被曝事故が起きた経過は、26年前に封じられた保管容器の中身を確かめようとして6日朝、作業にあたる職員5人が分析室に直径10センチほどのステンレス製保管容器を持ち込み、午前11時過ぎに50代の男性職員が6本のボルトを緩めて保管容器のフタを開けると、突然二重のビニール袋が破れ、中にあった放射性物質が飛び散ったということです。
26年の間に何らかの化学反応でガスが発生しビニール袋内の圧力が上がっていたものが、ステンレス容器の蓋が緩んだことで膨張し、袋を破ったものと見られます。
大量に吸引した原因は、マスクと顔面の密着が不良、プルトニウムがまだ室内で待っている最中にマスクを外したことなどが考えられるということです。
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作業員4人が内部被ばく プルトニウム 2.2万ベクレル最悪レベル
東京新聞 2017年6月8日
日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県大洗町)の燃料研究棟で作業員五人に放射性物質が付着した事故で、機構は七日、四人が内部被ばくしており、そのうち五十代の一人の肺から二万二〇〇〇ベクレルの放射性物質プルトニウム239が検出されたと発表した。ほかの三人もそれぞれ最大で一万四〇〇〇~五六〇〇ベクレルを検出。残りの一人も内部被ばくした疑いが濃厚としている。国内で過去最大級の内部被ばく事故となり、作業が適切に行われていたかなど、機構の安全管理体制が今後問われることとなる。
機構によると、五人は二十~五十代のいずれも男性で、うち二人は原子力機構の職員、三人は協力会社の従業員。五十代の作業員の被ばく線量は、今後五十年で一二シーベルトに達する可能性があるという。国の基準は放射性物質を取り扱う作業員らの被ばく線量限度を五年間で〇・一シーベルトと定めている。
五人はいずれも放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)の医療施設に入院。搬送時点では何も症状は出ていないという。放医研の上部組織である量子科学技術研究開発機構は七日夕、記者会見し、明石真言(まこと)執行役は「(二万二〇〇〇ベクレルは)初めて見る数字だ。私たちが知っている内部被ばくのレベルの中では高い」と指摘。「内部被ばくで発がんのリスクが上がることは科学的にはっきりしている」としつつ、「過去の外国のケースを見ても急性の症状は出にくいため、もう少し様子を見る必要がある」と説明した。
事故は六日、同センターの燃料研究棟で核燃料物質の点検作業中に起こった。核燃料物質が入ったポリエチレン容器を収めた金属容器のふたを開けた時、ポリ容器を二重に包んでいたビニールが破裂。作業員たちは鼻から下を覆う半面マスクを着けていたが、飛散した粉末状の放射性物質を吸い込んだとみられる。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は七日午後の定例会見で、原子力機構について「経営陣はもっと真剣に考えて、反省すべきだ」と批判。午前中の定例会では伴信彦委員が「半端な被ばく量ではない。命に関わることはないだろうが、事態は軽微ではない」と指摘した。原子力規制庁は機構から事故原因などの報告を受けて安全管理に問題がなかったかを調べる。
水戸労働基準監督署も六、七日の両日、立ち入り調査をした。
◆体の中から放射線浴びる
「内部被ばく」とは、空気や水、食品に混じった放射性物質を吸い込んだりして、体の中から放射線を浴びることをいう。
マスクの着用である程度は防げる。体内に取り込まれた放射性物質の一部は尿や便と一緒に自然と排出されるが、排出されなかったものは長期間、放射線を出し続けて臓器に影響を与え、がんや白血病になる危険性が高まる。物質によって体内でとどまりやすい場所が異なり、プルトニウムは肺、セシウムは筋肉や生殖腺、ヨウ素は甲状腺にたまりやすい。
国は、放射線作業に携わる人の被ばく量限度を、内部、外部合わせて五年間で〇・一シーベルト(一〇〇ミリシーベルト)とした上で、年間で五〇ミリシーベルトを超えてはならないと定めている。東京電力福島第一事故の対応にあたった作業員には、事故後一年間で、内部被ばく量だけで五九〇ミリシーベルトの人もいた。
<ベクレルとシーベルト> 放射線を放出する能力を放射能と呼び、その強さや量を「ベクレル」という単位で表す。放出された放射線を人間が浴びた際の影響の度合いを示す単位が「シーベルト」。
ベクレルとシーベルトの関係は、電球の放つ「光の強さ」と、電球からの距離や障害物の有無に左右される「明るさ」にも例えられる。