているせいです。少なくとも数万年を要するとされる使用済み核燃料の地層埋設処分にしても、それに要する管理費用が累積でどんなに莫大なものになるのかは想像もできませんが、現行の算定ではそれらは全て将来の国民に負わせるという考え方になっているわけです。
「原子力を日本に残すことは国益になる」という主張も原発メーカーならではのもので、将来核武装をする潜在力を持っていたいという権力中枢の野望に過ぎません。
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東電、原発を社内分社 川村新体制、苦難の船出
日経新聞 2017/6/23
東京電力ホールディングスで23日、川村隆日立製作所名誉会長が会長に就任した。新体制の最大の課題は、収益への影響が大きい原子力事業の立て直しだ。川村氏は原子力の社内分社で責任を明確にするなど改革の方向性を示したが、地元の理解を得て再稼働を実現できるかなど課題は多い。
23日の株主総会後に開いた取締役会で、川村隆会長と小早川智明社長が就任した。その後の記者会見で川村会長は「東電が生まれ変われば福島への責任も果たせる」と抱負を語り、「(新潟県の)柏崎刈羽原発を再稼働したい」と述べた。
東電は5月に新たな再建計画を策定した。総額22兆円に上る福島第1原発事故の費用をまかなうため年平均で5000億円の資金を確保する。カギを握るのが原子力だ。
新体制はまず、原子力を社内で分社し「原子力カンパニー」を設立することを検討する。現在は「情報発信の不手際で信頼を失っている」(小早川社長)のが実態で、縦割りの弊害が出ている。
カンパニーには本社や新潟、福島に分散する関連部署を集約。社内の風通しをよくし、独自の広報機能も持たせることで、情報を隠さず適切に公表できるようにする。
東電は原発の立て直しに向け、他社と事業の統合・再編もめざす。川村氏と小早川氏は同日、新組織の「未来経営委員会」をつくる方針も表明した。再編した場合の具体的な効果を検証し、その結果を基に他社に連携や統合を訴えていく考えだ。
東電は数土文夫氏が会長を務めた前体制で業界再編を進める方針にカジを切り、まず中部電力と火力事業の全面統合を決めた。新体制では原子力も同様に再編をめざすが、火力に比べれば格段にハードルが高い。
他社は福島事故で甚大な被害を出した東電と原発で組むことに警戒が強い。そもそも再稼働が思うように進まない状況では、各社が提携しても効果は限られる。
東電には福島第2原発の問題もある。地元自治体は第1原発と同様、廃炉にすることを求めており、川村氏も会見で「重く受け止めている」と述べた。今後の具体的な方針は明言を避けたが、廃炉を決めれば追加の資金負担が出てくる。
川村会長は「原子力を日本に残すことは国益になる」と強調し、日立でも関わった原子力にかける思いを語った。リーマン・ショック後に日立を立て直した川村氏が新しい舞台でも手腕を発揮できるかが問われる。