24日行われた静岡県知事選で川勝平太氏が三選を果たしました。
静岡県には、東海大地震の震源域の中央付近に立地していて世界一危険といわれている浜岡原発があります。もしもそこで過酷事故が起きれば首都圏を含めた広大な範囲に甚大な被害が及びますが、知事選挙中も浜岡原発再稼働についての機論は低調だったということです。
浜岡原発にはすでに規制委の主導で防潮堤が完成しています。しかしそれは沖合で起きる津波の対策にはなるものの直下型の地震に対しては役に立ちません。
地震学が専門の島崎邦彦東大名誉教授が規制委のメンバーであったときには、原発の再稼働に対して抑制的でしたが、彼が抜けると再稼働に向けての安全審査はスイスイと進んでいる感じで、もはや規制委による再稼働の制止は期待できません。
中日新聞が、「再稼働の最終判断を下すのは立地県の知事である。知事は浜岡原発に関する住民の期待や不安を受け止めて、自らの考えを自らの言葉で語ることが必要。任期のスタートは、最大、最強の『当事者』として、浜岡原発に真っすぐ向き合うことからだ」 とする社説を掲げました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
社説 静岡県知事選 浜岡原発は重い宿題だ
中日新聞 2017年6月26日
川勝平太氏が三選を果たした静岡県知事選。中部電力浜岡原発の再稼働に関する議論は低調だった。県民の過半が不安を寄せる関心事。知事が自らを主語にして判断を示さぬ限り、信任は完結しない。
最大級の争点となるべき問題が、宿題として残された。
浜岡原発をどうするか-。
川勝氏は「今は再稼働できる状態にない」「動かすか動かさないかは中電が決めること」などと、どこか客観的なコメントを繰り返し、自ら判断することを避けているかのようにも見えた。
敗れた溝口紀子氏の方も、出馬会見でこそ「持論は廃炉」と明言したが、独自候補の擁立を断念した自民党の一部支部から支援を得るや「百八十度転向」と言われるほどにトーンを落とし、原発への言及も少なくなった。
連合静岡の推薦を受けて臨んだ川勝氏の方も、再稼働を急ぎたい電力総連などへの配慮が働いたとは言えないか。
こと原発に関しては、県民の不安や期待より、政党などの思惑を優先させてしまったこともあっての低投票率ではなかったか。
浜岡は特別な原発だ。東海地震の想定震源域の上、列島の二大動脈、生命線とも言える東海道新幹線や東名高速道路の間近にある。
だからこそ、3・11直後、時の首相の直接の要請で停止させたままなのだ。
現在、浜岡原発3、4号機が原子力規制委員会による適合審査を受けている。
選挙期間中に実施した本紙の世論調査では、回答者の六割が再稼働に反対の意思を示している。
川勝氏は以前から「再稼働には住民の意思が尊重されるべきだ」とし、住民投票の必要性も認めている。かと言って、自ら条例案を提出するつもりはなく「県民代表の議会が発議すべきだ」と、やはり、どこかよそよそしい。
しかし、これまでの例から見ても、再稼働の最終判断を下すのは立地県の知事である。
福島と同じ沸騰水型で、地震の揺れの想定も難しく、審査に時間がかかりそうとはいうものの、三期目の任期の中で、川勝氏が知事として、重い判断を迫られる可能性は低くない。
浜岡原発に関する住民の期待や不安を受け止めて、自らの考えを自らの言葉で語ること-。
川勝県政「ジャンプ」の任期のスタートは、最大、最強の「当事者」として、浜岡原発に真っすぐ向き合うことからだ。