<原発からの請求書>(3)電気代上乗せの税を流用 福島事故除染費
東京新聞 2017年3月3日
Q 福島第一原発事故では廃炉・賠償のほかにも費用がかかりますね。
A 汚染された土壌を取り除く除染にお金がかかります。広範な地域で土を削ったり側溝の泥をすくったり膨大な作業です。政府は昨年末に、当初の二兆五千億円が四兆円に拡大する見通しを公表しました。
Q だれが、負担しますか?
A 環境汚染は汚染物質を出した企業が払う汚染者負担が法律上の大原則。しかし、東電は利益状況が厳しく払えないと主張し、国民負担が増えています。
Q 例えば。
A 汚染土をためておく中間貯蔵施設の建設・運営には電気代に上乗せされている電源開発促進税(電促税)を流用しています。本来は原発のある自治体振興に使われる税ですが、政府は毎年三千二百億円入る同税収の約15%を三十五年間流用し、必要な一兆六千億円を工面する算段です。
Q 家庭の負担は。
A 電促税相当額として「一キロワット時〇・四〇六円」が徴収されており、約三百六十キロワット時使った家庭(サンプル)は月百四十六円を負担。東電の平均家庭(毎月二百六十キロワット時使用と想定)は月百五円、年間千二百六十六円を払っている計算です。この15%が流用されるとすると消費税分を除き年百七十六円、三十五年で六千百四十二円が貯蔵施設に使われる計算です。そんなに流用できるなら、もともと電促税は取られすぎだったとの批判もあります。
Q 除染自体の負担は。
A 政府は住民が帰れない区域に「特定復興拠点」を設け、優先的に除染し五年後をめどに避難解除すると決定。こうした地域は税金で除染すると決め、二〇一七年度予算で三百億円を投入します。税金投入は最終的に数千億円に上る見通しです。
Q それ以外の除染は。
A 総額四兆円の経費は政府が一兆円を投入して過半を購入した東電の株式を売って工面すると説明しています。四兆円の売却益を得るには現在四百円程度の東電株が四倍の千五百円超に上がる必要があります。
Q 非現実的ですね。
A 経産省は「不足するなら負担のあり方を検討する」といいます。政府の皮算用が外れ、仮に全額を全国から電気代で徴収するなら一世帯当たり一万五千六百円。これが何年かに分け電気代で上乗せ徴収される懸念があります。