東京新聞が集計したところ原発処理の経費は最低40兆円に上りました。それは国民1人当たり32万円に上り、すべて電気料としてわたしたちの家計にのしかかっています。
しかし、政府の決めた仕組みは複雑で家庭の負担の実額はなかなかつかめません。
東京新聞が、東電から毎月届く「検針票」を読み解く連載を始めました。残念ながら東北電力と東電とでは検針票の書式そのものが違いますのでそのままは当てはまりませんが、いままで見過ごしていた電力会社の「取り立て」の具合をおぼろに理解することはできます。原記事には具体的な東電の検針票の図が載っていますので、ご覧になりたい方はURLでアクセスしてください。
(関係記事)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<原発からの請求書> (1)福島事故賠償 検針票のどこに?
東京新聞 2017年3月1日
東京電力福島第一原発事故からまもなく六年になります。同原発の処理や核燃料サイクルなど原発の後始末の費用は本紙集計で四十兆円に膨張、家計負担も増えています。しかし、負担の実額は不明確。毎月、電力会社から届く使用量と代金の記載された「検針票」を手掛かりに負担の実態を探ります。お手元の検針票と比較しながら、エネルギー政策を考えてみませんか。 (吉田通夫、池尾伸一)
Q 電気代に原発の費用は入っていますか。
A 原発の運営費が含まれるのは当然ですが、さまざまな経費が電気代や、電線で電気を送るための「託送料」に上乗せされています。託送料には核燃料の再利用や自治体への補助金も乗っています。これらは電力会社が送ってくる検針票に記載されています。送らない会社もありますが、ネットではみられます。
Q これからさらに福島原発の処理費が加わってくるのですか。
A いいえ。すでに被災者への賠償費については大手電力の利用者は払っています。当初五兆四千億円と推計された賠償費は事故を起こした東電が負担することになっています。
しかし東電の利益が低迷し、政府は二〇一一年からほかの電力会社も含めて「将来の事故への備え」の名目で年間千六百三十億円を集金、賠償に充てています。仮にこのまま全額を賠償に充てるなら、約三十年かかる計算。大半の電力会社はこれを電気代にそのまま上乗せしており、東電の場合、年間五百六十七億円を上乗せしています。
Q 家庭の負担は。
A 販売電力量で計算すると、月三百五十九キロワット時を使った夫婦子供二人の家庭(図のケース)では九十円。月二百六十キロワット時を使う東電の平均家庭は月六十五円で年間七百八十円。賠償金に達する三十年の合計では二万三千四百円払うことになります。
Q 毎月の負担は少なくみえても累積すれば多額の負担ですね。
A それだけではありません。政府は昨年末、賠償が二兆四千億円膨らむとして、追加分は託送料に上乗せして二〇二〇年から四十年かけて工面すると決めました。一キロワット時〇・〇七円として、図の世帯では月二十五円。平均家庭は月十八円、年間二百十六円の負担で従来負担と合わせると年九百九十六円になります。三十年分の従来負担と四十年分の追加負担を足した総額は三万二千四十円に達します。
Q 太陽光の会社に切り替えればよい?
A 追加分は新電力の利用者も含まれます。
Q なぜ原発を利用していない人まで払う必要が。
A 政府は事故に備えたお金は、一九六〇年代から積み立てておくべきだったと主張。国民は格安価格で原発の恩恵を受けていたとして、不足分を全国民に請求すると言っているのです。これから生まれてくる子どもたちも「過去に原発の電気を本来より安く使った」と払わせられるのです。時空を超えた、あり得ない請求書といえます。
Q 本来のあり方は。
A ルールに従い東電を破綻させ、株主や貸し手の銀行に負担させるのが筋との意見が根強いです。託送料は国会のチェックもなく、経済産業省の認可だけで引き上げ可能。電力会社と政府が責任を置き去りにして、安易に国民に負担転嫁する姿勢が濃厚です。
(次回は福島原発廃炉費)