2017年6月9日金曜日

被曝作業員 36万ベクレルのプルトニウムを吸引

 茨城県大洗町にある原子力機構の施設被曝事故で、機構は、肺から22000ベクレルの放射性物質が計測された男性について、事故直後には、36万ベクレルの放射性物質が体内に取り込まれたと推計していることがわかりました。
 22000ベクレル事故発生から10時間後の6日夜に「肺モニター」で計測された値です。
 体内に入ったプルトニウムは時間とともに減り、肺に残る割合は10時間後に、体内に入った総量の6%ほどになることが知られています。つまり被曝当初はその100/6倍(16.7倍)の被曝量になるので、それを2万2000ベクレルに乗じると被曝当初は約36万ベクレルであったと推定されます。
 
 同機構は7日の記者会見で、吸引された放射性物質の影響で被曝する「内部被ばく」について、自然に排出される量などを考慮して計算した場合、肺から22000ベクレルの放射性物質が計測された男性の場合50年で12シーベルト推定していましたが、この数値も当然変わることになります
 
 プルトニウムが胃や食道などの消化管に入った場合、飲み込んだもの90%以上が早期に体の外に排出されますが、肺に入った場合肺から排出されるまでに数十日から数百日という長い時間がかかるうえ、肺から血液に混じって排出しても骨や肝臓などの臓器にとどまり、がんなどのリスクが高まります。
 そのため機構では、事故が発生した6日から、血液中のプルトニウムが臓器に付着するのを防ぎ、体外へ排出するのを促す「キレート剤」を投与する治療を始めていて、そうした治療で作業員たちの今後の被曝量をどれくらい減らせるかが焦点になります。
 
 【キレート剤】 金属封鎖剤。金属イオンと結合することでその活性を封じ、金属イオンが他の物質と化学反応(結合)するのを防止する薬剤です。
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被ばくの作業員 全身に36万ベクレルの放射性物質と推計
NHK NEWS WEB 2017年6月8日
原子力機構は7日の記者会見で、体内に取り込まれた放射性物質の影響で被ばくする「内部被ばく」について、自然に排出される量などを考慮して計算した場合、50年で12シーベルトとしていましたが、この36万ベクレルの値については公表していませんでした。
これについて、原子力機構は「36万ベクレルという数字はあくまでも推計値であり、会見では肺モニターによる実測値の2万2000ベクレルという数字を伝えることを重視した」と話しています。
 
専門家「被ばく量を薬剤でどれくらい減らせるか」
この事故で、専門家は、今後50年間で12シーベルトと推計された作業員の被ばく量を、放射性物質の排出を促す薬剤でどれくらい減らせるかが治療の焦点になると指摘しています。
専門家によりますと、プルトニウムが体内に吸収される場合には、主に胃や食道などの消化管に入る場合と、呼吸器の肺などに入る場合がありますが、消化管の場合、体内には吸収されにくく、飲み込んだものは90%以上が早期に体の外に排出されるので、健康への影響は比較的小さいと考えられているということです。
一方で、口や鼻から吸い込み、肺の組織の中にまで入り込んでしまうと、肺から排出されるまでに数十日から数百日という長い時間がかかるうえ、排出されても骨や肝臓などの臓器にとどまり、がんなどのリスクが高まる可能性があるということです。
そのため機構では、プルトニウムが肺の組織に入り込む前に取り除こうと、事故が発生した6日から、血液中の放射性物質を吸着して体外へ排出するのを促す「キレート剤」と呼ばれる薬剤を投与する治療を始めていて、専門家は、作業員の今後の被ばく量をどれくらい減らせるかが治療の焦点になると指摘しています。
 
被ばく医療に詳しい東北大学の細井義夫教授は「今回は治療が早期に行われたため、効果は期待できるのではないか。一方、放射性物質が肺から骨や肝臓などほかの臓器に移行すると、20年から50年もとどまるとされているため、健康影響が出ないかどうかについては長期にわたって経過を慎重に見ていく必要がある」と指摘しています。