2017年6月27日火曜日

27- デブリ調査 水中遊泳ロボットでも運転10時間が限度

 産経新聞が、福島原発の原子炉の3号機のデブリの調査に新たに用いられる水中遊泳ロボット(ミニマンボウ)について報じました。

 2号機ではサソリ型ロボットが投入され、空中に露出しているグレーチング歩廊上を走行する(イメージ)画像などが流されました。しかしデブリ近傍の空間放射線量があまりにも過大であるために遠隔操作ロボットの寿命は数時間しかなく、次々と停止しました。これにより「ロボットによりデブリを撤去する」という構想そのものが夢想に等しいということが証明されました。

 3号機の格納容器には6mの水深があるので水中遊泳ロボットの使用が可能です。水には放射線を遮蔽する機能があるため水中であれば実用に耐えるロボット操作が可能なのではないかと期待されましたが、記事によるとそれほど甘いものではありませんでした。
 やはり放射線量からロボットの活動は連続10時間が限度で、それ以上はロボット内部の制御用基盤などの半導体が損傷するということです

 生物体が近づけずに、その代わりになるロボットも耐用時間が数時間程度であるということであれば、もはやデブリの取出しや廃炉は絵空事になります。
 原子力ムラのメンバーが明言しなくてもそのことには疑いを入れる余地がありません。
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デブリに挑む 優雅な「ミニマンボウ」が過酷な福島第1の3号機原子炉へ
産経新聞 2017年6月26日
 LEDをともして水中をゆっくりと泳ぎ回る姿には、小柄ながらも「優雅」という言葉が似合っていた。だが、その投入先は、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)がどこにあるのかも分からない、東京電力福島第1原発3号機の原子炉格納容器。内径13センチのボディーに技術の粋を集めた水中遊泳ロボット(愛称・ミニマンボウ)が7月、過酷な現場でデブリに挑む。(社会部編集委員 鵜野光博)

原寸大“原子炉内部”でお披露目
 6月15日、神奈川県横須賀市の港湾空港技術研究所。原発メーカーなどでつくる国際廃炉研究開発機構(IRID)が公開したのは、重さ約2キロ、長さ約30センチのロボットだ。同研究所には燃料デブリ調査に向けて3号機内部の原寸大の模型が作られており、この日は報道陣向けに、操作員が訓練を重ねた遠隔操縦を実演。水中を泳ぐミニマンボウの姿を、報道陣のカメラが追った。

 ボディーの前部には上下に180度動くカメラがあり、その両側にLEDを装備。スクリュー(スラスタ)は後部に4つ、上部に1つあり、後部につながれたケーブルで後ろに引っ張る力も合わせて水中を移動する。1秒間に50センチ程度の移動が可能だが、実際の調査は周囲を観察しながら行うので、秒速5センチ程度になるという。
 ほかに線量計と、ケーブルが障害物に引っかかった場合に備えて後部にも固定カメラを搭載している。

デブリ取り出し方針決定前に調査
 「燃料デブリがどこにとどまっているのか。小さな山のようになっているのか、ごつごつ岩状のものなのか、ぱらぱら小石状なのか。そういった映像情報をまずは提供できれば」
 開発に当たった東芝原子力事業統括部の露木陽機械システム設計第三担当グループ長は、調査の狙いをそう話した。
 福島第1原発では、2月に2号機、3月に1号機でロボットによる格納容器内部の調査が行われたが、いずれも燃料デブリの姿は明確には捉えられていない。東電などは今夏にも燃料デブリの取り出し方針を決めるとしており、ミニマンボウは方針決定直前に投入される。

 3号機は1、2号機と違って格納容器内に約6メートルの水がたまっている。そのために泳げるロボットが開発されたが、東芝は「干渉物があったときに、3次元的にかわすことができる」と水中のメリットを説明する。
 一方で、開発の最大のハードルは「小ささ」だった。格納容器内部に投入する際に利用する貫通部は、直径約15センチしかなかった。「内径は13センチで、ボディーを長くすれば旋回性が悪くなる。前後のカメラ、照明、線量計、スラスタ5つと、その制御基盤をあの大きさに収めることには大変苦労した」と露木さんは振り返る。赤外線カメラや温度計、浮遊物を持ち帰る機構などは備えていない

原子炉直下の撮影にも挑戦
 計画では、貫通部から投入されたミニマンボウは、制御棒駆動機構交換用レール(CRD)に沿って約10メートル泳ぎ、圧力容器を支持する構造物(ペディスタル)にたどり着く。その開口部から、燃料デブリがあるとみられるペディスタル内部をカメラで撮影。可能であれば、さらに内部に入り込み、原子炉直下の様子などの撮影を試みる
 作業は1日で終える予定。内部の放射線量から活動は連続10時間を見込んでおり、それ以上は制御用基盤などの半導体が損傷するという。

 原子炉内部は暗闇で、操作訓練は港湾空港技術研究所で夜間、照明を消した状態でも行っている。「このモックアップ(模型)環境と異なる干渉物があったときにどうするか。通過できるスペースがあるかどうか判断しながら進んでいくのが難しいところだ」と露木さん。

 東芝原子力事業統括部の竹内努部長は「最高の成果は燃料デブリを発見すること。まずはペディスタルの入り口で、中をカメラで確認したい」と話した。
 ミニマンボウは、万一操作不能になった場合に備えて、ケーブル切断機能も搭載している。「基本的には回収したいが、状況によっては投棄も考えている」と竹内部長。燃料デブリ取り出しに役立つ映像情報を提供し、無事に帰還できるのか。ミニマンボウの出動は7月中旬以降となる見通しだ。