2017年6月3日土曜日

03- 海外では「ガス・再生エネ」発電の2強時代に

 日経新聞が、「発電は ”天然ガス・再生エネ” の2強時代に入り、原発は苦境に」という記事を出しました。
 日本とは違って、原発をコスト的に保護していない米国では既に1970年代に原発の採算性が失われた結果、最近まで40年間近く原発の新規の建設が行われませんでした。
 日本では、再生可能エネルギーへの送電線の割当てを制限するなど再生エネ発電に様々な制約を課している(=原発再稼働の余地を確保)ためその普及は決定的に遅れていますが、海外では中国と米国が牽引役となって太陽光発電が急速に拡大していて、16年の新規導入量は7660万キロワット(前年比5割増)に達しています。
 今後も21年までは年平均2割の成長が見込めるということです。
 発電コストは約11円/KWhで17年にはさらに下がり陸上風力発電並みになるということです。蓄電池の性能向上やIT(情報技術)を活用した需給予測で再生エネの使い勝手向上しているのはいうまでもありません。
 経産省・重電業界・大学などが一体となった「原子力ムラ」という権益システムにいつまでも固執している日本は、再生エネ発電ではひたすら後れを取る一方です。
 ブログ:「世相を斬る あいば達也」を紹介します。
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民主主義、資本主義とグローバル経済や金融資本主義の異様な違いについて
世相を斬る あいば達也 2017年6月1日
●世界の “原発電源” はマイナーに 孤軍奮闘??日本の原発行政 
 まあ、そもそも論からいっても、原子力発電を国家の主たる電源にしようなどと云う考えが、常識的に変なのだ。つまり、“なんか変?” な行政が行われている時は、国家的不正や行政のサボタージュや既得権益死守の弊害があると云うことだろう。発電事業が、完全な意味で民営化されていたら、誰一人として、原子力発電で21世紀の電力を賄おうなどと考えるものはいないと云うことだ。 
 
 福島原発事故が弱体化していた原子力発電事業に、更なる規制が掛けられることとなり、原子力発電は完全にコスト割れ産業となってしまった。原子力発電の雄と言われたウェスティングハウス・エレクトリックが東芝に見限られ、莫大な損害を出し倒産した如く、原子力で電力を発電する理由は殆どなくなった。シェールガス革命もあるし、実際の原油安も、世界的流れとして定着している。こうなると、原子力発電は、リスクを差し引いても、グロスで採算点を割る事業になっている
 
 我が国の場合、国策として原発政策を担ってきたわけなので、本来であれば、撤退シナリオを国が然るべく組み立てる責任がある筈だ。まして、今後原子力発電が純然たる計算においても採算割れした発電事業なのは歴然であり、終活シナリオに沿った行政が行われるべきである。無論、このような当然の行政が出来ないのがわが国の特性であり、特権階級には血の通った行政を分厚くと云う明治以来の、悪しき伝統文化があるのである。 
 
 これを正当な本道に導くのは、国民の代表らが集まる立法府、つまり政治家連中の責務なのだが、与党も湯党も野党も、概ね、この原発行政に巣食っている大量の業界団体から、様々な意味で共存共栄の関係を築いている。また、意図的に構築した原発行政の業界団体相関図には、原発行政各省庁や関係地方自治体などがからみ、巨大な総合扶助シンジケートを作り上げている。この中には、意図的に優遇された電力料金の隠れ利益をプールすることで、原子力関係者の不可逆的利益相互扶助の相関図が出来ており、壊すに壊せないズブズブの腐臭漂う猥らな関係になっているのだろう。
 
 もうこうなると、動きだしたら止められない日本の行政の典型になっている。おそらく、原発大国であるロシアやフランスよりも原発のやめられない国になるのだろう。再生エネルギーや火力・水力・地熱の豊富な資源を持ちながら、最も穢れた、或いは責任の取れない発電方式を捨てられないと云うのだから、100年後には、後ろ指刺される、いや、面と向かった嘲笑される国家になっているのだろう。しかし、それでも自分の国なのだから、いち構成員として虚しさは感じるが詮かたなし。
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発電「ガス・再生エネ」2強時代 原子力苦境に 
  日経新聞 2017年5月31日 
 電源の「主役交代」を象徴する事例が相次いでいる。30日には米国で大事故を起こしたスリーマイル島原子力発電所の閉鎖が決定。コストが安いシェールガスを燃料に使う火力発電に押され、先進国では原発の競争力が低下している。一方、一時は停滞した太陽光発電所は息を吹き返してきた。電源ではガスと再生可能エネルギーの2強時代がやってきている。 
 
■シェール革命で苦境に陥る原子力 
 スリーマイル島原発は1979年に米国史上最悪の原発事故を起こしたことで知られる。事故があった2号機はすでに廃炉となっているが、残った1号機も2019年9月末までに閉鎖することが決まった。米電力大手エクセロンが30日、発表した。 
 米国では「シェール革命」の恩恵でシェールオイル・ガスの生産量が増えた。石油会社は採算のよいシェールオイルの生産増を狙うが、同じ鉱区でシェールガスも生産される。この結果、米国の天然ガスの需給が緩み価格は低い水準が続き、発電用燃料としてのガスの競争力が高まった。オバマ前政権下で石炭からガスへの転換も進んだ。原発側にとっては福島第1原発の事故以降の安全対策コストが上昇したのも逆風で、スリーマイル島以外でも廃炉が相次ぐ。 
 米国ではガス優位の時代が確認された30日、欧州では太陽光発電の復活を印象づける発表があった。
 
■米中が太陽光市場をけん引 
 欧州の業界団体ソーラーパワー・ヨーロッパによると、16年の世界の太陽光発電設備の新規導入量は7660万キロワット。前年比で5割増となり過去最高を更新した。1年前の16年予測(中間シナリオ)の6200万キロワットを大きく上回った。業界の想定以上にパネルや建設価格が低下し、再び拡大期に入ってきた。太陽光バブルの崩壊で市場が伸び悩んだ11~14年は過去の話になりつつある。 
 けん引役は16年の新規の6割強を占めた中国と米国だ。ソーラーパワーの今後の予測でも両国は21年まで年平均で約2割の高い成長が続く見込みだ。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、太陽光の運転終了までトータルでみた発電コストは、16年の平均で1キロワット時あたり10セント(約11.1円)を割り込んだ。17年には再生エネの中で最も安い陸上風力並みにまで下がるという。 
 
 再生エネは地域によっては石炭火力と競争できるレベルまで価格が低下。原油安で化石燃料の価格も下がったが、再生エネの普及スピードには影響がみられない。この状況下で、発電設備を提供する側、発電する側とも覚悟を決めている。 
 パナソニックは米テスラと組み、19年までに米国の太陽電池の生産能力を100万キロワットに引き上げる計画。住宅用の需要を掘り起こす。欧州電力会社で時価総額最大のエネル(イタリア)のフランチェスコ・スタラーチェ最高経営責任者(CEO)は「他の火力の電源に比べ運転の立ち上げがしやすいガス火力は再生エネとの相性がよい」という。発想を変え、ガスと再生エネは対立ではなく両輪で電源を主導する時代をにらむ。
 
 ■政府補助の対象、再生エネから原発に 
 再生エネの場合は発電量が変動しやすい。余剰電力の扱いや、電力を送る送電網の整備といった課題はある。ただ、蓄電池の性能向上やIT(情報技術)を活用した需給予測で再生エネの使い勝手も向上してきた。欧米の電力大手は人工知能(AI)などの研究にも予算を投じ、かつて遠い夢と思われたスマートグリッド(次世代送電網)も実現に近づいてきた。
 ソーラーパワーの資料では、もう一つ興味深い比較があった。対象は英政府が推進するヒンクリーポイント原発だ。英国は欧州では珍しく原発にも積極的な姿勢で知られる。電力会社の腰が引け気味ななか、政府が打ち出したのが原発の固定価格買い取り制度(FIT)。運営するフランス電力公社(EDF)は運転開始から35年間にわたり、1キロワット時あたり約0.09ポンド(約13円)で買い取ることを保証する。再生エネより割高なのは自明で、英メディアでは原発FITに批判的な報道が目立つ。 
 かつて「FITで過度に甘やかされた」と批判された再生エネは自立し、オークションなど市場原理に委ねるのが世界の潮流になってきた。一方で「他の電源より圧倒的にコスト」が安いとされてきた原発が政府の補助に頼る(と)ソーラーパワーの資料は電源を取り巻く逆転現象を皮肉交じりに指摘している。(日経新聞:加藤貴行)